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2007 Officeの文書フォーマット「OOXML」を正しく知る
XMLは、これまでのOffice利用にまつわる課題を解決しうるか
(2006年10月13日)
「未来形」のODFに対しOOXMLは「現在進行形」
XMLベースのファイル・フォーマットには、OOXMLのほかに「Open Document Format for Office Applications」(以下、ODF)がある。一般的に、この両者はライバルと見なされている。
OOXMLはマイクロソフト、ODFはオープンソース陣営がそれぞれ支持しており、互いに相いれることのない両者が、オフィス・スイートの標準ファイル・フォーマットの地位を巡って競い合っている――このような解釈はわかりやすいが、単純化しすぎではないだろうか。OOXMLとODFとでは目指している方向が大きく異なるため、必ずしも同列に扱うことができないというのが、筆者の考えだ。
ここまで見てきたように、OOXMLは、長い期間にわたって蓄積されてきた膨大なOfficeファイル資産に対処するために生まれたものだ。一方、ODFの場合は、それほど多くのファイル資産が蓄積されているわけではなく、既存のファイル資産が抱える問題を解決するというよりも、ファイル・フォーマットのあるべき姿を目指しているものだと言える。つまり、OOXMLは目の前の問題に対処する「現在進行形」の技術であり、ODFはファイル・フォーマットの理想形を描く「未来形」の技術であると言えるのだ。
注意してほしいのは、以上の説明は、技術的な優劣ではなく、それぞれの有用性を実証できる時期の違いを述べているということだ。OOXMLは、すでに存在している膨大なファイル資産に適用することで即座に有用性を判断できる。ODFは、ある程度のファイル資産が蓄積されて初めて、その有用性を判断するための材料がそろうことになる。
換言すれば、OOXMLには過去のファイル資産の継承という足かせがあり、ODFにはそのような足かせがないということだ。OOXMLは、過去のOfficeファイル資産を変換して継承するという目標を掲げた結果、どうしても泥臭い技術にならざるをえない。一方で、足かせを持たないODFは、コンパクトかつスマートであるとアピールすることができる。
両者を比較すると、ODFのほうが先進的に見えるかもしれない。しかし、一般的に、ソフトウェアをリプレースする場合、よほど大きな革新を期待できないかぎり、既存資産を捨てるという選択肢はありえない。すでに大量のOfficeファイル資産を有する組織にとって、その資産の継承は必須条件であり、ここに注力しているのがOOXMLなのだ。
この辺りでOOXMLとODFの違いをまとめよう。おそらく、既存のOfficeファイル資産の蓄積をいかに活用するかに頭を悩ませている人にとっては、ODFという選択肢は魅力的ではないと思われる。一方で、既存資産に束縛されずに、未来の可能性に胸をときめかせたい人であれば、OOXMLが魅力的に見えることはないだろう。
OOXMLとODFの両者が標準化を進める理由
前述したようにOOXMLは、ECMAによる標準となることを目指している。一方、ODFは、まずOASISで標準化されたうえでISO標準として承認されている。なぜ、これらは、仕様を公開するだけではなく、標準仕様となることを目指すのだろうか。
その理由は、政府機関などの調達基準として、標準仕様であることが要求される場合があるためだ。例えば、XMLがJIS規格ではないという理由でXMLを使ったシステムを採用できないというケースが実際にあり、これに対処するためにXMLをJIS規格化(JIS X 4159)したということがあった(これは筆者も当事者だった。JIS X 4159の委員会名簿には、筆者の名前が記載されている)。標準化競争は、政府機関などをターゲットにした巨大なソフト市場の争奪戦を意味すると言えるだろう。
ちなみに、マイクロソフトは、OfficeでODFを扱えるようにするためのアドイン・プログラムの開発を行うオープンソース・プロジェクトを進めている。しかし、OOXMLが同社の本命という状況にはいささかの変化もない。このプロジェクトをODFへの敗北宣言と見る向きもあるが、実際には、調達条件にODFが指定された案件にも2007 Officeを売り込むためと見てよいだろう。
また、ODF側からのOOXML批判として「OOXMLは本当のオープンではない」というものがある。これは、OOXMLが“Office Open XML”と“Open”という単語を含む名前を名乗っていることに対する批判であり、オープンソースの定義で規定される「オープン」という用語の意味に、OOXMLにおけるOpenが当てはまらないという主張だ。
一見、もっともらしいが、適切な批判とは言い難い。なぜなら、オープンソースという概念が発明される以前から、「ビジネスに対して開かれている」「相互接続に対して開かれている」といった意味でオープンという言葉が使われているからだ。例えば、1990年代に流行した「オープン・システム」という用語があるが、この場合のオープンはさまざまなメーカーのソフトウェアやハードウェアを組み合わせてシステムを構築することを意味し、オープンソース陣営が示すオープンの定義には一致しない。オープンという言葉はオープンソース陣営の専有物ではなく、歴史的にそれに該当しない用例も多数認められるのだ。
OOXMLがもたらすさまざまなメリット
最後に、既存のファイル資産がOOXMLに変換され、新規ファイルもOOXMLで作成されるようになった場合に、どのような状況が訪れるのかということを考えてみたい。
OOXMLを採用することで、それらのファイルの使い勝手が大幅に向上することは間違いない。蓄積されたファイル資産の検索性が高まり、そのファイル内の情報を有効に活用できるようになるだろう。複数のファイルの一部を集めて新しいファイルを作成するような作業も、よりすばやく実行できるようになると予想できる。Office以外のさまざまなアプリケーションから、それらのファイルを利用する機会も増えるだろう。また、現在、主要なデータベース製品でXML対応機能が強化されつつあることを背景に、ファイル資産のデータベース化もより容易に行うことができるようになると考えられる。
本当に、このようにうまくいくのだろうかと疑問を持つ人もいるだろう。しかし、まもなくOOXMLは、われわれの手もとにやってくる(提供中のベータ2を使えば、すでに利用可能だ)。OOXMLが実際に有益かどうかは、すでに膨大な量が存在するOfficeファイル群に適用することによって、われわれ自身の手で検証できる。何しろ、OOXMLは「現在進行形」の技術であるのだから。



























