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データ・マネジメント

日本オラクルの新宅氏が語る戦略と展望

目指すは、“データベースのNo.1”から“エンタープライズ・ソフトウェアの総合No.1”へ

(2007年08月23日)

オラクルは現在、積極的な企業買収や製品強化により、ERP(Enterprise Resource Planning)アプリケーションやミドルウェア、データベース、そしてSaaS(Software as a Service)などの各領域で、着実に地歩を固めつつある。また今年7月には、主力であるデータベースの新版「Oracle 11g」も米国で発表し、注目を集めている。そこで、Computerworld編集部では、日本オラクルの代表取締役社長兼最高経営責任者である新宅正明氏に独占インタビューを行い、同社の戦略と展望を聞いた。インタビューに応えた同氏の話は、Oracle 11gからSaaS、Linux、さらには、オラクル全体のビジョンに至るまで多岐に及んでいる。

福田悦朋
IDGジャパン 編集委員

M&A戦略の奏功により
収益が拡大

――まずは、今日の国内IT市場に対する見解をお聞かせください。現在、日本企業の業績は伸びているものの、それがIT市場の拡大・活性化につながっていないという見方もありますが。

 確かに、日本企業のIT支出の全体を俯瞰すると、「あまり伸びていない」という印象を受けるかもしれません。ただしそれは、IT投資の単純な切り詰めによるものではなく、IT投資に対するユーザー企業の考え方や、投資のあり方が変化しつつあることの表れだと私は見ています。

 実際、お客様サイド(ユーザー企業サイド)の声を聞くと、IT投資は決して削減しておらず、逆に、日本版SOX法対策や内部統制など、新しい経営課題に対するIT支出や、経営戦略に根ざした新たな領域へのIT支出は着実に増やしておられます。ただし一方で、ITの保守・運用管理コストやハードウェアの導入コストを削減し、全体のバランスを取られているのです。

 このように、ITインフラの維持費・固定費を削減し、それによって得られた資金を、会社の次なる成長に向けたIT投資に振り向けるというのは、正しい方向性だと私は考えます。また、その戦略の結果として、日本企業のIT投資の相対的な価値(経営にもたらす価値)も確実に高まっているのではないでしょうか。

――では、日本オラクルのビジネスの現状はどうなのでしょうか。2007年度(5月期)決算で、過去最高の売上げ(1,007億6,700万円)を達成されたようですが。

 ご承知のとおり、オラクルはここ数年来、M&A戦略(ピープルソフトやJ.D.エドワーズ、シーベルといった企業の買収)を積極的に推し進め、ERPやCRM(Customer Relationship Management)、および、ミドルウェアの製品ラインを強化・拡充してきました。結果として、われわれは、お客様のあらゆる要望・課題にお応えできる製品とサービスのポートフォリオを完成させつつあります。

 日本オラクルの収益拡大も、こうした戦略がもたらした1つの成果と言えるもので、とりわけ、買収によって手に入れた(ERP/CRM領域の)新しいプロダクト・ラインと、それに付随したサービス/コンサルティングのビジネスは、(2007年度における)当社の売上げ増進に大きく寄与しています。

 加えて、オラクルでは先ごろ(今年3月)、BI(ビジネス・インテリジェンス)ベンダーのハイペリオン・ソリューションズも買収しました。これにより、BIの領域のビジネスも今後大きく発展すると期待しています。

Oracle 11gでオープン・システム全体の
信頼性と可用性を高める

――さらに、今年7月には、「Oracle 11g」が米国で発表されました。同製品の特徴について改めてお聞かせください。

 Oracle 11gは、オラクルの創立30周年を飾るプロダクトであり、われわれが長く追い求めてきた“オープン設計のデータベースのあるべき姿”を具体化させた製品でもあります。

 この製品の開発で、オラクルがまず重視したのは、(従来製品と同様に)、お客様の現行資産(=Oracleを用いて構築されたシステム資産)をきちんと引き継げるようにすることと、いかなる用途で用いられても、単一用途に特化したニッチなデータベース製品と同等、もしくは、それ以上のパフォーマンスを発揮できるようにすることです。

 加えて、もう1つ、オープン・システム全体の運用性や拡張性を高める設計が施されているのも、Oracle 11gの大きな特徴です。

 例えば、これまでは、障害対応や365日24時間の連続稼働、バッチ・プロセスといったメインフレーム上の機能・仕組みを、オープン・システムで実現しようとすると、ユーザーは、いくつかの“我慢”を強いられてきました。

 そこで、Oracle 11gでは、バックアップ/リカバリのパフォーマンス向上も含めて、オープン・システムの拡張性や可用性、運用性を高める機能強化や設計が行われたわけです。

 その意味で、Oracle 11gは、オープン・システムの進化・発展を支える“標準インフラ”としての地位を確実に獲りにきた製品とも言えるのです。

――Oracle 11gの特徴は理解できましたが、既存のOracleユーザーの中には、現行のデータベース・システムのパフォーマンスに満足し、Oracle 11gへの移行をあえて行おうとしない向きもおられるはずです。とりわけ、ミッション・クリティカルな大規模システムを(Oracleで)構築しているユーザーは、相応の動機づけがないと、Oracle 11gへの移行になかなか踏み切らないと思いますが。

 Oracleでミッション・クリティカルなシステムを構築されているお客様が、Oracle最新版への移行に消極的かと言えば決してそうではありません。実際、これまでも、相当数のお客様がOracle最新版に移行されています。

 そうしたお客様が、移行に踏み切られた大きな理由としては、システムの安定性・可用性の向上のほかに、システム・コストの削減が挙げられます。

 要するに、「新しいオラクル製品を使ったほうが、システムの信頼性・可用性が高められ、しかも、企業内のサーバ/ストレージの総量(台数)が減らせる」といったベネフィットが、お客様による移行を促してきたわけです。

 言うまでもなく、データベースの切り替えは、お客様に一定の負担を強いるものです。ですから、その負担を補って余りあるベネフィットを、お客様にもたらすことが重要です。

 しかも、ミッション・クリティカルなエンタープライズ・システムの場合、ハードウェアを含むインフラのすべてが一挙に新しい環境に切り替えられるケースは稀です。

 その中で、お客様にデータベースのバージョンアップを遂行していただくためには、データベースのバージョンアップそのものが、お客様のベネフィットに直結するようでなければなりません。ですから、Oracle 11gへの移行を推し進めるうえでも、お客様にとってのベネフィットの訴求・提供に注力していくつもりです。

――では、既存のOracleユーザーが、Oracle 11gに移行するペースについては、どう見ていますか。

 その辺りの流れを数字として読むのは、なかなか難しいですね。

 もちろん、Oracle 11gには、ユーザー・ベネフィットに直結する機能が豊富に提供されています。そのため、従来のOracle製品よりも速いペースで移行(ユーザー・システムへの適用)が進むと見られています。

 ただし、お客様がOracle 11gに切り替えるタイミングは、そのお客様がOracleでいかなるシステムを構築しているかによって大きく異なると、私は見ています。

 例えば、Oracleを用いて、限定的な用途の「閉じたシステム」を構築されている方は、多くの場合、そのシステムの発展・拡張をそれほど望んでおられません。つまり、特定のアプリケーションが一定のパフォーマンスで動けばそれでいいとお考えなわけです。

 ですので、そうしたシステムのインフラは、5年程度の緩やかなスパンで、Oracle 11gへの切り替えが行われることになるでしょう。

 また、こうした閉じたシステムにおけるOracle 11gへの移行を推進するのは、われわれが注力すべき領域ではありません。

 われわれが目指しているのは、あくまでも、Oracle 11g(への移行)によるシステムの変革・発展です。すなわち、Oracle 11gを核に、お客様のシステムの変革・発展を実現することこそ、われわれの本来的なビジネス・スタイルであり、優位性でもあるのです。


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