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【連載】
関西圏における自治体広域連携
第8回 非接触ICカードの非常時における活用方法
(2006年06月30日)
本連載では実証実験の紹介もしてきたが、通常は利用の始まったシステムを紹介している。ただし、今回と次回については提唱段階の仕組みについて述べてみたい。それは、非常時における非接触ICカードの活用方法である。
中野 潔
大阪市立大学 創造都市研究科 都市情報学専攻 教授
大阪安全・安心まちづくり支援 ICT活用協議会 副会長
ソニーは平成17年10月19日、非接触のICチップ「FeliCa」の累積出荷数が1億個を超えたと発表した。FeliCaは平成8年に出荷を開始した。開発初期の平成元年からしばらくの間、鉄道の乗車券としての利用についてソニーは、現在の鉄道総合技術研究所(JR総研)と共同研究をしてきており、平成9年にようやく、香港地下鉄の「オクトパスカード」として採用された。
筆者の知人であるJR総研の研究者から直接聞いたのだが、それまで何度となく研究中止になりかけており、香港での採用がなければ世に出なかった可能性が高かったという。
かなり不十分な形だが、FeliCaを採用した非接触ICカードの発行枚数の推計を次ページの表に示した。
交通定期券や関西民鉄の「PiTaPaカード」のような記名式カードが1,000万枚弱程度、交通のプリペイドカードや電子マネーのカードといった無記名式のものが2,000万枚弱ほど発行されているようだ。
なお、関西民鉄のPiTaPaカードは、後払いのカードである。1カ月分の利用料金は、クレジットカードの口座から自動的に引き落とされる。当然、記名式である。
| FeliCaチップを内蔵した非接触ICカードの発行枚数 |
改札口に入ってから出るまでの時間を計測
非接触ICカードだけでなく、従来型の磁気カードでも実現しているのだが、交通カードには改札口を通った時間を書き込んでいる。このため、ルールに合わない、あるいは常識的に考えて変な行動パターンに沿った使い方をチェックすることができる。
例えば、改札口を通らずに乗り換えられるところが多いが、駅の通路の配置上、改札口を出て、もう一度乗り換え先の改札口から入らなければならないケースもある。関西の鉄道の一部では、この乗り換えの時間が30分を超えると、乗り換えに伴う割引を適用してくれなくなる。
改札口を出てから次に入るまでの時間が計れるのだから、改札口に入ってから、ずっと出てこないのもチェックできる。実際、入場券であまりに長く駅構内にいると、出るときにチェックされるようだ。
交通カードのデータはカード側にも格納される
JR西日本の大事故(JR福知山線脱線事故)のときに思ったのは、事故の際、改札口を通ったままで長時間出てこない人が分かれば、事故に遭った潜在候補をリストアップできるのでは――ということだった。JR西日本の「ICOCA」というプリペイドカードは無記名だが、ICOCAの定期券は記名である。
これもJR総研の知人から聞いたのだが、JR東日本の「Suica」やICOCAでは、カードの中にも駅や通過時刻のデータが入っており、例えばプリペイドカードであれば残高のデータも入っている。改札口で、カードを「タッチ・アンド・ゴー」する0.2秒の間に、JRの中央データベースにアクセスして何百万枚分のデータから、そのカードの履歴を調べて返すことはできない。だから、カードの中にもデータを入れておく必要がある。
一方、「タッチ・アンド・ゴー」が速すぎて、カードの内容を完全に整合の取れた形で書き直せないことがある。しかし、ある人の処理時間を稼ぐためにゲートを閉めたとしても、既に次の人がカードをタッチさせていたり、磁気の切符や定期券を挿入していたりすると、いたずらに混乱が起きてしまう。そのため、このときは特定の駅の改札口を通過したというデータだけを書き込んでおくのである。
なお、全く別の話だが、SuicaやICOCAの定期券を落としてしまう場合がある。このときには、申し出ると、落とした定期を無効にして、新しい定期券を発行してくれる。
災害時において交通カードは別目的で活用可能ではないか
このように、鉄道カードではいろいろなことが起きるので、カード自身とデータベースの両方で、データが管理されている。だから、前述したように、事故の際、改札口を通ったまま長時間出てこない人を、データベースを検索することでリストアップできるのではないか――と思ったのである。
事故の際には、しばらく使っていないという情報に意味を持たせることができるかもしれないとしたが、更に違う方向に拡張できないだろうか。
大地震が起きると、多くの鉄道路線が運休せざるをえなくなる。このとき、交通カードは使えなくなる。基本的には邪魔者になってしまったこのカードを、非常時に活躍させる手はないだろうか。
まず、考えられるのは、非常時にはコンビニエンス・ストアなどに設定されている電子マネーのリーダー/ライターに、交通カードや電子マネーのカードをかざしてもらうことで、店舗の位置や時刻、FeliCaチップのID(チップのIDについては次回に述べる)を3つ組の束データとして、非常時用のデータベースに記憶させるというものである。そして、家族がチップのIDを入力することで、カードの所持者が、いつどこでカードをかざしたかの記録を出力できるようにする。
これにより、鉄道の止まったときに通勤者や通学者が、いつどこを歩いて、自宅に向かっているかが分かるようにできそうである。携帯電話がかからない、中学や高校で携帯電話を持つことが禁止されていている、といった場合にもカードであれば利用できる。
コンビニと自治体による災害時の提携は進んでいる
関西5府県3政令市では平成17年1月に、愛知県では同6月に、南関東4都県4政令市では同8月に、それぞれコンビニエンス・ストア10社前後、その他にもファーストフード企業などとの間で、大規模災害時の帰宅困難者支援、すなわち、地図情報やトイレや水の提供について提携を結んでいる。この提携はカードのリーダー/ライターの利用と全く無関係だが、仕組みの組み立て方によっては協力を得ることが可能であろう。この仕組みにかかわる費用概算などについては、次回で論じたい。
- 関西圏における自治体広域連携
- 第1回 大阪の防犯運動と情報通信システム(1)
- 第2回 大阪の防犯運動と情報通信システム(2)
- 第3回 豊中市の「安全安心情報ネットワーク」実証実験
- 第4回 関西発のセキュリティ関連ツール「PALne/PS」
- 第5回 池田市発の安心・安全対策「ANSINメールシステム」
- 第6回 引っ越しのワンストップ化を実現する「関西引越し手続きサービス」
- 第7回 データ放送を用いたライブカメラ画像配信システム
- 第8回 非接触ICカードの非常時における活用方法
- 第9回 非接触ICカードによる所在確認システムは十億円前後か
- 第10回 電子自治体進展度調査と関西情報化実態調査
- 第11回 創造都市と物報惣複合体



