【 ここから本文 】
Googleウォッチ
ソーシャルブックマークに登録 :
印刷用ページの表示
【解説】
ビジネス・インテリジェンス導入に潜む「5つの落とし穴」
事例に学ぶ――「BIの導入はこうして“失敗”する」
(2008年03月11日)
ビジネス・インテリジェンス(BI)は、すでに成熟の域に達した感があるが、その導入にあたっては技術的に面倒な作業が多く、BIの導入を考えるユーザーにとって乗り越えるべき課題の1つとなっている。しかし、BI導入に関してユーザーが重要課題と位置づけるのは、「プランニング」「ROI(投資利益率)」「人的問題」の3つであり、ここには重大な落とし穴が潜んでもいる。本稿では、経験豊富な5人のIT部門幹部がBI導入に失敗しないための心得をレクチャーする。
Julia King
Computerworld米国版
落とし穴 その1
中身ではなく見た目でBIを選ぶ
ビジネス・インテリジェンス(BI)を導入するにあたって陥りやすい落とし穴は、導入を検討する段階ですでに待ち構えている。米国の製薬会社Pfizerのダニー・シーゲル(Danny Siegel)氏は、「BIソフトウェアが持つ魅力的でリッチな機能と、企業が実際に扱うデータで実現可能なこととの間には極端なギャップがある」とし、その点を考慮しないことがそもそもの失敗だと指摘する。ニューヨークに本拠を置く同社でデータ・ウェアハウジング&ビジネス・インテリジェンス担当ディレクターを務めるSiegel氏はさらに、「(企業のIT部門が)リポートの形式さえ決められていない部署に次世代機能を披露することは、みずから落とし穴を掘っているのと同じことだ」と主張する。
問題の一端は、自社製品を売り込むベンダーのプレゼンテーションのやり方にあるという。「ビジネス・ユーザーの取り込みに必死なベンダーは、できるだけ見栄えのする、ビジュアル重視のプレゼンで企業を引き付けようとする」と同氏。「しかし現実として、企業が抱える問題を見た目がよいだけのツールで解決することはできない。彼らに必要なのは、複雑なリポート作りを支援してくれるツールなのだ」(同氏)
BIベンダーが、カラー・チャート、グラフ、表などを満載したBIシステムをエンドユーザーにプレゼンする──これを企業が許可することは、そのシステムを導入する部署の不満をあらかじめ保証するようなものかもしれない。Siegel氏はこの落とし穴を回避する方法として、企業で実際に使われている生データを用いたプレゼンをベンダーにさせることを提案する。
「当社では、BIを導入した際に、一貫性がなく不正確で、そのままでは価値のない生データをベンダーに渡した。もちろん、見た目のよさも大切だろう。しかし、何よりもまず企業にとって有用でなくてはならない。自分たちが日々使っているデータを用いてテストを行い、具体的に何が改善できるのかを明らかにすることが重要なのだ」(Siegel氏)
落とし穴 その2
BIを使うべき人が使えていない状況にある
社員の生産性向上と日々の売上げ向上に責任を持つのは、幹部よりもむしろ最前線にいる中間管理層のマネジャーだろう。彼らにとってBIツールは、この2つの課題を解決するための強力な味方となるはずだ。「しかし実際には、企業の幹部の間でBIツールが使われているケースが多く、ポリシー変更などについても幹部がトップダウンで命じている場合がほとんどだ」と、米国カリフォルニア州ロサンゼルスにある音楽エンターテインメント企業Virgin EntertainmentのCIO、ロバート・フォート(Robert Fort)氏は指摘する。そこに落とし穴が潜んでいるというわけだ。
| 画面1:タイムズ・スクウェアなどにメガストアを構えるVirginのWebサイト。同社では、現場のストア・マネジャーらが、BIシステムを使って集客と売上げに関する情報をやり取りすることで、売上げ向上に努めている |
ハリウッド・ブルバードやタイムズ・スクウェアなどの一等地に13店のメガストア(大規模小売店)を構えるVirginでは(画面1)、BIをまずこれらの店舗で採用することから始めた。
「現場で効果を測定したことでよい使い方を知ることができた」と語るFort氏は、ストア・マネジャーらへの正確かつ最新の売上げ情報の供給を可能にした同社のBIシステムをアピールする。
Virginのストア・マネジャーらはWebベースのポータルを介して「Crescendo」と呼ばれるBIシステムにアクセスし、集客と売上げに関する情報をやり取りしている。具体的には、Fort氏のグループが開発したソフトウェア・ベースのリポート・テンプレートに基づいてCrescendoを使うことで、ストア・マネジャーらは、全店舗における1時間ごとの集客数/売上げなどの最新情報を知ることができる。また、店舗内にいる客が実際に商品を購入する割合、各店舗における前年同期の売上げといった、分析のための情報を得ることも可能という。
「BI導入から18週間後に効果を測定したところ、店舗の売上げは軒並み向上していた」と話すFort氏は、増加した売上げのうちの約20%は純粋にBIシステムの導入によるものと分析している。
「BIの導入によって明らかに店舗の文化が変わった。ストア・マネジャーは責任感を増し、リアルタイム・ベースの運営が行われるようになった。常に販売状況を把握できることから、迅速な対応が可能になったのだ」(同氏)
同氏は、現状を改善したいと考えているユーザーにBIを配布すれば、成果は必ず現れると力説する。
落とし穴 その3
BIで出されたデータの活用方法が示されていない
企業がBI導入を決断する理由の1つは、何らかの課題に対し、その解決に向けた分析を可能にするまとまったデータを手にしたいからであろう。しかし、米国の自動車メーカーFord Motorのグローバル・ワランティ(品質保証)担当システム・マネジャー、ジム・ロラー(Jim Lollar)氏は、「BI導入に失敗しないための秘訣は、分析データに加えて、それをすぐに生かせる情報をユーザーに提供することだ」と強調する。
同社は5年前に、Webベースのワランティ・ポータル(BIシステム)を立ち上げた。その際の目標は、世界に1万社を数えるディーラーがワランティ関連の問題を迅速に見極め、ワランティ・コストをFordのパラメータと対比できるようにすることだった。
それ以前は、各ディーラーに「126 Report」と呼ばれる紙のリポートが配布されているのみだった。このリポートは、各ディーラーのワランティ・コストと同地域における他のディーラーのそれとの比較を可能にするもので、標準からあまりにも逸脱した額のワランティ・コストを検知できるようにもなっていた。
「こうしたデータを、各ディーラーがWebからオンデマンド方式で引き出せるようにした」と、Lollar氏は同社のワランティ・ポータルについて説明する。同ポータルを導入した結果、各ディーラーは自分たちの問題がどこにあるのかをすばやく認識できるようになったという。
ところが、これだけでは、せっかく明らかになった問題を解決するところまではいかなかった。そこでLollar氏のグループは、多様な診断機能、ハウツー・マニュアル、ダッシュボード、情報を深く掘り下げて分析するためのドリル・ダウン機能などを付け加え、問題の原因究明までできるようにした。
「当社がこれまで行ってきたのは各ディーラーが抱えている問題を列挙することだけで、問題解決を支援することではなかった。結局、われわれがしてきたのは、『君の会社には問題があるから解決せよ』と宣告していただけだったのだ」とLollar氏は省みる。しかし、同社の現在のシステムでは、ワランティ処理に関するより詳細な問題についても対処できるという。
この新たなBIシステムは予想以上の成果を上げているようだ。現在は、世界各地のディーラーに向けて情報提供を行っているという。「今では、ワランティ処理を理由に会計監査を受けるディーラーの割合はごくわずかになった」(Lollar氏)































