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【解説】
Google Street Viewの「日本の風景」が投じた波紋

技術進化とプライバシー保護のはざまでわき起こった論争から、地図情報サービスの将来を考える

(2008年09月19日)

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サービスの先にある“世界”はリアルかバーチャルか

 こうして地理情報サービスが進化を続けていくと、どのような世界がやってくると考えられるのだろうか。

 現時点ではその未来像は単なるSF的な予測でしかない。しかし、最も近未来的に可能性が高いのは、「Second Life」のようなメタバース(3D仮想空間サービス)と融合していくことだ。

 例えば、GoogleはStreet Viewの撮影の際、3Dレーザー・スキャナを同時に使用して、建物などのモデリング・データを収集している。これを報じた米国CNETの5月16日付けの記事によると、この事実が発覚したのは今年4月で、イタリア・ミラノでGoogleの撮影車両が撮影され、写真共有サイトの「Flickr」に同写真が投稿されたことが発端だった。その写真の中に写真投稿者とは別の人物が3Dレーザー・スキャナを発見し、事実が表面化したのである。当初Googleはその事実を認めなかったが、5月15日になって「画像撮影(技術)にはレーザーで3Dの幾何学データを収集する技術も含まれている」とのコメントを発表したという。

 すでにGoogleは、Second Lifeと同様の「Lively」というサービスを試験的にリリースしているほか(関連記事)、ユーザーが3Dの構造物を自由に使うことができる「3D ギャラリー」というライブラリも公開している。また、「Google Earth」の地理情報を外部からアクセス可能にする「Google Earth Plugin」というサービスも提供している。これらに追加されるかたちでStreet Viewで収集された街中の建物の3Dデータも利用できるようになれば、実在の街をそのままメタバース空間内に再現した“新たなSecond Lifeモデル”が現実味を帯びてくる。

 こうしたリアルなメタバースをどう利用していくのかはまだわからない。しかし、ブームが終わってしまったSecond Lifeに代わり、かなりのインパクトを持って受け入れられるサービスになっていく可能性は十分考えられる。これらのことを考えるとStreet Viewは地理情報サービスの第一歩に過ぎず、今後も進化し続けると言えるだろう。

 しかし前述したとおり、そうした“進化”に強い違和感を持つ人は多い。そしてこの違和感の根幹には、ITサービスをどのように受容していくのかという、非常に重大な問題が横たわっているように思われる。

*  *  *

 インターネットはバーチャルな空間である。この空間の中ではデータはすべて構造化され、そのデータをどう扱うのかというポリシーも、ある程度は確立してきている。しかし、リアルな物理空間では、建物や道路、生身の人間といったさまざまなオブジェクトは構造化されていないし、それらのオブジェクトをどう構造化するのかというポリシーも存在しない。

 ポリシーが確立していない段階でリアルの空間をすべてデジタル化し、可視化できる環境を構築することは、「Googleという“パブリックの場所”に裸で立っている」というような不安感を増幅させてしまうことになる。おそらくは、これが違和感の根源に存在するのではないだろうか。

 リアルな物理空間情報をも“サービス”として提供するIT企業は今後、こうした問題に正面から取り組まなければならなくなる。

Topics
米国のプライバシー保護団体、Google Street Viewに抗議
Google幹部の個人情報を公開して“反撃”

 米国の非営利団体National Legal and Policy Center(NLPC)は今年8月、米国Googleのプライバシー対策は不十分であるとし、抗議行動を展開した。「Street View」と「Google Earth」を利用し、Googleトップ幹部の個人情報を公開したのである(画面A)。

画面A:National Legal and Policy Centerが公開した“あるGoogleトップ幹部”の個人情報(邸宅前に停車していた車の写真を抜粋)。ナンバー・プレートまでばっちり見える

 この個人情報には、カリフォルニア州にある幹部の豪華な邸宅の正門や駐車スペースの写真をはじめ、家の前に駐車している複数の高級車のナンバー・プレート、庭の造園を担当している(と見られる)業者の車、隣家が利用しているホーム・セキュリティ・システムの企業名などの写真が包含されている。

 NLPCは、この個人情報がだれのものであるかは公表していない。しかし世界中のマスコミは、写真はGoogleの共同設立者であるラリー・ペイジ(Larry Page)氏の邸宅だと報じている。

 さらに公開された情報には家の正面玄関から公道までの距離や、この幹部がマウンテン・ビューにあるGoogle本社へ通勤するための最短運転ルート、さらには同ルート上にあるすべての交差点、一時停止の標識、信号などの写真も含まれている。

 なおこれらの情報は、すべてGoogle Earthを利用して測定し、Street Viewで公開されている写真である。

 NLPCは自身を「民間企業における倫理性や説明責任を追求する非営利組織」だと説明している。発表された声明によると、Googleの技術が個人のプライバシーをどれだけ侵害しているかを強調するために、このような個人情報を公開したという。

 NLPCで会長を務めるケン・ボーム(Ken Boehm)氏は、「Googleはあらゆる人物について詳細な視覚情報を集めており、インターネットを利用するユーザーならだれでも30分以内で特定人物の詳細情報ファイルを作成できる。個人のプライバシーは存在しないというGoogleの考えを証明するのに、これほどふさわしい証拠はない」と語った。

 Street Viewに関しては、写真に写る人物や車などのプライバシーを問題視する声が多い。欧州連合(EU)およびカナダのプライバシー団体は、同サービスが(自国の)プライバシー法違反になる可能性があるとして懸念を示した。

 これに対しGoogleは、「プライバシーは非常に重要である」と主張しているものの、NLPCはGoogleの主張には矛盾があると批判している。

 NLPCによると、Googleのエバンジェリスト、ヴィント・サーフ(Vint Cerf)氏は今年5月に行われた米国メディアの取材に対し、「人の行動は取り消しもできないし、常にだれかに見られている。(完全な)プライバシーなど存在しないものと諦めるほかない」と語ったという。

 ボーム氏は「Googleの世界観ではプライバシーは存在しないのかもしれないが、実社会では(プライバシー保護は)根本的な重要事項だ。しかし個人のプライバシーはGoogleのような企業に、毎日少しずつ削り取られている」とコメントし、Googleの行動を「信じがたい偽善だ」と非難している。


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