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「Web 2.0 Summit」で語られたコンピューティングの未来

イノベーション創出のため、Web 2.0を製品戦略に取り入れるベンダー各社

(2007年02月19日)

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Webサイトで「市民ジャーナリズム」の
強化を計画するニューヨーク・タイムズ

画面5:ニューヨーク・タイムズ紙のWebサイト「NYT.com

 ニューヨーク・タイムズは主力紙のWebサイト「NYT.com」(画面5)の機能を拡張し、読者が現場の写真や記事などのコンテンツをより多く投稿できるようにする計画を明らかにした。

 セッションを務めたのは、会長・発行人のサルズバーガー氏だ。「今後はNYT.comサイトで市民ジャーナリズムを目にする機会が増えることになる」とサルズバーガー氏。このコメントは、NYT.comサイトは、ユーザー作成コンテンツの分野で他紙サイトの後塵を拝しているとの聴講者の発言を受けたものだ。

 「当社は動きが遅いとの意見をよくもらうが、それには反論したい」と同氏は述べ、アマチュア・ライターの投稿の受け入れと同紙の編集品質基準の維持の間でバランスをとるのが難しいと答えた。NYT.comは今後、こうした「市民ジャーナリスト」を選別し、信頼のおけるグループと共同作業を進めていくという。

 このセッションに参加したIACのディラー氏は、アマチュアによるビデオ・コンテンツは同社のWebサイトで一定の役割を果たしているが、やはり彼らにプロフェッショナルの品質を期待するのは間違いであると述べた。IACは今後、プロダクション・バリューの高い自社サイト向けコンテンツの製作に投資し、その仕事に専門家を指名する予定だ。Webベースのビデオ配信技術は今や十分成熟しており、Web向けのこの種の番組の開発に必要な費用と努力に値するとディラー氏は信じているからである。

 議長のバッテル氏は、ニューヨーク・タイムズが下したWebサイトの一部コンテンツ有料化の決定について、サルズバーガー氏に尋ねた。サルズバーガー氏は、質の高いコンテンツの制作には相応のコストかかるとしてこの決定を擁護した。同氏によれば、現在のところ、ニューヨーク・タイムズ紙とボストン・グローブ紙だけが、NYT.comと無料の「TimesSelect」サービスよりも多くの収益を上げているという。

グーグルCEOのシュミット氏、
SaaSモデルへの注力をあらためて表明

画面6:グーグルの企業向けアプリケーション・スイート「Google Apps for Your Domain

 インターネット業界でナンバーワンの成功企業として認識されているグーグル。CEOのシュミット氏は、ユーザーが遠く離れたデータセンターで運用されているアプリケーションにインターネット経由でアクセスするSaaS(Software as a Service)モデルへの支持をあらためて表明した。今、注目が高まっているSaaSは、マイクロソフトの強大な勢力の基盤となっているパッケージ・ソフトウェア・モデルを脅かすビジネス・モデルと見られることが多い。

 「今日のホスティング・アプリケーションは高い堅牢性と信頼性を備え、管理も簡単である。SaaSモデルでは、複数のアプリケーションにわたってデータを検索したり、ドキュメントを共有したりするのも容易だ」とシュミット氏は説明した。

 こうした戦略を推し進めるべく、グーグルは2006年8月に「Google Apps for Your Domain」(画面6)という企業向けのSaaSスイートをリリースしている。同スイートには、Webメールの「Gmail」、インスタント・メッセージング(IM)/音声チャットの「Google Talk」、スケジュール管理の「Google Calendar」、Webページ・オーサリングの「Google Page Creator」が含まれている。ユーザーはこれらすべてを無料で使用できるが、グーグルはより高度な機能を必要とする企業向けに、有料の上位版を準備している。なお、同スイートは11月に新機能が加わり、従業員が各種のホスティング型アプリケーションを利用する際、最初にアクセスするポータル・ページを設けられるようになった。

 ただし、SaaSもよいことずくめではない。例えば最近では、グーグルのブログ・ホスティング/オーサリング・サービス「Blogger」のユーザーが、パフォーマンス低下の問題が継続的に発生しているとの不満の声を上げた。Web解析サービスの「Google Analytics」も、2005年11月の無料化後にアクセスが集中して機能不全に陥り、グーグルは問題発生後1週間にわたって同サービスを安定化させることができず、ついには同サービスへの新規登録を一時中止する措置をとっている。

回復が続くか、バブル崩壊となるか。
岐路に立つインターネット業界

画面7:Web 2.0を代表する百科事典サイト「Wikipedia」(日本版)

 Web 2.0 Summitに参加したアナリストら専門家は、Webの成長をさらに引き延ばすチャンスは豊富にあると口をそろえる。ブログやWiki(画面7)、SNS、ソーシャル・ブックマーク、タギング、ポッドキャスティング、ビデオ共有、そしてこれらのマッシュアップといったWeb 2.0系サービスは、まだまだ改良の余地がある。さらに、それらをエンタープライズ市場やモバイル市場に適合させることにも熱い期待が寄せられている。いずれの場合も、カギとなるのは、既存のものの模倣ではない製品やサービスを目指すことだ。

 起業家がよく犯す間違いは、持続可能なサービスに帰着しない“クールな機能”の開発に没頭してしまうことだ、とベンチャー・キャピタル会社、ベイ・パートナーズのパートナー、エリック・チン氏は警告する。「これはインターネット企業の立ち上げに必要なハードウェアやソフトウェア、帯域幅のコスト低下で可能となった最近の現象だ」(同氏)

画面8:リンデン・ラボのオンライン・ゲーム「Second Life

 「人々が大挙してこの分野に参入し、積極的に投資しているので、本来ならだれにも相手にされない企業までも資金を得ている。このため、加熱気味の不健全な競争環境となりつつある」とチン氏は続けた。同氏は当面、リンデン・ラボのオンライン・ゲーム「Second Life」(画面8)のような、ユーザーが進んで金を払い仮想的アイデンティティを作り上げる「個人的自己表現型のWebサイト」に大きなチャンスがあると見ている。

 最終的に、Web 2.0ムーブメントを軌道に乗せる源となるのはイノベーションである。だが、もし大企業が無分別に新興企業を買収し、その生かし方を知らずに革新的な精神を削いでいったとしたら確実に悪影響が出るだろう。

 イノベーションを脅かすもう1つの危険は、新興企業の林立によって投資家やユーザーが混乱し、真にすぐれたアイデアを持つ企業の見分けがつかなくなることだ。インターネット企業に投資するベンチャー・キャピタリストらによると、相談に訪れる起業家の数が過去18〜24カ月間に着実に増えているという。彼らは異口同音に、選択肢が多いのはよいことだが、その一方で、将来性のあるものを見極めるのがさらに難しくなると語る。

 以上が今回のWeb 2.0 Summitのハイライトである。インターネット業界の幹部や投資家が今後12カ月間に切るカードによって、インターネット経済は回復基調を続けるか、足下がぐらついて再びバブルの崩壊に飲み込まれてしまうかのどちらかになるだろう。


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