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【解説】
米国上院が可決した「テロ監視プログラム延長」の顛末

通信事業者の免責条項を巡り議会は紛糾

(2008年07月10日)

米国上院議会は7月9日、賛否両論ある米国家安全保障局(NSA)の監視プログラム延長を承認した。同プログラムは、テロ容疑者ばかりか米国市民をも対象にしたもので、プログラムに協力した通信事業者には訴追免除が与えられることになる。

Grant Gross
IDG News Serviceワシントン支局

提出された修正案を巡り議会内は紛糾

 米国上院は69対28で監視プログラムの延長を可決し、2001年から実施してきた同プログラムを部分的に裁判所の監督下に置いた。ジョージ・ブッシュ(George Bush)大統領の支持する同案が可決されたことで、電話や電子メールといった電子的コミュニケーションを対象とした「Terrorist Surveillance Program(テロリスト監視プログラム)」は、2012年末まで延長される見込みとなった。

米国上院議会は、通信事業者の訴追免除を巡って紛糾していた(画面は上院議会のWebサイト)

 「Foreign Intelligence Surveillance Act(FISA)と呼ばれる改正外国情報監視法案は、Bush大統領の署名を経てまもなく成立する見込みだ。ウェストバージニア州民主党上院議員であり、上院情報委員会の議長も務めるジェイ・ロックフェラー(Jay Rockefeller)氏は、「FISAは米国の安全に必要不可欠な法案だ」と主張した。

 民主党員を中心とした複数の上院議員が、通信事業者に対する刑事免責条項を同法から排除するか、もしくは効力を弱めようとしたものの、そうした3つの修正案を米上院は否決している。

 これらの修正案が可決すれば、議会と大統領政権の双方が同法に関して妥協し合ったことも揺らいでしまうだろうと、ミズーリ州共和党上院議員のキット・ボンド(Kit Bond)氏は述べている。同氏は、民主党員の多くは通信事業者免責条項に怒りを表しているが、そうした怒りは「米国の外敵を打倒することにこそ向けるべき」と話している。

 米国上院は、「9.11同時多発テロ」の発生直後に開始された、いわゆるテロリスト監視プログラムを延長する同法から、通信事業者免責条項を排除する第1の修正案を66対32で否決した。この監視プログラムでは、海外のテロ容疑者と通信した米国居住者に対し、令状なしでの盗聴権限をNSAに与えるものとなっている。

 第2の修正案は、監視プログラムの合憲性、あるいは違憲性の判断を米国地方裁判所に求めるもので、これが承認されたあかつきには、通信事業者を相手取った40件を超す係争中の裁判を進めることができると考えられていた。しかし、ペンシルバニア州共和党員のアーレン・スペクター(Arlen Specter)上院議員が提出した同修正案は、61対37で否決された。

 第3の修正案を提起したのは、ニューメキシコ州民主党上院議員のジェフ・ビンガマン(Jeff Bingaman)氏である。同氏の修正案は、訴訟を棄却するか否かの決定を1年以上先送りにし、その間に米連邦機関監察官らによる監視プログラムの調査を実施するという内容で、監察官による調査報告を受けた後、議会が通信事業者免責を与える可能性を判断するとされていた。同修正案も56対42で退けられている。

 Bingaman氏は、上院議員の大半がいまだに監視プログラムの実態をよく理解していないと話す。「何に対して免責を与えようとしているのか、われわれはほとんどわかっていない。米国市民は、議会が事情を理解したうえで決断を下すことを望んでいるはずだ」(Bingaman氏)

 Bond氏は、有事の際に米国政府に協力した企業を守るため、通信事業者免責条項はどうしても必要だと述べている。「違法行為を通報し、政府への協力を惜しまない愛国者を罰するのは、正しい行為とは言えない」(Bond氏)

 Bush大統領は、監視プログラムは国土防衛に欠かせないと断言しながらも、通信事業者免責条項が同法から削除された場合は、その成立に対して拒否権を発動すると警告していた。拒否権が発動されていれば、大統領政権および議会が新たな妥協策を講じるまで、監視プログラムは実質的に運用不能となるところだった。


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