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[e・Gov]電子行政/電子政策
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【連載】
韓国の電子自治体事情
第8回 釜山広域市 道路掘削インターネット申請システム──市民中心のデジタル先端都市へ
(2006年07月07日)
住民中心の電子自治体構築が住民満足度を向上させている韓国の自治体。釜山広域市で導入した道路工事の申請システムも間接的ではありながら住民の暮らしやすさの向上に貢献している。
高 選圭
韓国 中央選挙管理委員会 選挙研修院 教授
情報科学博士
最高水準の電子自治体構築でユビキタス都市を目指す
韓国第2の都市である釜山広域市では、2000年から3,389億ウォン(約370億円)の事業費を投じ、デジタル先端都市の構築を目指して情報化事業を積極的に進めてきた。それは「市民中心のデジタル先端都市構築計画(Digiport21)」の下で進められ、北東アジアの物流中心都市の構築と金融・港湾都市およびデジタル情報都市の構築に向け、電子自治体の構築事業に力を入れてきた。
釜山広域市の電子自治体構築は、中央政府の電子政府構築計画との連携を図りながら、最高水準の電子自治体サービスを提供することを目標としている。特に、2004年からはユビキタス都市建設を目指した「釜山U-City」計画が実行に移されている。
この「釜山U-City」計画は、釜山地域の産業と経済的な立地を考慮し、港湾(U-Port)、WiBro(Wireless Broadband:韓国で開発された無線ブロードバンドのインターネット・アクセス国際標準)を活用したコンベンション(U-Convention)の構築が計画されている。
このほかにも、ユビキタス交通統制システム(U-Traffic)、地域の製品・部品企業の総合供給管理クラスター構築(U-Automotive)といったインフラ整備のほか、市民や企業に向けたさまざまな電子自治体サービスの提供に取り組んでいる。
| 道路掘削インターネット申請システム |
行政手続きを単純化し住民の生活環境向上も果たす
釜山広域市が構築を進める電子自治体サービスの中でも、特に韓国国内で高く評価されているのが、「道路掘削インターネット申請システム(http://uis-roaddig.metro.busan.kr)」である。このシステムは、都市の効率性と市民生活の安全性・利便性向上を目標としている。
釜山広域市ではこれまで、道路の掘削工事において、申請から許可までは長い時間と複雑な書類・手続きが必要だった。道路工事を行う事業者の担当者は、少なくても5回以上、市役所との間を往復しなければならなかったのだ。住民にとっても、道路工事に関する情報がほとんど提供されず、交通渋滞に巻き込まれるという悪循環が続いていた。
道路掘削インターネット申請システムは、道路掘削関連の許認可に関する行政手続きを、インターネットを介して申請・処理することを可能にするとともに、関連機関との間で工事関連情報の共有を実現し、住民に対して工事情報を公開・提供する双方向の行政システムである。
| 道路掘削インターネット申請システムのWebサイト |
このシステムによって、道路掘削業者は、これまで何度も役所を往復していた工事関連の申請などがオンラインで実現できるようになった。これは、行政手続きの単純化と内部業務の効率性・透明性を確保するといった行政側のメリットを生み出すと同時に、関連機関との情報共有によって、重複する掘削工事の事前調整を行うことで住民の安全性も確保することができる。住民自身も、インターネットで公開されている工事情報を基に、迂回するなどの事前準備が可能となる。
道路掘削インターネット申請システムは現在、釜山広域市内16の区と郡、庁内30部局の6分野28業務に利用されている。また、警察庁、教育委員会、釜山都市ガス、電力公社、KT(コリアテレコム)など、12の関連機関の連携・協力により運営されている。道路掘削関連手数料の納付は、税外収入インターネット納付システムである市郡区財政情報システムとの連携により、インターネット上で行える。
工事事業者の負担軽減や住民満足度の向上にも寄与
道路掘削インターネット申請システムの成果は、何よりも道路掘削に伴う社会的費用の節約であり、市民の利便性の向上である。
釜山広域市 情報化担当官室の道路掘削インターネット申請システム担当職員によると、業務のオンライン化で年間9億ウォン(約9,800万円)、重複工事を避けることで年間22億ウォン(約2億4,000万円)の経済的な効果があったという。
また、年間約5,200件の申請がオンライン化され、住民はおよそ5万2,000時間の時間節約と年間22億ウォン(約2億4,000万円)の道路工事費用を削減したと説明する。更に、従来の1件の工事申請には5回以上の役所訪問と、処理に10日もの期間が必要であったが、同システムの稼働後は処理期間が3日に短縮し、完全なワンストップ申請処理が実現されることになった。
同システムは、住民・企業・行政間の情報公開・共有を実現することによって社会的な非効率性を排除し、住民・企業の競争力を高めると同時に、行政の透明性と効率性の向上を実現した。韓国国内では、こうした住民中心の行政サービスに対する住民満足度が高まっているが、釜山広域市の場合もその例外ではないようだ。
<著者プロフィール>
高 選圭(ゴ・ソンギュ)
1966年生まれ。2000年東北大学大学院修了、情報科学博士。韓国世宗研究所研究委員、檀国大学講師、ソウル市市策電子政府研究所 首席研究員兼企画部長を経て、韓国中央選挙管理委員会選挙研修院 教授。国際大学GLOCOMフェロー、ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員。著書は「日本の電子政府・電子投票」「日本の電子政府推進と個人情報保護」「韓国の電子政府構築と市民満足度」ほか多数。
- 韓国の電子自治体事情
- 第1回 u-Koreaの社会経済的基盤と推進段階
- 第2回 u-Koreaの中核を担う「USN」と「BcN」
- 第3回 u-Koreaのネットワークを支える「IPv6」
- 第4回 ホーム・ネットワークとユビキタス都市(u-City)
- 第5回 u-Koreaの未来像──ITに基づく新しい知能基盤福祉社会とその課題
- 第6回 ソウル特別市 江南区──世界一の電子自治体・電子民主主義を目指す
- 第7回 ソウル特別市 地方税インターネット納付システム──生活密着型電子自治体の構築
- 第8回 釜山広域市 道路掘削インターネット申請システム──市民中心のデジタル先端都市へ
- 第9回 全羅南道 順天市 サイバー教育システム
- 第10回 慶尚北道 音声支援情報システム──韓国一の教育都市を目指す
- 第11回 ソウル特別市 端草区──GIS地域情報検索システム「生活ネット」
- 第12回 サイバー観光文化情報システム(三多館)──済州道 済州(チェジュ)島
- 第13回 慶尚南道 晋州(チンジュ)市 モバイル電子自治体の構築
- 第14回 韓国の事例から見えてくる電子自治体の今後の課題


