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[e・Gov]電子行政/電子政策
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【連載】
韓国の電子自治体事情
第9回 全羅南道 順天市 サイバー教育システム
(2006年07月21日)
韓国南西部に位置する行政区全羅南道(チョルラナムド)の順天(スンチョン)市はインターネット時代の新しい教育都市を目指している。2003年11月からは順天市役所サイバー教育センターが運営するeラーニング講座が本格稼働しており、新しい形態の教育サービスとして注目されている。
高 選圭
韓国 中央選挙管理委員会 選挙研修院 教授
情報科学博士
中央と地方の格差是正にIT、ブロードバンドが果たす役割
順天市は人口が約27万人と典型的な地方都市であったが、電子自治体の構築に伴って開始されたさまざまな生活関連サービスによって、住民生活の質には明らかな変化が生じている。それは主に、教育面に現れている。
従来の学校教育や社会教育では、決められた時間と空間に学生や受講生が集まって初めて成立するため、さまざまな制約があった。しかし、順天市が導入した「サイバー教育システム」によるeラーニング講座は、こうした従来の制約をなくし、だれでも、いつでも、どこからでもさまざまな教育コンテンツを利用できる環境を生み出したのだ。
工業化時代の韓国社会では、中央と地方間、そして都市と農村地域間にさまざまな格差が生まれた。中央であるソウルや首都圏地域に人口・教育・産業・文化施設などが集中し、仕事と教育の機会を求めて地方から中央への人口流出が起こった。これは、都市地域と農村地域間のさまざまな格差と相まって、韓国社会の大きな問題として指摘されてきた。
しかし、今では国内全域にブロードバンド・インフラが整備され、各家庭や企業にインターネットが普及したことによって、問題化していた地域間の格差や不均等な発展の是正に役立てることも可能になってきている。
韓国政府は、地域情報化と電子政府・電子自治体の構築目的の1つに地域間格差の問題の解決を挙げており、そのためのさまざまな政策を推進している。中央と地方の格差を是正するという意味で、順天市のサイバー教育システムを活用したeラーニング講座は、大きな意義を持っていると言えるだろう。
| 全羅南道 順天(スンチョン)市公式サイトにある「サイバー教育システム」ページ |
eラーニングの受講料は無料成績優秀者には奨学金の授与も
順天市のサイバー教育システム(http://www.suncheon-si.go.kr/)は、中央に比べて不利な状況にあった地方都市の教育環境を、ITを活用して改善しようとする試みである。特に、地方都市・農村地域で顕著だった教育格差や情報化格差を解消することは、豊富な教育コンテンツを学生向けに提供するだけでは実現できない。
順天市役所の担当者は「農村地域の住民に対して、情報化関連の教育コンテンツを提供し、ITリテラシーの向上を図るとともに、地域間の情報格差を是正し、均衡のとれた発展にも寄与できる」と説明している。
同システムは、情報化教育、小・中・高校の学習教育、生涯教育など、全3分野、合計82の課程を提供し、各課程には10以上の講座が設けられている。気になるeラーニングの受講料だが、全羅南道の地域住民であれば無料で受講できる。また、ソウル特別市の江南区役所と協力しており、交流協力事業の一環として、江南区で行われているインターネット教育放送の講義も受講できる。
地域住民の利用率が高いバラエティに富んだ教育課程
順天市のサイバー教育システムの各課程を見ていくと、非常にバラエティに富んでいることがわかる。生涯学習、実践学習系では、ホームページ構築課程やインターネット課程はもちろん、プログラミング課程、Excel、Word、PowerPoint、Webデザインの課程も設けられている。
また、国家試験の準備課程として、情報処理技師課程も開設されている。小・中・高校の学習教育では、小学校1年生から高校3年生までの国語・数学など49講座が用意されている。
これらは、映像講義と黒板を使って授業を進行する電子黒板講義に分かれている。生涯教育では、英語や日本語などの外国語のほか、イメージ・メイキング、健康、漢方関連の課程が人気だという。サイバー教育システムの中には、利用者のためのコミュニティが設けられており、日々の情報交換はもちろん、市政や行政サービスに対する討論も行われている。
同システムは2005年7月現在、延べ5万3,751人が講座を受講している。その受講状況を見てみると、小学生講座が50.2%、中学生・高校生の講座が12.3%、情報化教育が27.6%、生涯教育が9.9%となっている。また、受講生を職業別に見てみると、学生が最も多く、次いで会社員、公務員、サービス業、農業従事者の順となっている。年齢別では、30代以上が50%超えており、学生だけではなく、地域住民の受講者も多いことが分かる。
順天市 情報通信課の黄澤淵係長は、順天市のサイバー教育システムの効果について、「8億4千万ウォン(9,200万円)の予算と教育費支出の節約効果があった」と財政面での効果を強調する。また、このような教育コンテンツの提供は、順天市の公式Webサイトの活用度を高めるとともに、市政に対する住民の満足度を向上させる効果も期待できるという。
| 英語課程のページ。映像と電子黒板で講義が進められる |
<著者プロフィール>
高 選圭(ゴ・ソンギュ)
1966年生まれ。2000年東北大学大学院修了、情報科学博士。韓国世宗研究所研究委員、檀国大学講師、ソウル市市策電子政府研究所 首席研究員兼企画部長を経て、韓国中央選挙管理委員会選挙研修院 教授。国際大学GLOCOMフェロー、ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員。著書は「日本の電子政府・電子投票」「日本の電子政府推進と個人情報保護」「韓国の電子政府構築と市民満足度」ほか多数。
- 韓国の電子自治体事情
- 第1回 u-Koreaの社会経済的基盤と推進段階
- 第2回 u-Koreaの中核を担う「USN」と「BcN」
- 第3回 u-Koreaのネットワークを支える「IPv6」
- 第4回 ホーム・ネットワークとユビキタス都市(u-City)
- 第5回 u-Koreaの未来像──ITに基づく新しい知能基盤福祉社会とその課題
- 第6回 ソウル特別市 江南区──世界一の電子自治体・電子民主主義を目指す
- 第7回 ソウル特別市 地方税インターネット納付システム──生活密着型電子自治体の構築
- 第8回 釜山広域市 道路掘削インターネット申請システム──市民中心のデジタル先端都市へ
- 第9回 全羅南道 順天市 サイバー教育システム
- 第10回 慶尚北道 音声支援情報システム──韓国一の教育都市を目指す
- 第11回 ソウル特別市 端草区──GIS地域情報検索システム「生活ネット」
- 第12回 サイバー観光文化情報システム(三多館)──済州道 済州(チェジュ)島
- 第13回 慶尚南道 晋州(チンジュ)市 モバイル電子自治体の構築
- 第14回 韓国の事例から見えてくる電子自治体の今後の課題


