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[e・Gov]電子行政/電子政策
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【連載】
韓国の電子自治体事情
第10回 慶尚北道 音声支援情報システム──韓国一の教育都市を目指す
(2006年08月05日)
世界でも有数の情報大国となった韓国。その一方で情報格差の問題も表面化しつつあり重大な社会問題の1つとして注目されるようになってきた。韓国東南部に位置する行政区慶尚北道(キョンサンプクド)は、住民向けに音声支援情報システムを提供し情報格差の解消に取り組んでいる。
高 選圭
韓国 中央選挙管理委員会 選挙研修院 教授
情報科学博士
デジタル・デバイドの解消に行政機関の取り組みが本格化
韓国は、1998年頃から情報化先進国を目指し、政府主導の情報化推進計画を基に、国、自治体、民間企業が一体となって、さまざまな方策を講じてきた。
この推進計画では、情報化ビジョンとして、「21世紀における知識基盤を中心とした国家建設の推進」を掲げており、政府は情報インフラの整備と多様なコンテンツの提供、電子政府・電子自治体サービスの開発を積極的に推進してきた。その結果、2005年にはブロードバンドの世帯普及率が70%を超え、インターネット利用者は3,150万人となった。
こうした目覚しい情報化の進展の一方で、多くの情報弱者も生まれてしまった。ITを使いこなせる人間と、高齢者、身体不自由者、未就学児童など、年齢、職業、社会階層、地域的、身体的条件に起因する情報弱者との格差(デジタル・デバイド)が社会的な問題として認識されている。
こうした中で、韓国政府は2003年5月、これら情報格差を解消するべく「身体不自由者・高齢者の情報通信アクセシビリティ確保のためのガイドライン」を策定した。この中には、情報機器のユニバーサル・デザインと情報アクセシビリティの確保のための制度化が規定されており、政府、地方自治団体、その他公共機関は、情報的弱者へのアクセスビリティ確保が義務付けられたが、現在、その状況はあまり改善されていない。
音声による情報アクセスの支援で情報アクセシビリティを確保する
韓国東南部に位置する行政区の慶尚北道(キョンサンプクド)では、情報アクセシビリティを確保することで道内住民の情報格差の解消と情報福祉の実現を目的とする「GB Digital Divide Project」を推進している(「GB」はGyeongsang buk-doの頭文字)。
この事業は、情報弱者が特に多いとされる農村地域の情報化、農村地域への超高速通信網の整備、農村地域住民へのパソコンの半額提供、情報化教育のための講師派遣、無料教育などで構成されている。
同事業の1つが、道庁のWebサイト(http://www.easyhome.go.kr/)で提供されている「音声支援情報システム」だ。これは、情報弱者のために情報・通信アクセシビリティを確保する試みとして構築されたものである。
従来の音声システムの多くが、情報弱者に対する情報やコンテンツの提供に重点を置いてきたのに対し、慶尚北道の音声支援情報システムは、あらゆるホームページとそこに掲載している情報に、だれでも簡単にアクセスできることを目指しており、さまざまなサービス・メニューを提供中だ。
音声支援情報システムの提供が開始されたのは2002年3月だが、すべての機能の提供が完了したのは2004年3月であった。2年もの期間を費やした理由は、予算の減少、開発業者の不在、そして情報弱者に対する関係者の認識不足にあった。同システムの提供を開始した当初、韓国では、情報弱者を支援するという社会的な認識が現在よりも少なかったのだ。
そうした状況下で、自治体も議会で予算を確保することに積極的ではなく、また、システムの開発業者も需要が少ない同システムへの投資をしてこなかったことが複合的に作用した。実際には、構築予算は国の支援で賄われたと、慶商北道 情報通信課の音声支援情報システム担当者は話している。
| 慶尚北道(キョンサンプクド)のWebサイト。提供中の音声支援情報システムには1日で1,000人以上の利用者がある。 |
パソコンからの利用以外にも複数の情報提供の手段を用意
音声支援情報システムの主なサービスは次のとおりだ。
@音声でインターネットを利用する音声専用ホームページのサービス
A音声専用ホームページのメニューとコンテンツを電話で案内・音声支援するサービス(Easy Call)
B音声でOS(Windows)やインターネットを自由に閲覧できる音声支援Webブラウザ・サービス
C音声専用ホームページのコンテンツを読み上げるサービス
D道庁へ電話をかけた際、音声認識で担当部局をつなげるサービス
E行政情報にSMS(携帯電話を利用した文字メッセージ)で伝送するサービス
音声専用ホームページのサービス・メニューには、慶商北道の紹介情報、電子申請サービス、福祉・生活情報、文化情報、資料室、自由掲示板、音声の世界などがある。中でも、音声の世界メニューでは、エッセイ、小説、手紙、音楽などのコンテンツを読み聞くことが可能だ。
また、音声支援Webブラウザ・サービスを利用すれば、道庁以外のWebサイトのコンテンツを認識することもでき、画面情報を音声にして読み上げるスクリーン・リーダーを別途導入する必要がない。音声は男性・女性から選択することも可能だ。
この音声支援情報システムの成果は、何よりも情報弱者と見なされる住民に対して、簡単に情報にアクセスできる機会を提供したことにある。実際に、現在、同システムの利用者は1日当たり1,000人を超えており、情報平等社会の基盤の1つとして、その存在意義はきわめて大きい。
<著者プロフィール>
高 選圭(ゴ・ソンギュ)
1966年生まれ。2000年東北大学大学院修了、情報科学博士。韓国世宗研究所研究委員、檀国大学講師、ソウル市市策電子政府研究所 首席研究員兼企画部長を経て、韓国中央選挙管理委員会選挙研修院 教授。国際大学GLOCOMフェロー、ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員。著書は「日本の電子政府・電子投票」「日本の電子政府推進と個人情報保護」「韓国の電子政府構築と市民満足度」ほか多数。
- 韓国の電子自治体事情
- 第1回 u-Koreaの社会経済的基盤と推進段階
- 第2回 u-Koreaの中核を担う「USN」と「BcN」
- 第3回 u-Koreaのネットワークを支える「IPv6」
- 第4回 ホーム・ネットワークとユビキタス都市(u-City)
- 第5回 u-Koreaの未来像──ITに基づく新しい知能基盤福祉社会とその課題
- 第6回 ソウル特別市 江南区──世界一の電子自治体・電子民主主義を目指す
- 第7回 ソウル特別市 地方税インターネット納付システム──生活密着型電子自治体の構築
- 第8回 釜山広域市 道路掘削インターネット申請システム──市民中心のデジタル先端都市へ
- 第9回 全羅南道 順天市 サイバー教育システム
- 第10回 慶尚北道 音声支援情報システム──韓国一の教育都市を目指す
- 第11回 ソウル特別市 端草区──GIS地域情報検索システム「生活ネット」
- 第12回 サイバー観光文化情報システム(三多館)──済州道 済州(チェジュ)島
- 第13回 慶尚南道 晋州(チンジュ)市 モバイル電子自治体の構築
- 第14回 韓国の事例から見えてくる電子自治体の今後の課題


