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[e・Gov]電子行政/電子政策
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【連載】
韓国の電子自治体事情
第11回 ソウル特別市 端草区──GIS地域情報検索システム「生活ネット」
(2006年08月18日)
地域情報化の進展にともない地域ポータル・サイトもその数を増やしてきたがソウル特別市 端草(ソッチョ)区では地域生活情報の提供だけでなく地域の問題や行政区の政策も議論できる地域コミュニティ再生への取り組みが行われている。
高 選圭
韓国 中央選挙管理委員会 選挙研修院 教授
情報科学博士
増加するサイバー・コミュニティ
情報化の進展にともなって、個人はもちろんのこと、民間企業やさまざまな組織体がホームページを構築し、情報を発信している。最近では、それらのホームページ間で連携が図られ、社会的な争点に対して人々が議論する場、いわゆるサイバー・コミュニティも登場している。
韓国では最近、公的な性格を持つサイバー・コミュニティが増えており、コミュニケーション機能も急速に拡大している。中でも、地方自治体が構築・運用するサイバー・コミュニティが急増しており、地域住民を対象とした行政・生活関連情報の提供はもちろんのこと、住民満足度の向上や地域の競争力を高める試みも活発化の兆しを見せている。
韓国では近年、近隣の住民同士の関係が希薄になりつつあることが懸念されている。特に都市部に多く見られ、仕事などに追われる生活パターンやマンションに代表される個人主義的な生活スタイルの定着が要因とも言われている。
その点でサイバー・コミュニティは、自分の都合がよい時に議論などに参加できるほか、隣近所だけでなく、周辺の地域住民らとも新たな出会いや地域再発見の場ともなる。その結果、地域住民の間に連帯感をもたらし、地域の問題解決への参加を促したり、解決案を住民同士で議論する試みが行われたりしている。
| ソウル特別市の端草区のGIS地域情報検索システム「生活ネット」 |
情報弱者への参加機会にも配慮
ソウル特別市の端草区(ソッチョ)では、住民満足度と地域競争力を高めることを目的として、地域ポータル・サイト型のGIS地域情報検索システム「生活ネット(http://www.sclife.net/)」を2003年10月から運営している。
主なコンテンツとして、住民生活に必要な生活情報、交通・駐車情報、文化施設情報、行政情報、観光情報、地理情報、不動産情報、医療情報といったことのほかに、サイバー・コミュニティの役割も持ち合わせている。
端草区の担当者は構築目的として、「これからの知識情報化社会では、情報インフラがSOC(Social Overhead Capital:企業活動と国民生活全般に必要となる社会的間接資本)の役割を担う。地域情報基盤の構築は、個人と地域社会の競争力を左右するという認識からだった」と述べる。
端草区は「生活ネット」のサービス開始にともない、サイバー・コミュニティへの参加が困難とされる低所得者層や情報弱者である高齢者や障害者への対策を図っていく。具体的には、利用していない中古パソコンの寄付を広く呼びかけ、区はそれらを先の住民らに無償で提供した。同時に、住民を対象とした情報化教育を積極的に進め、地域の情報化能力を高めていった。
| 端草区内の文化施設・生活関連施設のうち、6千件以上の建物に、その概観写真と建物内のテナント情報が提供されている。 |
地域のあらゆる情報を網羅する
「生活ネット」で提供される情報は、端草区地域に特化しているが、その情報量は際立っている。まず、約3万6,000件に及ぶ区内の文化施設・生活関連施設の基本情報をベースとし、そのうち約6,000件以上は建物の写真と建物内のテナント情報がデータベース化されている。それらの情報は、1,000分の1の地図を基にしたGISと連動している。
例えば、地図上で特定の建物をクリックすると、その建物の写真と各階のテナント状況、連絡先、ホームページなどの情報を入手できる。なお、この地図情報は毎日更新されているという。
| 「生活ネット」上では、保護者が保育園内にいるわが子の様子を映像カメラで見ることができる。 |
ブロードバンド時代ならではのコンテンツも豊富に提供されている。その1つが保育園に子供を預ける保護者を対象としたライブ映像の配信サービスだ。区内58カ所の保育園には映像カメラが設置されており、保護者は保育園から発行されたIDとパスワードによって、家庭や勤務先からわが子の様子をうかがい知ることができる。そうした映像は任意に録画することも可能で、自分だけの映像アルバムとしても加工できる。
同様に、区内の病院を結ぶ“サイバー総合病院”が「生活ネット」内に構築されており、24時間対応のインターネット予約システムや希望する病院の医師に回答を要求できる医療相談システムを提供している。
生活の質の向上に大きく寄与
「生活ネット」の利用者は、1日当たり1万5,000人、月に50万人以上が利用している。運用後の利用者アンケートでは、生活の質が上がったとする住民が多く、地域経済の活性化にも大きく寄与していると分析されている。
病院や飲食店などで導入されたインターネット予約の利用機会も急増中で、混雑時の待ち時間も短縮するなど、住民の機会費用の減少にも貢献しているという。中でも、自動車検査期限や保健所の予防接種、電子申請の処理結果などの行政情報を携帯電話向けのメール(要登録)で提供するサービスは好評だという。
区政の争点や住民関連の問題を巡る政策討論も活発に行われており、区の政策を決定する過程に住民参加の機会を拡大させたことで、草の根民主主義の拡散にも大きく寄与している。
<著者プロフィール>
高 選圭(ゴ・ソンギュ)
1966年生まれ。2000年東北大学大学院修了、情報科学博士。韓国世宗研究所研究委員、檀国大学講師、ソウル市市策電子政府研究所 首席研究員兼企画部長を経て、韓国中央選挙管理委員会選挙研修院 教授。国際大学GLOCOMフェロー、ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員。著書は「日本の電子政府・電子投票」「日本の電子政府推進と個人情報保護」「韓国の電子政府構築と市民満足度」ほか多数。
- 韓国の電子自治体事情
- 第1回 u-Koreaの社会経済的基盤と推進段階
- 第2回 u-Koreaの中核を担う「USN」と「BcN」
- 第3回 u-Koreaのネットワークを支える「IPv6」
- 第4回 ホーム・ネットワークとユビキタス都市(u-City)
- 第5回 u-Koreaの未来像──ITに基づく新しい知能基盤福祉社会とその課題
- 第6回 ソウル特別市 江南区──世界一の電子自治体・電子民主主義を目指す
- 第7回 ソウル特別市 地方税インターネット納付システム──生活密着型電子自治体の構築
- 第8回 釜山広域市 道路掘削インターネット申請システム──市民中心のデジタル先端都市へ
- 第9回 全羅南道 順天市 サイバー教育システム
- 第10回 慶尚北道 音声支援情報システム──韓国一の教育都市を目指す
- 第11回 ソウル特別市 端草区──GIS地域情報検索システム「生活ネット」
- 第12回 サイバー観光文化情報システム(三多館)──済州道 済州(チェジュ)島
- 第13回 慶尚南道 晋州(チンジュ)市 モバイル電子自治体の構築
- 第14回 韓国の事例から見えてくる電子自治体の今後の課題


