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[e・Gov]電子行政/電子政策

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【連載】
韓国の電子自治体事情

第14回 韓国の事例から見えてくる電子自治体の今後の課題

(2006年09月08日)

 電子自治体の構築は行政の都合に合わせるのではなく住民の都合で進展させるべきである。とはいえ、それは簡単ではない。電子政府・電子自治体の先進国と言われる韓国でも一部の業務では非効率な面を残しているのである。最終回の今回は、実際の事例を見ながら電子自治体の今後の課題について検証してみたい。

高 選圭
韓国 中央選挙管理委員会 選挙研修院 教授
情報科学博士

韓国の自治体で見られる
住民ニーズに対応した情報施策

 地域情報化、また、それにともなう電子自治体の構築は、住民の身近な生活を支え、より便利な生活と多用な行政サービスの提供が本来の目的とされる。

 情報インフラの整備と提供するサービスの内容は、各地域の事情によって異なってくるが、韓国の先進的な電子自治体では地域や住民のニーズへ対応する体制が整備されており、かつ情報システムに対する評価も非常に高い。その結果、住民満足度も向上しており、住民本位の電子自治体構築が実践できていることを立証していると言える。

 こうした電子自治体の構築は、地域の競争力を強化することにもつながる。例えば、ソウル特別市で展開されている地方税インターネット納付システムは、クレジットカードやインターネット・バンキング経由で納税できることから、2004年には、その金額が8,594億ウオン(日本円で約1,028億円)にも上った。同市の予測では、2006年にはその利用者が更に増え、40万人以上が利用するとみている。

 また、済州(チェジュ)島では、地域の歴史や文化といった情報をコンテンツ化し、Webで広く展開することで観光産業の活性化に大きく寄与している。実際に、観光、流通産業などが連携したことで、年間1,000億ウォン(同119億円)以上の経済効果をもたらしている。

 そのほか、順天(スンチョン)市が提供しているサイバー教育システムは、就学することが地理的に不利な環境化にある住民に対して、都市部の住民と同じような教育機会を設けることを狙っている。これらは、いずれも住民生活の向上と地域の競争力強化に貢献している良い事例として評価できるだろう。

情報格差の是正に向けて
アクセシビリティの向上を図れ

 電子自治体の構築は、急速な情報化社会の影響でもたらした情報格差を解消させ、だれもが等しく参加できる情報福祉社会への転換も果たさなければならない。特に、身体障害者や高齢者など、これまで情報弱者とされてきた住民に対してのアクセシビリティの確保は、電子自治体の構築目的として常に意識されるものでなくてはならない。

 いわゆるユビキタス自治体では、従来のパソコンや情報端末機だけでなく、携帯電話、PDA、ケーブルテレビといったさまざまな媒体からアクセスできる体制とサービスの向上が求められる。こうしたことから、生活、行政、災害・防災、福祉といったさまざまな住民向け情報は、あらゆる住民の生活環境に対応するためにも、24時間、365日の対応が必須となってくるだろう。

利用が進まない電子申請手続き
職員本位の運用実態がその理由

 日本、韓国ともに現在でも、電子政府・電子自治体の構築がインフラの整備と行政システムの情報化、行政手続きのオンライン化が目的であると認識される傾向がある。そうした考えで電子化を推進してきた自治体などでは、インフラの整備と行政手続きのオンライン化が進んだとしても、住民と行政の関係はこれまでとあまり変わらない場合が多い。

 日本の場合、平成16年度末までには中央省庁における申請手続きの約96%がオンライン化されたが、中にはまったく利用されていない申請手続きもあった。その理由は、利用者のニーズを考えたシステムになっておらず、従来の紙による行政手続きを単に電子化しただけであるからだ。その際たるものが、従来の窓口扱いと同様に電子申請でも添付書類を要求することである。

 韓国でもその点は日本と同じで、申請受け付け時に住民に要求する公的証明書が、既に行政機関でデータベース化されているにもかかわらず、行政側の都合として、依然、添付書類の要求を続けていた。これは、電子政府・電子自治体の運用面において、極めて非効率な面を見せている今後の課題と言えるだろう。

住民本位の電子自治体とは
業務改革と共同利用体制が必要

 韓国では、行政機関が交付している公的証明書が2004年の実績で4億4,414万2,000件であった。この約60%に当たる2億6,000万件は他の行政機関へ提出する添付書類である。これは、住民が行政機関へ申請する公的証明書の大部分が、他の行政機関へ提出する目的で申請していることを意味する。こうした公的証明書の申請と発行にかかる時間と費用は、2つの行政機関をまたぐことから膨大なものであることが容易に想像がつくだろう。

 電子政府・電子自治体では、こうした非効率性の問題を解決できるはずだったが、現状ではまだそこまでは実現できていない。各行政機関の横断的な情報共有と情報システムの共同利用は、電子申請手続きの添付書類をなくし、住民の利用効率を高めると同時に、行政組織の効率化につなげる近道なのである。

 従って、電子政府・電子自治体の構築は、BPR(業務プロセス改善)、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ:業務・システムの最適化を図る設計手法)、そして行政改革とを連動させて進めるべきなのである。

 その韓国では、行政情報システムの共同利用を段階的に進め、2005年11月に24種類の添付書類が、2006年7月からは更に34種類が廃止され、最終的には全廃する予定である。このような行政情報の共同利用は、申請時の添付書類をなくし、住民サービスの向上と行政組織の効率化という真の意味の電子政府・電子自治体構築の効果をもたらすだろう。

(月刊e・Gov 2006年3月号より)

<著者プロフィール>

高 選圭(ゴ・ソンギュ)

1966年生まれ。2000年東北大学大学院修了、情報科学博士。韓国世宗研究所研究委員、檀国大学講師、ソウル市市策電子政府研究所 首席研究員兼企画部長を経て、韓国中央選挙管理委員会選挙研修院 教授。国際大学GLOCOMフェロー、ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員。著書は「日本の電子政府・電子投票」「日本の電子政府推進と個人情報保護」「韓国の電子政府構築と市民満足度」ほか多数。



韓国の電子自治体事情
第1回 u-Koreaの社会経済的基盤と推進段階
第2回 u-Koreaの中核を担う「USN」と「BcN」
第3回 u-Koreaのネットワークを支える「IPv6」
第4回 ホーム・ネットワークとユビキタス都市(u-City)
第5回 u-Koreaの未来像──ITに基づく新しい知能基盤福祉社会とその課題
第6回 ソウル特別市 江南区──世界一の電子自治体・電子民主主義を目指す
第7回 ソウル特別市 地方税インターネット納付システム──生活密着型電子自治体の構築
第8回 釜山広域市 道路掘削インターネット申請システム──市民中心のデジタル先端都市へ
第9回 全羅南道 順天市 サイバー教育システム
第10回 慶尚北道 音声支援情報システム──韓国一の教育都市を目指す
第11回 ソウル特別市 端草区──GIS地域情報検索システム「生活ネット」
第12回 サイバー観光文化情報システム(三多館)──済州道 済州(チェジュ)島
第13回 慶尚南道 晋州(チンジュ)市 モバイル電子自治体の構築
第14回 韓国の事例から見えてくる電子自治体の今後の課題

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