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グリッド・コンピューティング

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【インタビュー】
「SOAを支える技術基盤がグリッドだ」──プラットフォームコンピューティングCEO、ソニアン・ゾウ氏

(2006年06月08日)

 業務アプリケーションのディザスタ・リカバリや、航空業での予約業務/運航管理業務、保険業での代理店のオンライン処理など、国内においても、ビジネス・グリッドの有効性が広く認められるようになってきた。カナダに本社があるプラットフォームコンピューティングは、1992年の会社設立以来、グリッド・コンピューティングの発展を支えてきた専業ベンダーである。同社CEOソニアン・ゾウ氏に、ビジネス・グリッドの現状と今後について話を聞いた。

プラットフォームコンピューティングCEO、ソニアン・ゾウ氏
──まず、御社のユーザー企業には、どのような業種が多く、製品はどう利用されているのかを教えてほしい。

ゾウ氏:代表的な業種としては、製造業が挙げられる。当社設立後に最初の顧客となったユナイテッド・テクノロジーズ(UTC)の例で言えば、ボーイング777など航空機エンジンの設計で、当社のグリッド技術が利用された。UTCは当時、エアバスやボーイングのエンジン設計を担当しており、ジャンボジェット機のエンジンを4基から2基に減らそうとしていた。新しい機体とエンジンの設計に大規模で複雑な計算が必要となり、当社のグリッド技術が生かされることになった。

 航空業界でいえば、昨年当社と包括的な提携を結んだエアバスの例もある。エアバスでは、尾翼、ボディ、計器といった何千というパーツをドイツ、イギリス、スペインなどの複数の国で製造し、それらをフランスのトゥールーズに集めて機体を組み上げている。設計、製造、発注、輸送などのプロセスのどこかでミスが起これば、機体はスケジュールどおりに組み上がらない。われわれは、各プロセスで用いられていた異種混合のシステムをグリッドによって統合し、機体を組み上げるまでのあらゆるパターンをそのつどシミュレーションすることで、航空機の製造プロセスを支えている。

──製造業以外では、どのように活用されているのか。

ゾウ氏:金融業においては、デリバティブ商品の設計や、株や債券のトレーディング、ディーリング業務などで利用されている。金融業は、製造業と違って、1分1秒という瞬時の判断が要求される分野だ。数百台のサーバに対して、リアルタイムに情報を送ったり、高負荷処理を分散させたりする場合に、複数のサーバやデータベースを統合するグリッド技術が有効だ。金融業界は、ここ4、5年の間に、グリッドへの関心を特に強めてきた業界だ。

──あなたは、1987年という早い時期に分散コンピューティングやグリッドの構想を博士論文にまとめている。現在のようなビジネス・グリッドの展開は、当時から描いていたものなのか。

ゾウ氏:そうだ。しかし、最初の構想から現在のような状況になるまでに20年近くかかっている。その意味では、ITの進歩は、ビジネスに遅れをとっていると言わざるをえない。ビジネスは常に変化しているが、ITはその変化についていっていない。とてもスローだ。

──ITがビジネスに遅れをとっている最大の原因は何か。

ゾウ氏:1つの業務アプリケーションが、1つのサーバ上で稼働するような「サーバ・サイロ型」のITインフラになっていることが原因だ。サイロは島と考えていい。それぞれのアプリケーションとサーバが島のように孤立しており、連携がとれない状態になっている。

 このような、サーバ・サイロ型の問題点は3つある。まず、新しいアプリケーションを導入する場合でも、ハードウェア、データベースなどを一から構築するために、時間がかかるということ。次に、導入して利用する段階になっても、必要なときに十分なキャパがなく、必要がないときにアイドルな状態が続くということ。最後に、島つまりITインフラの維持管理に、多くの時間とコストがかかるということだ。

 グリッドは、こうした諸問題を解決するものだ。ITの第1世代をメインフレーム、第2世代をクライアント/サーバ・コンピューティングとすれば、グリッド・コンピューティングは第3世代に当たる。

──既存資産を活用する分散コンピューティングの手法としては、SOA(サービス指向アーキテクチャ)がある。SOAとグリッドとの関連性を教えてほしい。両者は、統合されるのか、それとも別々の進化をたどるのか。

ゾウ氏:米国IDCのグループ・バイスプレジデント、エンタープライズ・コンピューティング担当アナリストのバーノン・ターナー氏の意見が参考になる。ターナー氏は、「SOAアプリケーションは、SOI(サービス指向インフラストラクチャ)によってサポートされなければならない」と説いている。SOIは、すべてのITリソース(CPU、メモリ、ストレージ、ライセンスなど)をサービスとして提供していこうという考え方で、SOAアプリケーションからITリソースへのリクエストがあった場合に、柔軟かつ迅速に対応できるようなITインフラの構築を目指すものだ。

 私もターナー氏と同意見だ。そして、SOIを実現するための技術的基盤がグリッドにほかならない。このような、グリッドに支えられたSOIは、オンデマンドな形で提供されるユーティリティ・コンピューティングに近い形態となる。

──現在、グリッドの標準化作業が進められているが、ビジネス・グリッドの展開に比べ、標準化は遅れている印象を受ける。グリッド標準化の進捗度をどう考えているか。

ゾウ氏:グリッドの標準化は、すべてのITリソースを統合しSOIを実現する過程で、欠くことのできない要素だ。現在、グローバル・グリッド・フォーラム(GGF)とエンタープライズ・グリッド・アライアンス(EGA)の2つの団体が、お互いに協力し合いながら標準化作業を進めている。当社でも、マイクロソフトと協力して、GGFにJSDL (Job Submission Definition Language:ジョブ記述言語)の提案を行うなど、標準化作業に積極的に参加している。ただ、注意していただきたいのは、グリッドには1つだけの標準というものはないということだ。グリッドはさまざまな局面を持っており、多くの標準技術が凝集して、「標準のベース」を作っていくにすぎない。

──グリッドの課題と、今後の展望を教えてほしい。

ゾウ氏:グリッドは、さまざまな業種から求められている技術であり、その傾向は不可逆的だ。今後もますますグリッドは利用されていくだろう。課題としては、サーバ・サイロ型から、グリッド・ベースのSOIアプローチにどう変えていくかだ。メインフレームからクライアント/サーバ・コンピューティングに時間をかけて変わっていったように、グリッド・ベースのSOIに変わるには、あと10年はかかるだろう。

 なぜ10年かかるかというと、メンタリティの問題が大きい。「サーバ・ハギング」という言葉があるが、ユーザーは、自分の所有物であるサーバをきつく抱きしめたまま、他人に使わせようとしない。ユーザー、ベンダーがそれぞれ協力し合いながら、そうした意識を変えていく必要がある。

 そのために当社は、質のいいサービスを提供し、ユーザーからの信頼を得るべく努力している。ユーザーは、10年経ったときに初めて、グリッド・コンピューティングという言葉がなくなっていることに気づくはずだ。それは、インフラの一部として社会に溶け込み、ユーザーに意識されない状態で利用されるようになっていることを意味する。

(齋藤公二/Computerworld.jp)




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