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IBMウォッチ

【解説】
IT業界で闘う“アスピーズ”

アスペルガー症候群を抱えたITプロたちの“苦悩”と“現状”

(2008年06月25日)

問題が表面化しづらい?進まないアスピーズ支援

 アスピーズが多いとされるIT業界。では、IT企業は彼らのためにどのような支援制度を設けているのだろうか。

 Becker氏とMeyer氏は、「一般的な医療保険制度を利用してセラピー費用を負担するといったケースを別として、アスペルガー症候群/HFAを抱える社員の職務訓練や各種支援を制度として設けている企業の存在は聞いたことがない」と口をそろえる。

 IT業界にアスピーズが多いのであれば、彼らを支援するため、少なくともその存在を認知するために、なぜ業界として積極的に行動しないのだろうか。

 IT企業は、人種的、身体的、発達的背景を持つ社員たちを支援するため、他業界の企業よりも積極的に活動している。例えば、Microsoftもその1社だ。同社には少なくとも20以上の「アフィニティ・グループ」(マイノリティ支援グループ)があり、アフリカ系アメリカ人、シンガポール人、シングル・マザー/ファーザー、聴覚障害者、視覚障害者、同性愛者/両性愛者、性同一性障害者などを支援している。しかし、自閉症を抱える社員に対しては、何の支援もしていない。

 Microsoftの広報担当者は、同社にはアスピーズのグループや彼らを支援する制度は存在しないとコメントしている。過去には、アスペルガー症候群の社員が支援策を求めてきたことがあったが、そうした場合には、障害者担当のケース・マネジャーが、「ケース・バイ・ケース」で「しかるべき支援」をしていたという。

 なお、米国Intel、米国Yahoo!、米国Googleにアスピーズに関するに取材を申し入れたところ、IntelとYahoo!は取材拒否(返答拒否)、Googleは広報担当者を通じて「その質問には答えられない」と回答してきた。

 アスピーズへの支援が困難である理由の1つには、車椅子を利用せざるをえない障害や、外国人社員が直面する言語的な障壁とは異なり、その“差異”が目に見えず、周囲からの理解を得られないことが挙げられる。「視覚的にすぐわかる障害のほうが、同僚らの理解を得やすいということはあるだろう。問題を抱えると顔が真っ青になるというような症状が、アスペルガー症候群にあればよかったのだが……」とRyno氏は嘆く。

 Jeremy氏も、「(言語の異なる)外国人の相手をするときのように、その“差異”がすぐにわかれば、アスペルガー症候群を抱える人に対しても寛大になれるのだろうが……」と支援が難しい理由を説明する。

 もう1つの理由として、その特徴からアスピーズは組織を作るという行為が苦手であるという事情もある。Microsoftで組織されている支援グループは、いずれも当事者である社員が自発的に結成し、運営しているものだ。アスピーズの場合、当事者の社員が単独もしくは仲間と共に交流グループを立ち上げることは非常に考えにくいのである。またアスピーズは通常、アスペルガー症候群であることを職場で公言していない。せいぜい1人か2人にしか打ち明けていないことが多いのだ。

 アスペルガー症候群であることを公言すべきかどうかについては、今も論争が続いている。Ryno氏の場合、最後となった職場でアスペルガー症候群であることを公言した。しかし、同氏はそのことを後悔しているという。偶然にも上司が軽度のアスペルガー症候群だったにもかかわらず、だ。「アスピーズが上司になったのは、そのときが初めてだった。わたしがなぜ他人と目を合わせようとしないのか、会議を嫌うのか、くだらない冗談を適当にあしらうことができないのかを説明せずに済むのは、とても新鮮な経験だった」(Ryno氏)


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