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【解説】
IT業界で闘う“アスピーズ”
アスペルガー症候群を抱えたITプロたちの“苦悩”と“現状”
(2008年06月25日)
会社の同僚たちは組織の一員という自覚があるため、日々の過ちをお互いに修正し、周囲に自分を“適合”させていくことができるが、Jeremy氏にはそれができない。「周囲の人たちは、わたしの悪い点を指摘しようとはしない。だから問題が顕在化するまで、自分が過ちを犯していることに気づかないのだ。わたしは多くのことに気づいてはいるが、重要なシグナルを見逃している。見逃したシグナルはブラック・ホールのようなもので、あまりに多くのシグナルを見逃すと、最終的にわたしはその穴から外に吸い出されることになってしまう。その繰り返しだ」(Jeremy氏)
これは、仕事ができるかどうかの問題ではない。その証拠に、Jeremy氏はプログラマーとしての腕を高く評価されており、次々に仕事が舞い込んでくる。問題は人間関係をうまく築けるかどうかなのだ。
「(仕事を依頼してくる)人は、仕事を入力したら数週間後にその成果物を出力してくれる機械のような役割を、わたしに望んでいるように感じる」(Jeremy氏)
アスピーズが切望するよりよい職場環境とは
アスピーズが職場で抱えている「社会的相互交渉が困難」という課題は、先進的な人事部門でさえ理解できないほど微妙なことなのかもしれない。しかし、だからといって、アスピーズの支援に消極的であることを正当化する理由にはならない。専門家は、「アスピーズに配慮した環境作りといっても、大がかりなものである必要はない。また、“アスピーズに特化した”と考える必要もない」とアドバイスする。
Grandin氏らは、オフィス環境に物理的な工夫をするのも1つの施策だと指摘する。多くのアスピーズは、照明の明滅、エアコンやコピー機の動作音、電話の呼び出し音を不快に感じている。オフィス内でのちょっとしたしゃべり声すら苦手だという場合も多い。そういった音のしない空間を確保したり、防音設備を整えたり、あるいはホワイト・ノイズを流したりすれば、オフィス環境は改善できる。
また公式には発表されていないが、Microsoftはアスピーズ支援のために「バディ制度」導入しているという。これは定型発達者(非自閉症者)とアスピーズとがペアを組み、会議などの社会的相互交渉の必要性を教える制度だ。多くのアスピーズはこの制度を「実際に行われているのであれば、評価できる」としている。
アスピーズの希望はシンプルだ。それは「自分たちに適した役割(仕事)を、企業環境の中で見いだす機会を与えてほしい」というものである。企業は社員の聴覚能力、性的指向、人種、宗教を考慮し、適切な役割(仕事)を見いだすように支援している。その支援対象にアスピーズも入れてほしいというだけのことなのだ。
前出の精神分析医Becker氏によると、先進的なハイテク企業は、(徐々にではあるが)アスピーズを支援する取り組みを実施し始めているという。Becker氏は「アスピーズ支援の取り組みは始まったばかりで、全体的にはまだ十分ではない」と指摘したうえで、以下のように語る。
「少なくとも現時点では企業にも(アスピーズ支援の体制が整っていないことに対する)釈明の余地はある。ほとんどの企業は、アスペルガー症候群を抱えた人物と接した経験がない。アスペルガー症候群という定義が生まれたのは比較的最近のことであり、成人アスピーズという存在については、ほとんど知られていなかった。多くのIT企業は、アスピーズを貴重な戦力として支援したいと考えているが、そのやり方がわからないだけなのではないだろうか」
こうした状況も、将来的には変化していくはずだ。
「今後5年から10年のうちに、より多くの企業がアルペルガー症候群やHFAを、普通の特徴としてとらえるようになるだろう」(Becker氏)














