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IBMウォッチ

[米国]
目指すは“脳型コンピュータ”――IBMが脳機能のIT応用を研究

脳の知覚や相互作用力を模倣したデータ処理を可能に

(2008年11月21日)

 米国IBMは11月20日、コンピュータに脳と同じ処理能力を持たせるための研究を行っていることを明らかにした。この研究のねらいの1つは、大量の情報のリアルタイム処理を実現することにある。

 IBMの研究員ダーメンドラ・モダ(Dharmendra Modha)氏は、脳に備わっている知覚のような感覚や相互作用力をコンピュータにも持たせたいと考えている。「そうなれば、コンピュータは、より少ない電力でデータを高速に処理・理解できるはずだ」(同氏)

“脳型コンピュータ”の研究を行っている米国IBM ResearchのWebサイト

 同氏によると、現在はそうした新しいコンピューティング・プラットフォームの構築に向けて、神経科学、ナノ・テクノロジー、スーパーコンピューティングといった分野の研究の融合に取り組んでいるという。

 この研究では、あたかも知性があるかのように変化に適応できるマシンの開発を目標としている。そうしたマシンが実現すれば、企業はさまざまなデータからより多くの価値を引き出せる可能性が高まるのだ。データを有効に活用すれば、企業にしても個人にしても、重要な意思決定を迅速に適切なタイミングで行えるようになる。

 「今のコンピューティングの基本的な考え方には問題があり、新しいアプローチが必要だ」と、モダ氏は訴える。現在のモデルでは、まず問題解決のために目的を定義し、次にそうした目的を達成するためのアルゴリズムが設計される。

 「脳はそれとは正反対だ。まずアルゴリズムがあり、次に問題が発見される。われわれが目指しているのは、こうしたアプローチで多種多様な問題に対処できるコンピューティング・プラットフォームだ」(モダ氏)

 このような“脳型コンピュータ”が力を発揮する1つの具体的な例として、モダ氏は地球上の水供給の効率的な監視を挙げる。「世界中に設置されたセンサー・ネットワークから温度や水圧、波の高さ、海流などといった膨大なデータを集めて、それを新アプローチのコンピューティング・プラットフォームによってリアルタイムに解析させるのだ。そうすれば、現在のアルゴリズムではとても不可能な、グローバルな水の循環にかかわる不変のパターンや関連性などの発見も可能になるだろう」

 また、脳型コンピュータは、世界の株式や債券、不動産などの市場の動向を追跡し、人間の脳がそこから有用な情報を引き出すのと同様に、意味のあるパターンや関連性を導き出せる可能性もある。

 IBMが進めているこの研究は、まだ具体的な応用段階には入っていない。現在は、脳が何を行うか、そしてそうした脳の機能をコンピューティングに導入する方法を模索する試みを行っているところだ。

 そして、この研究の一環として行われているナノ・テクノロジーの研究により、低消費電力の微細な認知型コンピューティング・チップに脳の機能を実現できることが明らかになっているという。さらに、神経科学の研究も十分に成熟してきているほか、スーパーコンピューティング技術も、幅広い仮説を検証する大規模シミュレーションに着手できるほど進歩しているとのことだ。

 モダ氏は、新しいプラットフォームの実現時期については明らかにしなかったものの、それによって変化する“未来図”は描いているようだ。「この長期的研究は、非常に困難なものではあるが、将来多くの技術的ブレイク・スルーにつながると信じている。当社がこのプラットフォームの構築に成功すれば、従来のコンピューティングの枠組みに取って代わる可能性のある、まったく新しいコンピューティング・アーキテクチャとプログラミング・パラダイムが生まれるだろう」

 ちなみにIBMのこの研究は、米国国防総省国防高等研究事業局(DARPA)、スタンフォード大学、ウィスコンシン大学、コーネル大学、コロンビア大学医療センター、カリフォルニア大学との共同で進められている。

(Agam Shah/IDG News Serviceサンフランシスコ支局)




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