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【インタビュー】
IBMソフト部門首脳が事業ビジョンを語る

「オープンソースの“周辺で”もうける」

(2007年06月12日)

IBMのソフトウェア部門シニア・バイスプレジデント兼グループ・エグゼクティブ、スティーブ・ミルズ氏が、このほどComputerworld米国版のインタビューに応じ、オープンソース・ソフトウェアのメリット、ビジネス向けWeb 2.0ツールの開発動向、最新のプログラミング事情などについて語った。

ゲーリー・アンテス
Computerworld 米国版

――1990年代に、IBMは事業の重点をサービス分野に移したが、最近は再びソフトウェア分野に注力しつつあるように見える。この方針転換はいかなる戦略に基づくものか。

 いや、当社は過去20年間にわたって、一貫してソフトウェアへの投資を増やし続けてきた。つまり、最近になって突然「ソフトウェア事業」に目を向けたわけではないのだ。とはいえ、ここにきて、IBMのソフトウェア事業がメディアや米国金融業界のアナリストたちの熱い視線を集めるようになってきたのは事実だ。

――IBMは「インフォメーション・オン・デマンド」というビジョンを掲げているが、これは具体的にどういったことを指しているのか。

 企業においては、大量のデータが、多様なフォーマットで、さまざまな場所に点在している。そして、企業顧客はこれらのデータを使って、意思決定を行う人々のそばに「適切なデータ」を移管しようと努力し続けてきた。

 というのも、意思決定は、ビジネスと市場の変化に即応して、可能な限りリアルタイムで行う必要があるからだ。そこにおいては、データがどこにあり、その場所までどうやって到達するかがカギになる。

 そこでIBMは、テキスト、画像、ビデオ、オーディオなどあらゆるタイプのデータに対応する技術を開発し、それらのデータを分析可能なフォームに変換して多くの異なるデータ・ソースと連結することにしたのだ。

――それを競合他社の戦略と比較すると?

 オラクルは、データを従来型データベースに固定するソリューションを提唱している。「オラクルのデータべースを買い足しさえすれば心配ない」というのが、彼らの売り文句だ。だが、すべてのデータを1カ所に集めるという手法は実用的ではないし、実際にそうしている企業は1社もない。

 一方、マイクロソフトは「SQL Server」を使ってローカル・データマートを構築するという戦略を打ち出しており、ファイル情報はサポートしていない。しかしながら、現実には、リレーショナル・データベースよりもファイル・システムのほうに多くのデータが眠っているのだ。

――現在、非構造化データを求める企業は増えているのか。

 世界中に存在するデジタル情報のうち、8割が構造化されていない。つまり、その分野で大量のデータが増え続けているということだ。

――IBMは、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)を脅威だと見ているのか。

 いや、脅威であるとは見ていない。むしろSaaSによって当社の顧客がだれであるかを明白にすることができると思っている。30年以上も前からSaaS事業を運営している米国ADPを例にとっても、SaaSは長年われわれとともにあり、これからはさらに普及していくものと見られる。

 では、IBMの潜在顧客は独自に会計業務を処理している企業なのか、それとも企業の会計業務を代行するADPのような企業なのかと言えば、答えは「どちらも」だ。

 ベンチャー・キャピタル・コミュニティは、この市場の本来の支配者である従来型のビジネス・プロセスを有する企業の存在を忘れているようだが、この市場は、決してセールスフォース・ドットコムだけのものではない。同社の影響力は、市場全体からすれば微々たるものでしかないのだ。

――では、オープンソース・ソフトウェアはIBMにとって脅威か。

 いや、逆に、これまで当社はオープンソースに支えられてきたと言える。その理由の1つは、オープンソースによって標準の確立が早まるからだ。また、オープンソースは相互運用性とポータビリティにも非常に優れている。

 そういう認識を基にすれば、「オープンソースでもうける」という考え方は誤っている。そうでなく、正しくは、「オープンソースの周辺でもうける」でなければならない。例えば、非常に人気が高い「Apache HTTP Server」を「WebSphere」に取り込むと、WebSphereの導入率が跳ね上がるといったような関係が理想的だ。

 オープンソースは業界全体にとって有益であり、必要不可欠だ。例えば、「Apache Geronimo」を基盤とした「WebSphere Community Edition」は、1週間に2万件以上ダウンロードされるが、そのユーザーの大半は当社とメンテナンス契約を結ばず、単に(コードの)コピーを入手して、好きに使っている。われわれとしては、彼らがどう使っているかを知る必要はない。この事実上のフリー・コードを使って、彼らが比較的簡単な作業をこなすことができているのであれば、それでいいと考えている。

――IBMの強みの1つであるリサーチ部門からは、今後どういった新技術や新製品が登場することになるのか。

 昨年リリースした「DB2 Version 9」やそのネイティブXML対応機能を見てもらえば、おおよその方向性がお分かりいただけるだろう。また、DB2は高度なアルゴリズム最適化機能を採用したデータ圧縮技術を有しているが、これは他社の製品には見られない卓越した技術だと自負している。

 ソーシャル・ネットワーキングに関して言えば、Web 2.0の分野で積極的に活動している。例えば、今年初めには、ビジネス向けソーシャル・ネットワーキング・ツールを提供する「Lotus Connections」を発表した。このほかRFID、イベント・ベースのプロセッシング、リアルタイム・システムなどにも注力しており、これらを通じてフリート・マネジメント(輸送車両や交通車両の追跡・管理)、出荷、商品移動の最適化などに取り組んでいる。

――米国プリンストン大学でコンピュータ・サイエンス教授を務めるベルナール・シャゼル氏は、Computerworld米国版のインタビューに答えて、「コンピュータ・サイエンスにおける最大の期待はずれは、ソフトウェア・エンジニアリングの発達が遅れに遅れていることだ。コード開発に関する苦労などは、いまだに緩和されていない」とこぼしていたが、これについて何か反論があれば。

 個々の小さなコンポーネントをつなぎ合わせることで手早い開発を可能にする、いわゆる「シチュエーショナル・アプリケーション」と呼ばれる軽量ソフトウェアは、この世に数え切れないほど存在している。当社はこれを「Notes」プラットフォームなどを通じてサポートしているし、Web自身もこのモデルをサポートしていると言うことができる。

 また、人々は、Web 2.0、マッシュアップ、Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)、Ruby、PHP(PHP:Hypertext Preprocessor)といったスクリプト・アプローチを使ってアプリケーションを組み立てている。今日のアプリケーション開発はここまで簡単になり、われわれはそれを当たり前のものとして享受している。

 おそらく、プリンストン大学では、Webページ・デザイナーを「プログラマー」であるとは見なしていないのだろう。しかしながら、Webページ・デザイナーが今やっていることは、かつてプログラマーがやっていた仕事なのだ。

――では、IBMはこれまでプログラマーをどのように支援してきたのか。

 プロフェッショナル・プログラマーがこれまで手作業で行ってきたコードの生成や設計を支援するツールを、「Rational」ポートフォリオによって提供している。コーディングの問題解決に当社の技術が貢献してきたという事実については、何千もの顧客が証言してくれるはずだ。

 このビジネスに33年間携わっている私自身、IBMに入社した当時はアセンブラ・プログラムを書いていた。その私から見ても、今日のコード生成ツールは高度に洗練されており、極度に自動化が進んだものとなっている。




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