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【解説】
「PaaS――サービスとしてのプラットフォーム」の可能性

“20年来のネットワーク・コンピューティング構想”の実用度を探る

(2008年04月18日)

パラダイム・シフトがもたらすもの

 前述したトレンドを図示して、ネットワーク・コンピューティング・モデルの位置づけの変化を大局的に概観してみよう(図2)。

図2:コンピューティング・モデルの位置づけとSaaSの方向性

 この図では、縦軸がどこまでをアウトソースするかを表し、横軸がアプリケーションのカスタマイズの度合いを表している。左下の位置に属するのが、最も伝統的な、自社独自のアプリケーションを自社のインフラで稼働するというモデルだ。このモデルが消滅することは将来もないと思われる。ただし、その一方で、このモデルに固執し、すべての業務アプリケーションをこれで稼働しようとする企業の競争力は低下することになるだろう。

 一方、従来型のSaaSは、共通性が高いアプリケーションをインフラも含めて社外で運用するというモデルであり、図の右上に位置する(さらに、その右側には、どのユーザーに対してもほぼ同等のアプリケーション機能を提供するインターネット・サービスが存在する。Google Appsなどはこの領域に属するだろう)。

 そして、今まで述べてきたように、従来型のSaaSは2つの方向性をもって、これまで空白となっていた領域に拡大しつつある。すなわち、アプリケーションの独自性の向上という方向性と、アプリケーションの制御をユーザーがある程度まで行うカスタマイズ性の向上という方向性の2つだ。

 このようなパラダイム・シフトの結果として、業務アプリケーションに関するユーザーの選択肢は大きく拡大するだろう。そして、経営戦略と業務要件に最も合致したアプリケーションの展開モデルを選択できるようになる。

 例えば、きわめてサービス・レベル要件が高いアプリケーションは従来型のモデルにより社内で運用し、俊敏性と差別化が必要とされる戦略的アプリケーションはPaaS型で独自アプリケーションを迅速に開発し、他社と同等でよいアプリケーションはSaaSを活用する、といった考え方だ。いわゆるポートフォリオ管理である。アプリケーション群のポートフォリオ管理を適切に行えるかどうかが、ITのビジネス価値に大きく影響する時代がすでに来ているのである。

プロバイダーに求められるバランス感覚

 最後に、このパラダイム・シフトに伴って必要となる、ITベンダー/サービス・プロバイダー側のビジネス上の考慮点について考えてみよう。

 Salesforce.comは、Force.comをプラットフォームとして位置づけている。つまり、Force.comをユーザー企業が使うだけではなく、Force.com上でアプリケーション・サービスを構築したベンダー/プロバイダーがビジネスとして新たなSaaSサービスを行ってもよいということだ。PaaSを小売りだけではなく、卸売りとしても提供していると考えればよいだろうか。

 自社が専有するクローズドなシステムではなく、他社がその上でビジネスを行い、成功するためのプラットフォームを提供し、共存共栄のエコシステムを構築する。このことは、プラットフォーム・ビジネスを成功させるうえで重要な要件である。

 ここで必要なのは、絶妙なバランス感覚だ。過剰にクローズドな戦略をとれば、エコシステムを構築することはできないし、オープンになりすぎれば適切な収穫を得ることができなくなる。Salesforce.comが成功したポイントの1つがここにあるだろう。また、同様のビジネス・モデルを推進する企業にとっても、このバランス感覚は非常に重要なものとなるはずだ。


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