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【解説】
IT運用管理の現状分析と改善のアプローチ

人・プロセス・技術の観点から検討を重ね、サイクルを回す

(2008年09月26日)

昨今、情報システムの大規模化・複雑化が進み、その運用管理に要するコストも確実に増大傾向にある。だが、今や経営活動の基盤として高い重要性を持つ情報システムに対しては、コスト削減ばかりを優先することはできず、継続的な改善による運用管理体制/基盤の整備が求められている。本稿では、IT運用管理の現状分析として、動向をユーザー側、市場/ベンダー側の両面から確認したのち、今日必要とされる体制/基盤を整備するうえでの具体的なアプローチを説明していく。

金谷敏尊
アイ・ティ・アール シニア・アナリスト

 企業のIT投資において、情報システムの運用管理にかかるコストが年々重みを増している。このため、CIOやITマネジャーは、コスト削減を主軸とした中期的なIT投資計画を策定し、運用管理基盤の改善を優先度の低い課題として扱う傾向が強くなってきている。

 しかしながら、情報システムが経営資源としての存在意義を大幅に増し、大半の企業における事業活動の屋台骨となっている今日、IT運用管理への要求がさらに高まっているのも事実だ。製造業の成長過程で生産現場にQCD(Quality, Cost, Delivery:品質・価格・納期)の概念やISO規格が持ち込まれたのと同様に、成熟したITには体系化された運用管理の仕組みが求められるのである。

 運用管理コストの削減は確かに重要だが、その前提として、安定稼働を続けられる情報システムについての議論がなされなくてはならないはずである。実のところ、どの企業においても情報システムには何らかの“欠陥”があり、多くの事業活動は、深夜作業をいとわず障害対応にあたるスタッフの下支えの上に成り立っていると言っても過言ではない。

 本稿では、今日の企業に求められるIT運用管理基盤を整備するための改善手法について説明する。現状をユーザーと市場/ベンダーの両面から分析したうえで、推奨されるアプローチを示していきたい。

IT運用管理の動向分析[プロセス編]

 まずは、国内のユーザー企業の特徴的な傾向を取り上げて、IT運用管理上の課題を掘り下げてみる。以下、IT運用管理のプロセスや人材のあり方についての着眼点を挙げていく。

システム障害の根本的な課題

 ここ最近、国内企業におけるシステム障害の例をよく耳目にする。社会的影響度の高いものは公表され、広く知れわたることになるが、水面化でも、システム障害による業務活動の停止や遅延に陥る企業があとを絶たない。開発コードのバグ、ハードウェアの欠陥、人為ミスによるエラー、自然災害など、原因はさまざまである。読者の中にも、比較的規模の大きなシステム障害に見舞われ、原因調査や再発防止策の提出を迫られた経験を持つ方は少なくないことだろう。

 では、根本的な原因はどこにあるのだろうか。システム・アーキテクチャの複雑性や“枯れた技術”か否かといった技術的な要因もあるが、ここではプロセスの観点から考察してみる。

 システム障害に見舞われる企業には、ある共通する事象が見受けられることがある。それは、開発工程を経て運用に至る段階で、運用リスクが潜んだままシステムを本番稼働させてしまっているケースだ。

 大半の企業では、事業展開の即戦力となるシステムを望んでおり、納期も短期化の傾向にある。経営層や事業部門(ユーザー部門)からの要請で、開発部門が短期開発や納期厳守など悪条件下での開発を強いられるケースも多い。その際、運用設計や品質チェックにかける時間が優先的に短縮されてしまうために、不完全な状態でシステムを本番投入せざるをえない機会が増える。これでは、運用フェーズで対処療法を施したところで、暖簾に腕押しとなる。新規システムが投入されるたびに、運用の負荷が重くのしかかり、結果として、経営層やエンドユーザーからの信頼を損ねることにつながる。

 開発・保守・運用の各プロセスが適切に体系化され、明文化されたルールが浸透していれば、こうした問題は減少するが、ルール化が手薄で、各部門あるいはチームの独立意識が強い企業では、利害が一致しないことから部門間のギャップが生じやすい(図1)。


図1:ITライフサイクルにおける部門間のギャップ

 「IT組織内の部門間に溝はないか」「レビュー会などで会話が成り立たなくなっていないか」「責任の押し付けが発生しないか」――筆者の所属するアイ・ティ・アール(ITR)では、これらの問題を、情報システムの安定運用を実現するうえで早急に解決すべき重要課題であるととらえている。


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