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全社レベルでコンテンツを“統制”する「ECM」

今日のコンテンツ管理製品分野における最注目領域

(2006年12月14日)

一言でコンテンツ管理と言っても、この市場にはさまざまな製品分野が存在する。まず、コンテンツ管理という名称から、Webコンテンツの運用・管理の効率化を目的としたCMS(Content Management System)を思い浮かべる人も多いだろう。また、文書管理製品やドキュメント・ハンドリング・ソフトウェアなども、コンテンツ管理の1つの領域と見なせるものだ。こうしたさまざまな目的の製品が混在するコンテンツ管理市場において、近年、特に注目されているのが、全社レベルのコンテンツ管理を実現するECM(Enterprise Content Management)である。内部統制やコンプライアンスに対するユーザー企業の意識の高まりが後押しするなか、ECMは現在、大きな盛り上がりを見せている。本稿では、このECMを中心に、現在のコンテンツ管理製品市場を概観する。

上村陽子
アイ・ティ・アール シニア・アナリスト

ECMは2000年代の企業の重大関心事

 ECM(Enterprise Content Management)とは、その名のとおり全社レベルでコンテンツを管理するという概念である。従業員が日々の業務で扱うコンテンツ(ビジネス文書、Webコンテンツ、画像データ、音声ファイル、メールなど)は増加の一途をたどっており、これらを適切に管理し、活用していきたいと考える企業は多い。特に最近は、内部統制の強化やコンプライアンスの確立という観点から、ECMに対するニーズが高まってきている。

 この傾向は、アイ・ティ・アールが毎年秋に実施するIT投資動向の調査結果にも顕著に表れている。図1は、ユーザー企業が今後重視するIT動向について調査した結果だが、11の選択肢の中で「全社的なコンテンツ管理インフラの整備」「情報・ナレッジの共有・再利用環境の整備」の2つを重要視する企業の割合が特に多く、他の選択肢と比較しても重要度が高いと考える割合が非常に大きい。前年の調査でもほぼ同様の結果が出ており、今日の企業にとってコンテンツの管理と活用は重大関心事の1つであることがわかる。

図1:主要なIT投資動向の重要度の割合
*資料:CIO Magazine、アイ・ティ・アール、ドイツ証券「IT投資動向調査2006」

コンテンツ管理製品に対するニーズの変遷

 もっとも、コンテンツを管理・保存し、必要なときに取り出して活用するという仕組みは、最近になって出てきたものではない。ECMという用語が登場する以前からコンテンツ管理製品は提供されており、多くの企業で利用され続けている。

 ただし、時を経るごとに、コンテンツ管理製品に対する新たなニーズが生まれ、その時々のニーズにこたえるための製品が提供されてきた。こうした経緯があるため、一言でコンテンツ管理製品と言っても、異なる目的を持ったさまざまな製品が提供されているのが現在の状況だ。

■1990年代後半:先進企業での導入が始まる

 コンテンツ管理製品の導入事例は、すでに1990年代の後半には登場している。典型的な利用形態の1つが、製造業における製品設計段階のプロセス改善(図2)である。

図2:製造業における製品設計段階のプロセス改善事例

 製品設計の際には、研究所、開発部門、工場の間で設計ドキュメントが複数回にわたってやり取りされる。その際に、メールに添付するという方法では、さまざまな問題が生じてくる。例えば、「ドキュメントの改定が繰り返され、似通ったファイルが複数作成される」「誤ったバージョンのファイルで作業が行われ、設計の見直しを招く」といった問題である。

 図2では、企業内の複数の拠点あるいはいくつかの部門をまたがってコンテンツ・リポジトリを配置してコンテンツを一元化し、ワークフローやバージョン管理機能を備えた文書管理製品を導入して、それらのコンテンツを複数人で活用するという方法で、この問題を解決している。こうした事例は、特に海外で多く、製造業や製薬業の研究開発や、保険業の契約書・請求書管理などで広く利用されている。

 一方、国内でも1990年代終盤から、部門ごとに文書を管理するという導入事例が登場し始めた。現在、国内で多くの導入実績を誇るコンテンツ管理製品の中には、この時期に提供が開始されたものも多い。当時は、「コンテンツ」という表現は一般化していなかったが、特定業務の文書管理や、部門内での文書共有を目的に、先進的な企業でコンテンツ管理製品の導入が始まった時期と言える。

■2000年代初期:Webコンテンツを管理するCMS

 2000年代に入ってからは、インターネットの普及に伴い、Webサイトの構築・運用にかかわる煩雑さを解消する。それに伴い、作業負荷を軽減したいというニーズが顕在化し、Webサイトのコンテンツ作成プロセスを改善するためにコンテンツ管理製品を導入する事例が増加し始めた。また、社内の情報共有を目的に、それまで乱立していた社内イントラネット・サイトを一元的に管理する事例も見られるようになった。

 このような目的で利用されるコンテンツ管理製品は、コンテンツの中身を所有するビジネス・ユーザーの作業と実際のWebページ作成に携わるデザイナーの作業との分離、バージョン管理などによる作業ミスの回避、ワークフローを利用した承認プロセスの迅速化といった機能を提供するものである。

 このWebサイトやイントラ・サイトの構築・運用を目的にした製品は、CMS(Content Management System)と呼ばれており、コンテンツ管理と言えば、CMSを思い浮かべる人も少なくないだろう。CMSは、現在でもコンテンツ管理市場において、Webコンテンツ管理という1つの領域として成長を続けているが、それと同時に、後述するように、内部統制の強化/コンプライアンスの確立という近年のニーズを意識したCMSが登場しつつあるという流れも、現在のコンテンツ管理市場における大きな傾向である。

■2000年代中盤〜現在

 以上は、特定の業務におけるコンテンツの管理プロセスを改善することが目的だが、昨今は、全社レベルでのコンテンツ管理に対するニーズが高まってきている。このニーズを満たしうるコンテンツ管理製品がECMである。

 その背景には、現在の企業には内部統制の強化やコンプライアンスの確立が求められているということがある。企業には膨大な量のコンテンツが存在し、当然、その中には顧客の個人情報やその他の機密情報も含まれている。また、日本版SOX法(金融商品取引法)に対応するためには、業務プロセスなどの文書化が必須であり、そこでは、膨大なコンテンツを管理したうえで、新たなコンテンツも作成されることになる。

 さらに、こうしたニーズは、CMS分野に対しても大きな影響を及ぼしており、内部統制の強化やコンプライアンスの確立といった導入効果をもたらすとうたうCMS製品が増えてきている。CMSは、コンテンツに対するユーザーのアクセス・コントロールやコンテンツ作成フローの迅速化を実現する機能などを活用して、Webサイトやイントラ・サイトの構築・運用プロセスを改善する。このプロセス改善という特徴を見れば、もともとCMSは、内部統制の強化やコンプライアンスの確立にも有効であるという一面を持っていることがわかる。CMSのこの一面が、日本版SOX法の法制化をはじめとする昨今の情勢を受けてクローズアップされることになった。言い換えれば、CMSは、ECMに近づきつつあるということになろう。


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