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マルチコア・コンピューティング

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マルチコア・コンピューティング

【連載コラム】
プロセッサ今昔物語

第1回 誕生から半世紀──。今もなお、加速するプロセッサの進化

(2008年06月30日)

日本AMD 代表取締役社長
吉沢俊介
 

 思い起こせば、私がAMDに入社したのは1986年の1月であった。つまり、私は今年で勤続23年目を迎えたことになる。この間、営業とマーケティングにわたる様々な部署で色々な経験を積ませてもらったが、いまだに未知の局面を迎えることは多く、今もなお、新たな体験をさせてもらっている。

 朝、出社してメールをチェックすれば、毎日といっていいほど新しいことが社内外で起こっている。それに対応するには、一応、過去の経験が役に立つことはあるものの、それらは必ずしも参考になるものばかりではなく、未経験の事態に素早く対応する必要性を常に感じている。おそらくこれが、最先端の半導体産業で働く者の性(さが)であり、同時にこの仕事の醍醐味であろう。

 半導体(ここではIC〔Integrated Circuit:集積回路〕のことを指す)の歴史は、1958年に米Texas Instrumentsのジャック・キルビー氏が、「トランジスタ」「抵抗」「コンデンサ」などを1つの「ゲルマニウム単結晶」に作りこむ技術(後にキルビー特許といわれる)を発明したことから始まった。一方、AMDの設立は1969年、そして私のAMD入社は1986年。つまり、その歴史のおよそ下半期をAMDで過ごしてきたわけである。長いと言えば長いが、あっという間の感もある。

 今回、本コラムを執筆する機会を得て、私がこれまでのAMD勤務中に見聞きした事柄を披露することになったが、ここでは特にAMDとマイクロプロセッサ(主にAMDがフォーカスするx86系のプロセッサ)の開発競争の歴史について記していこうと思う。と言うのも、過去に生まれては消えていった幾多のプロセッサ・アーキテクチャの中でも、x86プロセッサは最も成功し、かつ、これからもIT業界をけん引していく“エンジン”として発展していく可能性を持ったアーキテクチャであると私は信じるからである。

 私がAMDに入社した1986年当時、主流であったx86プロセッサは「80286」(略称286)であった。当時、米Intelの開発により16ビットのマイクロプロセッサとして登場した286は、もう一つの16ビット・アーキテクチャの雄である米Motorolaの「68000」と死闘を演じていた。しかも、孤軍奮闘のMotorolaに対し、AMDとIntelが団結して対抗していたのである(今では考えられないことであるが!!)。そしてIBMが発表した後、爆発的な成長を見せたPC(Personal Computer)の頭脳として本格的に採用されたことで、286はWindows PC用のプロセッサとして揺ぎない地位を確立したのである。

 その後、32ビット・プロセッサである「80386」(AMDではAm386)が1991年に登場。それから現在までの17年間で、AMDプロセッサは「K6」「K7」「K8」というコアの変遷を経て、最新のクアッドコア「AMD OpteronTMプロセッサ」(コードネーム:Barcelona)に至っている。

 この間、プロセッサに集積されるトランジスタ数は1,600倍に、クロック周波数も75倍に増大している。だが、トランジスタ1個あたりの価格を見ると、0.1セントから0.01セントに下がっている(筆者の独自試算による)。驚異的な半導体技術の進化による、コンピュータ環境の発展であると言えよう。

 これから何回の連載になるか分からないが、私のAMDにおける22年の経験に基づき、プロセッサ開発競争にまつわるトピックを御紹介していこうと思う。多少ともの御興味を持って御笑読いただければ幸いである。

<筆者プロフィール>

吉沢俊介(よしざわしゅんすけ)

日本AMD 代表取締役社長
1956年3月13日生まれ。1986年AMD入社。同社マーケティング部長、代表取締役副社長等を経て現職に至る。
趣味はウォーキングと世界のビールを飲むこと。
座右の銘は「Never give up !!」



プロセッサ今昔物語
第1回 誕生から半世紀──。今もなお、加速するプロセッサの進化
第2回 長きに渡る競争の幕開けと、Am386 プロセッサの誕生

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