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【解説】
「ダビング10」騒動で、日本のコンテンツ市場を憂う

利用者を軽視したガチガチの著作権保護がコンテンツ産業を衰退させる

(2008年07月25日)

録画されるとパッケージは売れない?

 もう1点は、深夜に集中的に放映されているアニメ・コンテンツの問題だ。日本映像ソフト協会は、「放送からの録画によるパッケージ・ビジネスに与える影響は大きい。仮に直接的な売上げ減がなくても、私的録画補償金が必要」であると主張している。つまり制作者側(著作権所有者)が放送枠を買い取って放送しているアニメ・コンテンツが録画されると、パッケージの売上げに影響する。だから私的録画補償金でその差分を埋めてくれと言っているのだ。

 この主張にも「だったら、どうして放送するの?」という疑問がわくだろう。さらに、「そもそも深夜に放映されるアニメ・コンテンツは、録画によるタイムシフト視聴を前提にしているものじゃないの?」という疑問も加わってくる。

 本来、放送枠を買い取って放送したり、放送をパッケージ販売のための宣伝として利用したりということは、コンテンツを販売する側のビジネス・モデルの問題であり、コンテンツ保護の問題ではない。このビジネス・モデルに公的な保護を正当化するだけの公共性/公益性があるとは思えないのである。

 映画のタイムシフト視聴にせよ、深夜枠のアニメ・コンテンツにせよ、著作権団体が要求しているのは、録画の禁止ではない。録画を全面的に禁止すれば視聴者は限定され、コンテンツの宣伝効果は大幅に低下する。また録音・録画がされなくなれば、録音・録画補償金も課金できなくなる。著作権団体が理想としているのは、録画の自由度を極力制限しつつ、そこから最大の補償金を得るというモデルなのだ。

ユーザーが望むのは“自由な私的2次利用”

 ダビング10の開始にあたり、一部の著作権団体は「コピー・ワンスではなくダビング10を許可したのは、著作権団体側が消費者の利益を優先させたあかしだ」と喧伝している(ように見える)。しかし、これはお門違いだろう。私的複製は著作権法で認められた行為であり、これを手柄のように主張されても困る。

 当然のことだが、10回のダビングが認められるからといって、ダビングした10枚のメディアを他人に譲渡したり、販売したりできるわけではない。コピー作業中のアクシデントなどを考えれば、消費者にとって1回しかコピーできない規制はとんでもなく不便である。しかし、同じコンテンツを10回コピーできるからといって、必要もないのにコピーをする人は(ほとんど)いない。消費者が望んでいるのは、同じものを何回もコピーすることではなく、私的利用の範囲内で2次利用できることだ。そして、それが自由にできないという点で、ダビング10は理想的な解決法からほど遠い。

 この問題の本質は、以下の3点に集約されると筆者は考えている。

1. 私的録音・録画の範疇を越えた著作権法違反の行為について、これを実効的に取り締まることは困難である
2. 摘発が困難な違法行為による損害を補填する目的で、私的録音・録画補償金というあいまいな代替策を制定した
3. そのあいまいな制度を、自分たちの都合のよいように最大限利用したいという思惑を持つ人たち(著作権者)がいる

 もっとも著作権者の中には、DRMで利用状況をトラックすることは、利用者のプライバシー侵害につながるとの意見もあるようだ。しかし、これもくふう次第で解決できる問題だろう。JR東日本が発行している「Suica」のように、無記名でも利用できる支払い方法と端末認証を組み合わせるなどすれば、いくらでも方法はあるはずだ。


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