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どうする? 企業クライアントPCの“Vista移行”

先行者に聞くアップグレードの苦難に立ち向かうための心得

(2007年06月19日)

多くの企業が、Windows Vistaへのアップグレードにあたって、慎重な態度をとっている。Vistaのアーキテクチャは従来のWindowsから大きく変更されたため、すでに業務で使用しているソフトウェアやハードウェアの種類によっては、うまく稼働しないなどのトラブルが発生する場合があるからだ。したがって、Vistaへのアップグレード作業を実施する際には、それにかかるコストと得られるメリットとを比較したうえで、綿密な計画の下に進めていく必要がある。本稿では、Vista移行に挑んだ米国企業のITマネジャーの経験を通して、アップグレードを実施する際に押さえておくべきポイントを明らかにしたい。

オリバー・リスト

Vista移行に立ちはだかる“壁”

 Windows Vistaの美しい景観の壁紙は、新しいOSに慣れないエンドユーザーを落ち着かせる効果はあるかもしれないが、Vistaの社内展開に取り組むITマネジャーには気休めにしかならないだろう。説得力のあるROI(投資利益率)を示して経営陣を納得させ、気難しいユーザーの抵抗を鎮めつつ、システム全体が破綻しないよう万全を期すなど、Windowsのアップグレード作業には常に困難が伴う。そのため、ITマネジャーはVistaへの移行に慎重にならざるをえない。

 事実、多くの企業がVistaへの移行に慎重な姿勢を示している。「中堅および大企業のほとんどが、Vistaを実際に採用するのは1、2年先になると言っている」と、IDCのアナリスト、スティーブン・ミントン氏は語る。また、マーケティング調査会社エクウス・グループが実施した調査結果によると、企業の53%が2008年に、16%が2009年にVista移行を予定しており、26%が今年中の移行を計画しているという。

 マイクロソフトはVistaの導入プロセスをできるかぎり(おそらく従来のWindowsのどのバージョンよりも)簡単にしたにもかかわらず、企業の態度は消極的だ。もっとも、Vista移行は、アーキテクチャ面で、Windows 98からWindows 2000に移行するのと同程度の飛躍があるため、その過程にはさまざまな障害が待ち受けている可能性が高い。そうした障害の筆頭は、皮肉にもユーザー自身である場合が多い。すでにVista移行を進めているITマネジャーの多くが、ユーザーがVista移行をさほど望んでいないことに気づいている。彼らが本当に求めているのは「Exchange Server 2007」と「2007 Microsoft Office system」へのアップグレードだ。したがって、ExchangeとOfficeのいずれか、もしくは両方をVistaと同時にアップグレードすることが、Vista移行の“壁”を乗り越える1つの手段となる。

「すべてか、無か」
迫られる選択

写真1:「VistaとOfficeの同時アップグレードには、綿密な計画が必要」と強調する、フランクリンカビーのIT担当バイスプレジデント、マイク・コネリー氏

 社員研修/生産性ツール・プロバイダーであるフランクリンカビーのIT担当バイスプレジデント、マイク・コネリー氏(写真1)は、ExchangeとOffice、Windowsのアップグレード時期の一致を「マイクロソフトのハット・トリック」と表現している。フランクリンカビーでは、Exchange Server 2007の導入はすでに完了しており、現在、VistaとOffice 2007を単体パッケージとして社内に展開している最中だ。コネリー氏は、「当社のユーザーにとって、VistaとOffice 2007、Exchange 2007の組み合わせはとても魅力的だ。Vistaの利用にさほど習熟は必要ないし、Office 2007は機能的に大幅に強化されている。当社では最初からすべての機能を提供するつもりだ」と語る。

 一方、「Office 2007は、Vista移行を促す決定的要因となりうる」と語るのは、アヴァナードのインフラ/セキュリティ担当バイスプレジデント、ラリー・ルシュウール氏だ。アクセンチュアの子会社である同社は、マイクロソフト関連の大規模なコンサルティング・プロジェクトを専門とするコンサルティング会社で、現在、全世界で33のVista導入プロジェクトを展開している。

 ルシュウール氏は、「カスタム・アプリケーションの開発を支援できるVistaとOffice 2007の機能は、当社の顧客にとってきわめて魅力的であり、無視することはできない」と語る。同氏によると、アヴァナードでは、石油ガスおよびヘルスケア分野の業務研究用カスタム・アプリケーションの開発支援にOffice 2007とOffice SharePoint Server 2007、Exchange 2007を利用しているという。

 Vistaを直ちに導入した企業のほとんどが、Officeに大きく依存している。だが、そうした企業は、人気の高いOfficeとExchangeの新版がVistaとほぼ同時期に投入されたという事実を無視してはならない。

 「ビジネスパーソンにとっては、アプリケーションこそが重要であり、OSはかつてないほどささいな物になりつつある」と語るのは、ヒューレット・パッカード(HP)サービス事業部の研究フェローで、マイクロソフトに詳しいスタン・フォスター氏である。同氏は、「Vista、Office 2007、Exchange 2007は、それぞれに利点はあるものの、結局は組み合わせて使うほうがよい」と指摘する。

 VistaとOffice 2007、Exchange 2007をすべて導入するのがよいのか、それとも1つも導入しないのがよいのかという単純な問題ではないにせよ、個別に導入するよりも、一括して導入するほうが容易であるのはまちがいない。

 Office 2007もExchange 2007も、ユーザー向けの多数の新機能を装備しており、それらはAeroインタフェースの半透明処理や3D効果を使った美しい外見よりもはるかに経営陣の意思決定に影響を及ぼす可能性が高い。したがって、これら新機能の最適な組み合わせを発見することは、ROI(投資利益率)を最大化し、経営陣を納得させる“近道”になるはずだ。ただし、この道をたどるには、VistaとOffice 2007、Exchange 2007の各機能の中から自社にとって最も効果的な組み合わせを割り出し、導入計画を策定する必要がある。

 マイクロソフトの元CIO(最高情報責任者)で、現在は同社マネージド・ソリューションズ担当バイスプレジデントを務めるロン・マーケジック氏は、「われわれにとってVista導入は、必然的にOffice 2007の同時導入を意味した」と語る。同社では、「eat-your-own-dog-food(社内で自社製品を使う)」の方針の下、現時点ですでに6万4,000台のVista搭載デスクトップPCを導入しており、それ以前に10万7,000のExchange 2007メールボックスを社内で運用している。マーケジック氏によると、Vistaに含まれる新しいイメージング機能が、VistaとOfficeの同時アップグレードを決断させるカギになるという。

 マイクロソフトでVista導入の旗振り役を務めたチャッド・ルイス氏も、「新しいVistaのイメージング機能は、従来のイメージング・パッケージに比べて非常に使いやすい」と指摘する。マイクロソフトでは、VistaやOfficeを一度だけ導入するのではなく、定期的に両製品の複数のビルドを導入しなければならない場合が多いが、ルイス氏によると、「WIM(Windows Imaging Format)ファイル・ライブラリを容易にカスタマイズできる新しいイメージング機能のおかげで、導入プロセス全体がかなり簡単になった」(同氏)という。

 マイクロソフトでは、Windows XP/Office 2003からVista/Office 2007に移行するにあたって、一部の従業員には、自分のペースでアップグレード作業が行えるアップグレード・プロセスを適用している。ただし、移行が完了した後は、PCライセンス管理ソフトウェア「Microsoft Systems Management Server(SMS)2003」を使って、最新のビルドを使っているかどうかを監視しているという。ルイス氏は、新しいイメージング機能について、「新旧両方のプラットフォームで同じWIMライブラリが使えてとても便利」と評価している。

ソフトウェアの互換性がVista移行のカギに

 Vistaの根本的に再設計された内部機構は、基幹系の業務アプリケーションに少なからず影響を及ぼす。アヴァナードのルシュウール氏は、「社内のデスクトップPCの約半数をVistaにアップグレードしたばかりだが、重要な業務アプリケーションの1つがまだ完全にVistaに対応していないため、会計部門での導入は今のところ見合わせている」と語る。

 社内でVistaを展開するにあたって、社内のネットワーク上でどのようなアプリケーションが稼働しているのかを把握することは重要だ。幸い、この手の作業のほとんどは既存のデスクトップ管理ツールなどを使って行うことができる。

 デスクトップ管理/資産管理プラットフォーム「Track-It」の開発元であるヌマラでシニア・プロダクト・マネジャーを務めるトニー・トーマス氏は、「Vistaは当社にとって、業務遂行の大きな推進力になっている」と語る。同氏によると、ヌマラでは顧客向けのWebポータルにおいて、Vista導入時の留意点や、製品のVista対応状況などの情報を提供しているほか、顧客からの質問も受け付けている。「顧客のVista導入をできるかぎり支援したい。当社のデスクトップ管理ルーツはそれをサポートできるユニークな立場にある」(トーマス氏)

 Track-Itには、最近、Vistaの導入準備プロセスを支援するリポート機能が新たに追加された。これにより、社内のどのマシンがVistaを稼働できる能力を備えているかを判断し、総合的なソフトウェア・ポートフォリオ状況について確認することが可能になるという。トーマス氏によると、同社は今後、Vistaの導入プランニング策定と展開を容易化し、ROIの計算をサポートする新ツールの開発を計画しているという。

 いずれにせよ、Vistaを導入するにあたって、Track-Itなどのデスクトップ管理ツールを活用することは正しい選択だと言える。ただし、それらツールがVista導入の課題をすべてを解決してくれると期待してはならない。ソフトウェア・ポートフォリオの作成には、依然としてスタッフの手による地道な調査が必要なのだ。そうした作業には当然コストがかかるが、ポイントは、そのコストをいかに低く抑えるかにある。

 ソフトウェアの互換性という面では、とりわけアンチウイルス製品関連の懸念が多く聞かれる。Vistaではカーネルが再設計されたことで、XPで使用していた既存のウイルス対策ソフトウェアをそのまま利用することができない。このため、数百から数千のウイルス対策製品のライセンスを抱えている企業の多くが、それらのアップグレードにかかる費用について懸念を示しているのである。しかし、ウイルス対策製品ベンダー各社は、そうした懸念に対して賢明な対応をとっているようだ。

 フランクリンカビーのコネリー氏は、「Vistaへ移行するにあたって、シマンテックからライセンスの追加購入を迫られることはなかった。われわれが契約していたコーポレート・ライセンスでは、Vista対応は機能のアップグレードとみなされていたため、追加費用を支払う必要はなかったのだ。同社からはVista対応のための新しいコードが提供され、われわれはそれをWIMファイルに格納した」

 コネリー氏は、今回のシマンテックの対応に感謝しているものの、現状に満足しているわけではない。同氏によると、Vista移行を機に、他のセキュリティ・プラットフォーム、特にマイクロソフトの統合セキュリティ・サービス「Windows Live OneCare」の評価も行っているという。

Vista移行に向けた5つのステップ

  • ハードウェア調査を実施し、Vistaが動作するスペックを満たしているかどうかを把握する。Pentium 4以降のCPU、1GBのRAM、高性能のビデオ・カードを搭載していることが目安となる。
  • アプリケーション調査を実施する。アプリケーション・ポートフォリオを確認するとともに、Vistaで稼働するかどうかについても徹底的にテストする。
  • Vistaライセンスを管理する。Vistaの購入方法は複数存在するため、自社のライセンス・スキームを確認するとともに、それらが最新のものかどうかを確かめる。
  • WIMを作成する。具体的には、マイクロソフトが提供するVista用の展開ツールであるWindows PEとBDD 2007を用いて展開イメージを作成する。Vistaの場合、WIMをリビルドせずに変更できるため、XPの時のアップグレードよりもそのプロセスは簡単になっている。
  • ユーザーの意見を聞き、Office 2007へのアップグレードをVistaの展開に含めるかどうかを決定する。

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