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【解説】
オラクルとSAPの戦略に見る「業務アプリケーションのベクトル」

両社の差異と共通点から業務アプリケーションの今を知る

(2008年04月30日)

SAPの戦略を支える
3領域とNatively Integrated

 現在、SAPはこれから伸ばしていく領域として、「エンタープライズSOA」「ビジネス・ユーザー」「中堅市場」の3つに精力的に取り組んでいる。

 3領域のうち、1番目のエンタープライズSOAは、SAPのSOAプラットフォームである「NetWeaver」を展開していくこと、エコシステムを構築していくことの2つを重要な柱としている。

 2番目のビジネス・ユーザーとは、企業の中で実際にビジネスを動かしている人たちのことを指している。

 従来のR/3などでは、バックエンドで経理伝票を入力する人や販売伝票の入力を行う担当者など、限られた一部の人だけが「SAPのアプリケーションを使っている」と言える状況だった。しかし、企業の中でERPアプリケーションの恩恵を受けてしかるべきなのは、前線で販売を担当する人だったり、購買を実際に行っている人だったり、マーケティングの担当者だったりする。そういう人たちに対して、業務アプリケーションを用いて適切な情報を適切なタイミングで提供し、意思決定を支援していく。これが、SAPが言うビジネス・ユーザーの領域となる。

 3番目の中堅市場は、その言葉どおり中堅規模の各セグメントに対して適切なアプリケーションを用意し、そこでのビジネスに注力するという意味である。

 
ビジネス上の約束事を吸収するSOA基盤を提供

 SOAに関するSAPの取り組みと他社のそれとの違いは、業務アプリケーションの部品提供にある。同社では、「Business Suite」としてすぐに使える再利用可能な部品を製品レベルで提供しており、これを「Enterprise Services」と呼んでいる。“Enterprise”とわざわざ付けているのは、「企業の中で使える、最適な粒度で定義された部品」ということを示している。

 SAPは、ユーザー企業の関心事はシステムを作ることではなく、システムを使って業務を効率化したり柔軟性を高めたりする点にあると強調する。部品として提供されるサービスに関しても、単に利用すればよいというわけではない。「このサービスでこういうことが起こったら、どこにどういう影響があるか」とか、「このサービスをこう使ったら、次のこちらのサービスでこうしなくてはならない」といったビジネス上の約束事をきちんと守る必要がある。

 こうしたビジネス上の約束事をきちんと作り込むことをユーザー企業に求めるべきではないというのがSAPの考えだ。そこで同社は、そうした約束事の部分まできちんと吸収し、サービスをどのように組み合わせてもビジネス上の矛盾が起こらないよう支えることができる「ビジネス・プロセス・プラットフォーム」を提供している。またこれと併せて、実証済みの機能を持つ高品質な部品も提供中だ。SAPによると、この両方を提供しているベンダーは同社以外に存在しないという。

 こうした、矛盾のないサービスの組み合わせを可能にしているのは、その土台としてSAPが定義した「Global Data Type」の存在が大きい。これは、ビジネスの世界をシステム側で理解できるようデータ型として定義したもので、総量としてはPDFフォーマット換算で「5,000〜6,000ページ」(SAP)に達する。もともとは、SAPがR/3の中でプロプライエタリに使ってきた定義を抽出し、SAPアプリケーションの中で何が起こっているのかを外部からわかるようにすることが目的だった。このGlobal Data Typeこそが、他社にはまねできない資産だとSAPは述べている。

 
CPMソリューションで財務担当者に照準

 SAPが2007年にフォーカスした分野にはGRC(Governance, Risk, and Compliance)製品群がある。また、新たな重要領域としてCPM(Corporate Performance Management)も挙げられる。

 後者のCPMに関しては、買収製品に基づいた「Business Planning and Consolidation」という製品が対応する。加えて、Business Objects製品を含むBI/リポーティング機能もこの分野にかかわってくるし、Microsoft Officeとの連携製品である「Duet」もこの領域に含まれる(図2)。


図2:CFO(最高財務責任者)向けSAPソリューション。ERPを基盤として、コンプライアンスや内部統制を強化するGRCソリューションと、意思決定に必要な経営情報を提供するCPMソリューションを提供する

 CPMの領域では、単にデータを可視化するだけでは不十分で、エンドユーザー側に立って経営情報をわかりやすくきれいに表示することが強く求められる。そのため、エンドユーザーに使ってもらえるようなインタフェースを提供するという認識に立ち、彼らが日々使い慣れているツールからSAPのアプリケーションにアクセスできる形にする。それによってバリューを提供するというのがSAPのねらいである。

 SAPの業務アプリケーションについては、経営を管理するうえで有益な情報とツールを提供しているとの評価が経営者の間で確立している。そこで同社が経営層の次に照準を当てているのが、日々ビジネスを実行している担当者たちだ。SAPでは、CFO(最高財務責任者)が使うツール、CIOが必要としている情報、営業担当者、購買担当者、マーケティング、人事、生産といった分類を「バイイング・センター」と呼んでおり、SAPのツールがどう使われているかに常に注意を払っているという。

 
中堅企業向けに3つのポートフォリオを用意

 中堅企業向けのポートフォリオは「SAP Business One」、パートナー/ソリューションとなる「SAP Business All-in-One」、オンデマンド型の「SAP Business By Design」の3種だ。これらは、ターゲットとしているマーケットがまったく異なっている。

 小・中規模向けのBusiness Oneは、統合されたERPアプリケーションを短期間で構築したいというニーズにフィットするソリューションであり、Business All-in-Oneのほうは中堅の中でも従業員100名以上/売上高100〜200億のユーザー企業が対象である。

 この程度の規模になってくると、ビジネス・プロセスという観点では大規模の場合とさほど違いがなく、業種別のビジネス・プロセスに対する要求も高い。そのためSAPは、Business Suiteで培われたノウハウを、より導入しやすいオールインワン・パッケージの形で提供している。それがBusiness All-in-Oneである。

 最後のBusiness ByDesignは、国内では導入されておらず、現在は準備中の段階にある。これは、ITインフラを企業内で有することを望まないユーザー企業に向けたオンデマンド型(SaaS型)サービスとなる。

 
Oracleとの違いはNatively Integratedにあり

 SAPとOracleとの違いはどこにあるのか。この答えをSAPは、“Natively Integrated”という言葉を使って説明する。

 さまざまなアプリケーションを集めたとしても、それでエンド・ツー・エンドのビジネス・プロセスが完結するかどうかは別問題だ。SOAで相互接続できるといっても、現状ではユーザー企業が自分で接続するという話になる。

 使い勝手のよいツールをユーザー企業に提供し、「あとはご自由にどうぞ」という方針は、それはそれで1つの道ではある。だが、そうしたユーザー任せのやり方はSAPの戦略とは大きく異なる。SAPが言うNatively Integratedは、いわばこういう意味だ。「ユーザー企業にとっては、業務アプリケーションを購入したら、最初から最後までプロセスがつながっていて当たり前。ユーザー側でつなぐ必要などない」

 こうしたNatively Integratedの状態をユーザー企業に提供できるのは、前出のGlobal Data Type、さらにはビジネス・プロセス・プラットフォームによるところが大きい。この点が、SAPの取り組みと他社との大きな差別化ポイントとなっている。


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