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【インタビュー】
極寒の地にも「熱問題」あり――南極基地の管理者が語る、マイナス50℃下のITマネジメント
データセンターの構成から過酷な伝統行事まで一問一答
(2008年05月02日)
データセンターの熱は南極でも課題
──基地内のデータセンターはどのような構成になっているのか。
Malmgren氏:2005年に完成したばかりの新しい基地にフル装備のデータセンターがある。床がフリー・アクセス構造になっており、一般的なデータセンターに必要となるものはすべて用意されている。また、サーバは約30台だ。
このほか、メインの基地から1kmほど離れたところに、RF(Radio Frequency)ビルと呼ばれる建物がある。ここに緊急時のバックアップ用データセンター(写真3)があり、SAN(Storage Area Networks)に接続された予備のファイル・サーバが置かれている。衛星通信用のパラボラ・アンテナが設置されているのも、この建物だ。メインのデータセンターに障害が発生したときに、こちらのデータセンターにオペレーションを切り替えるようになっている。
| 写真3:バックアップ用データセンターの内部。ここには外に直接つながる通気口があり、適温を保つのは比較的容易だ |
──米国のデータセンターでは熱密度が問題になってきている。南極では、もちろん問題にはならないと思うが。
Malmgren氏:南極は熱問題とは無縁と思われるかもしれないが、実際にはこちらのデータセンターでも相当量の熱が発生しており、この熱を取り除くことが課題の1つになっている。
そこでわれわれは、熱の一部を建物の別の場所へ送り出すという方法を試みている。古い基地のデータセンターでは、単純に壁にファンを取り付け、そこから熱を外に逃がすことでシステムを冷却していた。
──データセンターでは大量の電力を消費すると思うが、そのことは問題にならないのか。
Malmgren氏:こちらには約100万ワットの電力を発電できる設備があるが、実際にそこまでフルに電力を使ってしまうと、燃料供給が圧迫されることになる。そのため、発電機を常に動かし続けることは現実には難しい。一般に、発電機は高所に弱く、電圧が低下してしまうこともある。
発電可能な電力量は、燃料をどれだけ備蓄できるかに依存する。燃料は1滴残らず空輸されてきており、輸送機が飛ぶ夏の4カ月間に運ぶことのできる量は限られている。冬になって基地が閉ざされてしまえば、その後の8〜9カ月間、輸送機は飛ばないのだ。
──データセンター向けの非常用電源は用意してあるのか。
Malmgren氏:予備の発電機をデータセンター用に確保することはしていないが、UPS(無停電電源装置)は用意している。実際に稼働している(施設全体用の)発電機は常に1台だけだが、全部で3台の発電機がある。1台が運転用、1台がホット・スタンバイとして待機、そして残りの1台はメンテナンス用という構成だ。運転中の発電機が停止したときは、5〜6秒以内に別の発電機が動き出す仕組みになっている。
発電機が完全に停止してしまうと、施設内の熱が失われることになる。もしそうなれば、4時間か5時間もしないうちに建物全体が冷え切ってしまうだろう。
帯域確保が外部通信時の最大の課題
──外部との通信はすべて衛星経由で行うのか。
Malmgren氏:そうだ。基地が建っている氷床は1年間に約9m動く。また、最も近い基地とも960km離れている。このような環境下でケーブルを敷設するのは容易ではない。
──通信に際して技術的な課題は何か。
Malmgren氏:最大の課題はネットワークの帯域を確保することだ。ネットワークに接続できるのは1日12時間だけで、回線速度もT-1(1.54Mbps)から3Mbps程度にすぎない。ただし、トランスポンダを使えば、こちらからの送信にかぎり60Mbpsの速度でデータを送ることができるため、科学データの送信にはトランスポンダを使用している。ちなみに、これまでの最大送信記録は1日で94GBだ。
インターネットへの接続には3つの衛星を使用している。いずれも年代物で、内訳は気象衛星、海上通信衛星、NASAの衛星である。気象衛星は1981年、残りの2つは1976年から1977年にかけて打ち上げられたものだ。
基本的には、そのつど捕捉できた衛星を使っているが、各衛星を捕捉できるのは1日3〜4時間だけで、それ以外の点では一般的なネットワークとほぼ同じだ。ネットワーク機器には米国Cisco Systemsの製品を使用し、すべての寝室に有線回線を引いているほか、FTTD(Fiber to the Desktop)に備えて建物全体に光ファイバーを張り巡らせている。できるだけ将来に備えた設計を施しているわけだ。
──これらの衛星が機能停止した場合はどうするつもりなのか。
Malmgren氏:現在使っている衛星はすでに設計時の寿命を過ぎているので、数年以内に別の衛星に切り替える予定だ。衛星の状態は悪くなる一方で、双方向通信を行えない時間が次第に増えている。NSFでは、現在のものより新しい衛星を時間単位で借り受けることを検討しているが、それには130ドル/分ほどの費用がかかりそうだ。
──衛星回線に障害が発生したときはどう対応しているのか。だれかがRFビルのアンテナの様子を見に行くのか。
Malmgren氏:ここではだれもが、気温−70度の真っ暗闇の中、衛星通信用のパラボラ・アンテナ(写真4)が設置されているバックアップ用データセンターまで歩いていくという経験をしている。このようなことは、南極で働くのであれば不可避だし、目の前には極限的な状況がいくらでもある。−70度の中でルータを交換することができれば、どこへ行ってもルータの交換に困ることはないだろう。
| 写真4:バックアップ用データセンターの衛星通信用パラボラ・アンテナ。電波をキャッチするため、地平線に向かってほとんど水平に設置されている |

























