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【仮想化の教室 第1回】
仮想化への入口 〜仮想マシン概論〜

仮想化技術のすべてをここで学べる!

(2009年07月03日)

 「仮想化」は現在最も注目されているテクノロジーの1つであり、近い将来、ごくふつうのIT基盤になる可能性を秘めている。本連載では、仮想化の基礎から実践的な情報まで、仮想化テクノロジー全般について幅広く取り上げる。

山市良

意外に長い歴史を持つ
コンピュータの仮想化テクノロジー

 仮想化テクノロジーは、システムが抱えるさまざまな課題を解決するキーテクノロジーと期待されている。データセンターなどにおいては、サーバ統合によるハードウェアリソースの効率的な利用、消費電力や設置スペースの節約、環境対策、テスト環境など、仮想化テクノロジーを適用できる分野は広範囲にわたり、導入も急速に進んでいる。

 ところで、読者の皆さんは「仮想化」ということばから何を連想するだろうか。本連載で取り上げるのは、IA(Intel Architecture)ベースのコンピュータを仮想化する「仮想マシン(Virtual Machine)」である。

 仮想マシンが登場したのはごく最近のように思われがちだが、その歴史は意外と古い。1970年代に、IBMがメインフレームである「System/370」で物理分割(Physical Partitioning)をサポートしたのが仮想マシンの始まりだと言われている。これは、メインフレームコンピュータを小さな論理パーティションに分け、マルチタスクで同時実行を可能にしたものだ。高額なリソースを有効活用するテクノロジーであった。

 一方、1960年代のメインフレームで用いられた「タイムシェアリングシステム(TSS)」は、現在の仮想化テクノロジーの先駆けであったと言えるだろう。TSSは、メインフレームのプロセッサ時間を処理単位に分割し、あたかも同時実行しているかのように見せるものだ。

 仮想化テクノロジーは現在、仮想マシン以外にもコンピュータシステムのさまざまな分野に実装されている。例えば、256MBの物理メモリしか積んでいないコンピュータでも、OSやアプリケーションは4GBの仮想メモリ空間を利用できる(x86コンピュータおよび32ビットOSの場合)。これも仮想化テクノロジーの一例である。

Java VMと仮想マシン
両者の違いと共通点とは

 アプリケーション開発者は、「仮想マシン」と聞くと、サン・マイクロシステムズの「Java仮想マシン(Java VM)」を思い浮かべるかもしれない。仮想マシンとJava仮想マシンはもちろん、まったく異なるテクノロジーである。しかし、概念的には両者は同じものであると言える。

 Java VMは、Java言語で作成したプログラムコード(Javaアプレット)を解釈し、実行するための環境を提供するものである(図1)。

図1● Java仮想マシン(VM)は、プラットフォームに依存することなく、同じプログラムコードを実行可能にする

 Java VMは、WindowsやLinuxはもちろん、携帯電話やPDAのOSにも実装されており、同じプログラムコードをさまざまなプラットフォームで実行させることができる。ちなみに、マイクロソフトの「.NET Framework」の「CRL(Common Runtime Language)」も同じようなコンセプトだ。

 一方、仮想マシンは、物理的なコンピュータ上に用意された仮想的なコンピュータであり、その仮想的なコンピュータ内でそれぞれ別のOSを稼働させることができる。Java VMとどこが似ているのかというと、仮想化することにより、本来大きく依存するはずの環境を抽象化し、違いを吸収しているところだ。こうして物理的なハードウェアの概念を排除することで、仮想的な実行環境で同じプログラムコードが実行可能となる。

 これにより、例えばWindows向けに提供されている(Windows用のドライバしか提供されていない)ハードウェア上で、動くはずのないLinuxを動作させるなど、仮想マシンの構成をまったく変更することなく、異なるハードウェアに簡単に移動することができるのだ。

 「仮想化」の意味を「現実を模倣した概念的な世界」と捉えることもできる。これは、仮想マシンの一部の側面を正確に表しているかもしれない。現実を模倣するということは、確かに仮想マシンの実現方式の1つである。

 しかし、これは初期の方式であり、これからの仮想化テクノロジーの進化の方向は、Java VMのような抽象化へと向かっていくことになるはずだ。現実を模した仮想マシンは、ある意味特定のハードウェアに依存しており、そのぶん、オーバーヘッドが生じてしまう。



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