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【解説】
高速処理と省電力を共に実現する
新世代ストレージ「SSD」の可能性

ハードディスクに取って代わるか/企業向け製品でも普及が進むか

(2008年04月04日)

フラッシュ・メモリの大容量化で姿を消す小型HDD

 初期のMP3プレーヤーで、大容量タイプの製品はHDDを搭載していた。だが、今ではごく一部の大容量モデルを除いてフラッシュ・メモリが使われている。また初期のデジカメでは、コンパクト・フラッシュと同じ形状でHDDを内蔵したマイクロ・ハード・ドライブも使われたが、今ではほとんど消え去ってしまった。記憶容量ではSDカードのほうが上回っているほどだ。

 すでに多くのHDDメーカーは、1インチ以下などの超小型HDDの製造を打ち切っている。フラッシュ・メモリの大容量化と低価格化に対抗できないからだ。

 HDDでは、3.5インチや2.5インチで1TB(テラバイト)といった大容量かつ高速なHDDが今後の主流になるだろう。音楽や動画、特にハイビジョン映像の保存などでは容量が不足しがちになるからだ。

 しかし、ビジネス用途のモバイルPCなどでは、それほどの大容量は必要ないだろう。WindowsとOffice、それにワープロや表計算ソフトなどのファイルだけなら数十GBで十分であり、SSDで何ら問題はない。むしろ紛失時の情報漏洩などを考えれば、ノートPCに何でもかんでも保存して持ち歩くのは危険だ。つまり、ビジネス用途なら、過剰に大容量のHDDは必要ないと言ってよいだろう。

HDDの処理速度は、構造的な理由で限界に

 実は、HDDはある問題に突き当たっている。それは構造的な理由によって処理速度が限界に達しつつあることだ。もちろん、さまざまな改良が加えられてはいるが、CPUやメモリの高速化が進むなかで立ち遅れているのが実情である。

 特に問題となっているのがシーケンシャル・アクセス(データを連続的に読み書きする処理)に対する、ランダム・アクセス(データを飛び飛びに読み書きする処理)の速度が相対的に低下し続けていることだ。

 HDDのパフォーマンス、つまりPCから見た読み書きの速度は、プラッタの回転速度、PC/HDD間のインタフェース速度、シーク・タイム、内部データ転送速度、バッファ量といったパラメータで決まってくる。

 プラッタの回転速度が大きいほど処理速度は上がる。データを読み書きするには、最悪のタイミングだとプラッタが1回転するまで待たなければならない。当然ながら高速回転しているほうが待ち時間は短くて済み、処理速度が上がる。1990年代には毎分4,200回転(4,200rpm:revolutions per minute)の製品が主流であったが、その後5,400rpmの製品が登場、現在では7,200rpmのものが主流となっている。ハイエンドの製品では1万rpmを超えるものもある。

 PCとHDDの間をつなぐインタフェースの速度については、この10年ぐらいでも毎秒33MBのUltra ATAから毎秒66MBのUltra DMA/66、毎秒100MBのUltra DMA/100と改良が進められた。2000年代に入ると、パラレル処理のATAに代わってシリアルATA(SATA)が制定され、現在は毎秒300MBのSATA300が主流となっている。

 ところが、磁気ヘッドの移動に要するシーク・タイムはあまり向上していない。

 データが連続した領域に記録されているのであれば、ヘッドを移動させる距離は最小になるため、シーク・タイムはあまり影響を与えない。だが、PCではランダム・アクセスが頻繁に発生する。実際、データはプラッタ上の飛び飛びのセクタに記録されるので、ヘッドは頻繁に円盤上を動かなければならない。

 隣り合ったシリンダへの移動を最短シーク、内周から外周への移動を最大シーク、その平均値を平均シークという。この平均シーク・タイムはここ数年、10ミリ秒前後と変化していない。磁気ヘッドが取り付けられたスイング・アームをボイスコイル・モーターで左右に振るという基本原理が変わらないかぎり、なかなかシーク・タイムの向上は望めそうにない。この点がHDDの限界になっているのだ。

 一方、SSDには、このシーク動作が存在しないため、純粋に電子回路の能力である読み書きの速度が上がれば、それに伴ってトータルの速度も上がるわけだ。

HDDに付きまとうヘッド・クラッシュもSSDには無関係

 HDDには、その構造上どうしても避けられないトラブルとして、ヘッド・クラッシュがある。

 HDDの磁気ヘッドはプラッタからごくわずかに浮いた状態でデータを読み書きする。プラッタは固いため、磁気テープやフロッピーディスクのように完全に密着させるわけにはいかない。プラッタとヘッドの間隔は10nm〜30nm(ナノ:10億分の1)であり、タバコの煙の粒子も入れないほど狭い。プラッタが高速回転することで発生する空気の流れにより、ヘッドはわずかに浮いているのだ。

 ヘッドが動いている状態で突然電源が切れたり、落下による衝撃を受けたりするとプラッタにヘッドが当たってしまい、プラッタに傷がつくなどの損傷が起きる。これがヘッド・クラッシュである。

 最近のノートPCや外付けHDDには加速度センサーが内蔵されており、落下や傾きを検知してヘッドを退避させる仕組みが備わっている。また、衝撃を吸収するダンパーによってHDDは保護されている。しかし、それでも完全にヘッド・クラッシュを避けることはできない。バッグやポケットから頻繁に出し入れするようなモバイル機器では、ノートPC以上に落下の危険性が高く、HDDが壊れる可能性も高くなる。また、消費電力の面でもHDDはフラッシュ・メモリに比べ不利だ。そのため、モバイル機器ではいち早くHDDからフラッシュ・メモリへの移行が進んだ。

 ノートPCの場合、CPUや液晶ディスプレイなども消費電力量が大きい。そのためSSDに切り替えればバッテリーの持続時間が非常に長くなるというわけではない。しかし、各パーツの省電力化が機器の省電力化の第一歩である。また、衝撃吸収ダンパーなどが不必要になることで、よりいっそうの軽量化や小型化、薄型化も実現できるはずだ。さらに、プラッタを回転させる必要がないため、省電力化だけでなく音が静かになるというメリットも出てくる。

 SSDは、ヘッド・クラッシュがない点で、車載機器の市場などで注目されている。過酷な衝撃・振動にさらされる車載機器でHDDを保護することは大きな課題だが、SSDならば、この問題を考慮しなくてよいわけだ。実際、例えば東芝には自動車関連メーカーからの引き合いが来ているという。

半導体メモリに付きものの「寿命」
オフィス・ユースでは問題なし

 自由に読み書きできるフラッシュ・メモリだが、書き換え可能回数には上限がある。

 フラッシュ・メモリは「トンネル酸化膜」という絶縁体を使って電荷を保存する。これによって外部から電源を供給しなくてもデータが保存できるわけである。だが、書き込みや消去といった動作を行うと酸化膜を電子が通過し、酸化膜が徐々に劣化していく。最終的には絶縁性が失われてしまい、メモリとしては使えなくなる。NAND型では100万回程度が書き換えの上限と言われている。

 ただ、この絶縁不良はメモリ・チップ全体に起きるのではなく、セル単位で発生する。そのため、書き換えを行うセルをコントローラ・チップによって分散させたり、不良セルを切り離す「ウェアレベリング」を使ったりして実質的な寿命を伸ばしている。

 東芝メモリ事業部NANDシステム企画部部長の西川哲人氏は、フラッシュ・メモリの寿命の問題はオフィス・ユースでは問題ないと話す。「例えば、ノートPCのSSDの場合、通常のオフィス・ユースで何万回、何十万回と書き換えを行うことは、まずありえないでしょう。その前に他の部品の寿命が来ます」(西川氏)


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