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【解説】
高速処理と省電力を共に実現する
新世代ストレージ「SSD」の可能性
ハードディスクに取って代わるか/企業向け製品でも普及が進むか
(2008年04月04日)
HDDの代わりにSSD(Solid State Disk)を搭載するノートPCが増えている。HDDに匹敵する容量を備えつつあることで、ノートPCでは今後、SSDが標準になるとの予測もある。そして、最近では、SSD対応のエンタープライズ向けストレージが登場するなど、徐々に応用範囲を広げてもいる。SSDは、HDDで課題となっていた処理速度の向上や省電力化を実現できる点で期待されている反面、コストが高いという問題を抱えている。はたして、SSDは広範に普及していくのか。本稿では、SSDの基本を押さえるとともに、最新の動向に迫ってみたい。
土屋 勝
2008年、SSD搭載のノートPCが続々と登場
2008年1月から日本でも発売になった台湾ASUSの「Eee PC」。Windows XPインストール済みで1台4万9,800円という低価格が話題になったが、このモバイルPCはHDD(ハードディスク・ドライブ)の代わりに4GBのSSD(Solid State Disk)を搭載している。また、2008年3月に発表されたLenovoの「ThinkPad X300」シリーズは、3機種すべてが64GBのSSDを搭載しており、現時点でHDDタイプは存在しない(写真1)。国内勢では東芝が、主にノートPC向けの128GBのSSDを2008年3月より量産開始すると発表している(写真2)。こうして見ると、2008年はSSDを搭載するモバイルPCが一気に普及しそうな気配がある。
| 左(写真1)は、SSDを標準で搭載するLenovoのノートPC「ThinkPad X300」。右(写真2)は、東芝の多値NAND対応SSDであり、容量は最大128GB |
HDDからSSDへの置き換えは容易
このようにSSDを搭載するノートPCが目立つようになったが、そもそもSSDとは何だろうか。一言で説明するなら、「SSDとはHDDの中身を磁気メディアから半導体メモリに置き換えたもの」となる。OSからはHDDと同じにしか見えないが、物理的にはモーターもプラッタもヘッドもない、半導体の固まりというわけだ(図1)。
| 図1:HDDとSSDの構造比較 |
そのメリットは容易に想像できる。HDDでは避けられない物理的な故障がSSDではなくなるほか、機械部分の電力消費を低減することができる。また、データ転送速度が頭打ちになってきているHDDよりも高速化が可能となる。
SSDのようなストレージ(保存)用途の半導体メモリとしては、SDカードやUSBメモリがなじみ深いだろう。SDカード、USBメモリ、そしてSSDは、形状や用途がそれぞれ違うが、いずれもフラッシュ・メモリという不揮発性メモリを使った記憶デバイスである(コラムを参照)。その中でもSSDは、HDDと同じインタフェースを持ち、OSからはHDDと同様にアクセスできるのが特徴だ。
単に小型化を優先するなら、HDDよりメモリICを直接基板に実装するのがよいように思える。実際、ポータブル・オーディオ・プレーヤーやICレコーダーではそのようになっている。だが、PCは過去からのさまざまなレガシー・デバイスや、欠かすことのできないインタフェースをいくつも引きずっている。HDDはその最たるものだろう。つまり、PC用記憶デバイスとしては従来の設計手法が使えるもののほうが効率的だ。SSDの存在意義は、正にそこにあると言える。
最近は、USBメモリからLinuxなどのOSを起動することも可能になっている。しかし、古い機種だとUSB起動には対応していないものもある。今でこそ広く普及しているUSBにしても、規格が制定されたのは1996年のことであり、一般的に使われるようになったのはWindows 98でサポートされてからである。
これに対し、HDDはMS-DOSの時代から起動デバイス/外部記憶デバイスとして使われてきた実績がある。どんなPCでも、どんなPC用OSでもHDDをサポートしていないものはないだろう。
現在、市場に出回っているSSDには2つのタイプがある。1つは2.5インチや1.8インチといった小型HDDと同じ外観、同じコネクタを持っていて、HDDとそのまま置き換えができるもの。もう1つは、サイズやインタフェースはHDDと同じだが、金属ケースなどはなく、チップむき出しの基板で提供されるものだ。
PCショップなどで単体販売されているものは、ユーザーがノートPCのHDDと換装できるよう、HDD型のものとなっている。だが、最初からノートPCに実装してしまうのであればコスト的にもスペース的にも金属ケースは不要なので、基板タイプが使われる。
Column
SSDの中身である半導体メモリのおさらい
半導体メモリは大きく分けて2種類ある。電源を切ると中身が消えてしまう揮発性メモリと、電源を切っても中身が保存される不揮発性メモリだ。PCのメイン・メモリとして使われるDRAM(Dynamic Random Access Memory)やキャッシュ・メモリは揮発性メモリであり、SDカード、SSDに使われるフラッシュ・メモリは不揮発性メモリである。
揮発性メモリは、記録保持用の電源が必要であり、特にDRAMは一定間隔で書き直し作業を行わないと記録が消えてしまう(そのため、Dynamic RAMと呼ばれる)。だが、読み書きが自由に行え、高速であるという特徴を持っている。これに対し、不揮発性メモリは電源を切っても内容を保持できるが、書き込みには制約があり、読み書きの速度が遅いという特徴がある。
不揮発性メモリはROM(Read Only Memory)とも呼ばれる。本来は書き換えができずに、読み出し専用のメモリという意味である。実際にゲーム・カセットに使われているマスクROMは製造工程でデータを記録し、後からは書き換えができない。しかし、現在使われているROMは書き換えができるEPROM(Erasable Programmable ROM)がほとんどであり、その中でも電気的処理によって書き換えができるものをEEPROM(Electrically Erasable PROM)という。フラッシュ・メモリはEEPROMの一種ということになる。
フラッシュ・メモリは、構造の違いでNOR型とNAND型に分けられる。NOR型はデータの信頼性が高く、読み出し速度が100ナノ秒(ナノ:10億分の1)程度と高速で、高速ランダム・アクセスが可能だ。しかし、NAND型に比べて集積度が低く、書き込み速度が遅い。
これに対し、NAND型は集積度を上げられるので大容量化に向いている。書き込み/消去の速度はNOR型よりも速いが、ランダム・アクセス速度は低い。データの信頼性という面ではNOR型に劣っており、エラー訂正(ECC)機能が不可欠である。
NOR型は主にファームウェアやBIOSなどを保存する用途に、NAND型は主にストレージ用、つまりSDカードやUSBメモリ、SSDなどに使われている。
フラッシュ・メモリは、さらにセルごとの記録容量の違いでSLC(Single Level Cell)とMLC(Multi Level Cell)の2タイプに分けられる。SLCは1つのセルに「0」か「1」の2値1ビットを記録する。一方、MLCは1つのセルに複数ビットを記録する。例えば、4値2ビット・タイプであれば、「00」「01」「10」「11」のように1セルにSLCの倍のデータを記録できる。
SLCは高速かつ信頼性が高いが、集積度でMLCに劣る(2分の1から4分の1)。一方、MLCは、大容量かつ低価格だが、信頼性、高速性でSLCに劣る。
単純に言えばMLCは同じ面積で容量をSLCの2倍以上にすることが可能となり、同じ容量であれば大幅なコスト・ダウンが実現できる。NAND型フラッシュ・メモリで世界トップ・シェアを持つ東芝は、MLCの開発に注力しており、フラッシュ・メモリの多値化比率は95%を超えている。

