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設備・設計から考えるデータセンターの「電力供給と冷却」
米国企業3社は“電力食いのヒート・アイランド”にどう立ち向かったか
(2006年09月08日)
IT機器の小型化や高密度化が進むにつれ、企業のデータセンターやサーバ・ルームの消費電力量と廃熱量は増大の一途をたどっている。そのため、データセンターに供給される電力の確保と機器の冷却が、IT/IS部門のマネジャーにとって大きな課題となっている。この課題にうまく対処しないことには、システムの運用に支障を来すのはもちろん、そのコストを押し上げる要因ともなる。本稿では、データセンターにおける電力供給と冷却に取り組んだ米国企業3社の事例を通して、これら危急の課題に対する有効な対処法を探ってみたい。
ロバート L.ミッチェル
Computerworld米国版
データセンターの管理者を悩ます電力供給と冷却の問題
| 図1:データセンターにおける消費電力の内訳 |
米国の市場調査会社ロバート・フランシス・グループのアナリスト、ジェリー・マーフィー氏によると、大規模なデータセンターにおける重要課題の1つは電力の問題だという。同社が今年1月にフォーチュン500企業のIT幹部50人に実施した調査では、41%が自社データセンターにおける問題点として電力供給と冷却を挙げている(図1)。さらにマーフィー氏は、最近、米国の最大手金融サービス会社6社のCIO(最高情報責任者)からデータセンターについて話を聞く機会があったそうだが、その際、彼らも「目下、最大の問題は電力である」と口をそろえていたという。
米国のデータセンター設計ベンダー、EYPミッション・クリティカル・ファシリティーズ・データセンターの調査によると、データセンターにおける消費電力の内訳は、50%が機器への電力供給で、次いで、機器の冷却が25%だという(図2)。データセンターでは、ブレード・システムの導入によって高密度化が進み、総消費電力量とその廃熱量が急増傾向にある。2005年の時点で深刻な電力問題を経験したのは大規模なデータセンターに限られていたが、今では、機器の高密度化がいっそう進んでいるため、今後は小・中規模のデータセンターでも電力問題が起きるだろう、とマーフィー氏は予測している。
| 図2:データセンターの電力/冷却に関する問題に対する意識調査(フォーチュン500企業のIT/IS部門幹部50人の回答) |
今日、サーバ・ラック1台当たりの消費電力量が20キロワットを超えることも珍しくなく、数年後には30キロワットを超える可能性もある。加えて、一般的な機器では、廃熱処理のために、消費電力1ワットにつき1ワット以上の電力が必要になる。米国ヒューレット・パッカード(HP)の環境コンサルタント、ブライアン・ドナベディアン氏によると、消費電力が20キロワットのラックであれば40キロワット以上の電力が必要だという。2重化電源を搭載したシステムについては、さらに多くの電力を供給しなければならず、コスト、すなわち電力料金も増大する。
一般に、年間の電力料金が100万ドルを超える数メガワット級のデータセンターでは、その設計を工夫し、効率改善を図ることで大幅にコストを削減できる余地がある。EYPのCEO(最高経営責任者)、ポーター・グロス氏によると、多くのデータセンターでは運用コストの半分を電力料金が占めているという。また、電力効率の改善を図ることで、空調や電源装置などデータセンターの設備への投資を抑えることができ、TCO(総所有コスト)の削減にもつながる。
それでは、以下、米国企業3社が、電力供給と冷却というデータセンターの重要課題にどう取り組んだのかを紹介していこう。
Case Study 01……トリニティ・ヘルス
データセンターの増築、UPSの追加、ターゲット冷却によって対処
44病院を傘下に持つ米国の医療組織、トリニティ・ヘルスは、9,000平方フィート(約840平方m)のデータセンターを所有している。建設工事を監督したトム・ロバーツ氏は当初、4、5年はこの施設で間に合うだろうと考えていた。ところが、それから3年余り過ぎた今、新たに3,000平方フィート(約280平方m)の施設を建設する必要に迫られた。そして、キャパシティに限界が見えてきた電力と冷却の問題の対処に当たることになった。
■電源供給問題への対処のポイント
トリニティでは、業務拡張とビジネス・プロセスの自動化に対する需要にこたえるため、サーバを大量に追加した。同社のデータセンターには、IBMのメインフレーム「eServer zSeries 900」、850台のラックマウント型x86サーバ、数百個のCPUを搭載する2台のブレード・サーバ・システム、SAN(Storage Area Networks)を構成する複数台のストレージ・システムとスイッチが配置されているが、これらに十分な電力を供給することは容易ではない。当初、容量300キロワットのUPS(無停電電源装置)が設置されていたが、その後、さらに2台追加することになった。最近の機器は2重化されているため、データセンターの一部の区域の電力密度は、1平方フィート当たりで250ワットを超えるという。
■冷却問題への対処のポイント
ロバーツ氏は、「単に施設の床面積を広げれば済むという問題ではない」と述べ、機器を冷却するために、電気系統や空調システムも増強しなければならないと強調する。
トリニティのデータセンターでは、8フィート(約2.4m)の高さのラックを使用しているが、高密度なブレード・サーバ・システムの放熱量は尋常ではない。「ブレードのラックの上部から放出される熱風は50℃もあり、まるでかまどのようだ」(ロバーツ氏)
データセンターの管理者が犯しやすい過ちの1つは、廃熱対策として、ラックの上部に排気ファンを取り付けることである。これをやると、高い天井でないかぎり、排気ファンは室内の空調システムの動作と干渉し、かえってラック内温度を上昇させてしまう場合がある。ロバーツ氏は「ファンはラックの上部と天井の間にエア・カーテンを作るため、空調ユニットに向かう水平方向の空気の流れがさえぎられてしまうのだ」と説明する。
そこで、同氏は、ターゲット冷却という手法をとった。これは、ラックごとにリターン・エア・ダクトを取り付け、これらのダクトをデータセンター内で特に温度の高い通路に向けるという手法である。
COLUMN
データセンターの「電力危機」がもたらす影響
原油価格の高騰がサーバの統合とシステムの仮想化を加速させる理由
デビッド L.マーグリウス
最近、原油価格の高騰が著しく、テレビや新聞においてそのニュースを見聞しない日はない。当然、電力料金は値上がりし、企業のITシステムもその影響を受けるわけだが、ここで興味深い現象が生じている。対策として、サーバの統合やシステムの仮想化を実施している企業が増えているのだ。原油価格が1バレル当たり20ドルと、電力コストが安かった時代には、サーバの統合やシステムの仮想化はほとんど注目されていなかった。
米国AMDが企業の延べ1,177のIT/IS部門を対象に行った「データセンターにおける電力消費と冷却」という調査においても、電力料金と消費電力量の上昇にどのように対処するかという問いに対し、回答者の44%は供給電力量を増やすと答えているが、27%はサーバの統合化を図ると答えている。
加えて、この調査報告では触れられていないが、低消費電力型のCPUが普及し、ブレード・サーバやSANにおいて省電力化が図られている一方、原油価格の高騰に端を発する電力料金の上昇は、仮想化技術の普及後押ししているような動きがある。
数年前、サーバやCPU、ストレージにおいて仮想化技術が順調に進展していた。しかし、ハードウェアの導入コストより、その運用管理コストや運用管理スタッフの人件費などのコストのほうが高くついたため、普及には至らなかった。そして、原油価格が1バレル当たり70ドル近くになった今、機器の省電力化というより、台数そのものを減らす仮想化のほうが消費電力量の抑制に有効というわけだ。
こうした状況を受け、AMD、サン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカード、IBMといった大手ベンダーが今年4月、グリッドや仮想化を用いてデータセンター・レベルで消費電力の低減を推進する団体「The Green Grid 」(画面A)を立ち上げている。
| 画面A:データセンターの消費電力の低減に取り組む「The Green Grid」 |



























