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高可用システムの根幹を成す「物理インフラ」を再点検する
データセンターの「立地・建築・設備」やサーバ・ルームの「電力/熱問題」に着目
(2007年05月10日)
ITシステムと物理インフラ
の間に存在するギャップ
IT/IS部門スタッフにとって、上述したような物理インフラでのビジネス・コンティニュイティ対策は、理想としては理解できても、自社で運用しているITシステムに対する施策として実施するのは困難であろう。UPSをはじめとする電源装置やラック・システムの大手ベンダーAPCの日本法人、APCジャパンで事業戦略本部新規事業開発部担当部長を務める飯島康弘氏は、「ITシステムと物理インフラの間には、非常に大きなギャップが存在している。自社の物理インフラの状況がどうなっているのか的確に把握しているシステム管理者はほとんどいない」と語る。
しかし、これは無理のないことだ。一部の大企業を除いて、ほとんどの企業は賃貸契約で利用している建物内にサーバ・ルームを設置している。つまり、電源や空調などの設備については、もともとその建物の仕様として提供されている範囲でやりくりするしかないのだ。
例え、自社ビル内にサーバ・ルームを設置している場合であっても、設備の改善や増強をIT/IS部門がリードしていくのは容易なことではない。電源であれ、空調であれ、設備工事はITとはまったく異なる分野の技術者たちによる複雑な共同作業が必要とされる。関係者の間で交わされる「用語」からしてITの世界におけるそれとは大きく異なっており、ファシリティの専門知識を持った管理者でなければ、プロジェクトを切り盛りするのは困難であろう。
加えて、電源や空調などの設備に本格的に手を入れるとなれば、当然のことながら巨額のコストならびに工数が必要であり、プロジェクトが1年以上の長期戦になることも珍しくない。急増するITシステムの負荷に対応するため、あるいは目まぐるしい勢いで変化するテクノロジーに追随するために、フレキシブルに物理インフラを整備したくても、事実上不可能に近いのである。
サーバ・ルーム内で実現可能な
ビジネス・コンティニュイティとは
しかし、わずかな工夫を凝らすことによって大きな効果を上げることができる対策もある。例えば、先に挙げたような熱問題への対処である。APCジャパンの飯島氏は、「しばしば誤解されているケースだが」と前置きしたうえで、次の2点を再確認することを勧める。
対策(1):ブランク・パネルを使って、ラック内の上下の未使用スペースを埋める
効果:ラックに未使用スペースがあると、高温の排気がIT機器の上方または下方に環流し、再び機器内に吸入される可能性がある。この現象はユーザーにはあまり意識されておらず、むしろラック内はスペースを空けたほうが冷却性がより高まると考えがちだ。しかし、実際にはスペースを空けるという行為はIT機器の過熱を誘う主要な原因となっているのである。未使用スペースをブランク・パネルでふさぐことで適切な空気の流れを維持し、冷却効果を高めることができる(図3)
| 図3:未使用スペースにブランク・パネルを設置して、適切な空気の流れを作る |
対策(2):ラックが複数列にわたる場合は、必ず前面を向かい合わせにする
効果:数年前まではよく見られたことだが、現在でもラック列を同じ向きに設置している企業がある。この場合、前列のラックから出された高温の排気が、そのまま後列のラックに吸入されてしまう。ラックの向きを変えるだけで、この弊害は解消され、本来の冷却効果を発揮させることができる(図4)
| 図4:ラックの前面を向かい合わせに設置するだけで冷却効果は上がる |
飯島氏は、「ビジネス・コンティニュイティにおいては、まずは現状の物理インフラに関する“常識の間違い”を知り、考え方を変えていくことが大切だ。発熱対策については、一般に空調設備を増強しないと問題は解決しないと考えられているが、実際にシステム・ダウンが起こった現場に駆けつけてみると、サーバ・ルーム内の室温はそれほど上がっていないことが多い。つまり、どこかに盲点があり、肝心のIT機器から発生する熱をうまく排出できていないため問題が引き起こされているのだ。そうした根本の原因を追求することなく、闇雲に空調設備を増強しても冷却効果は期待できない」とアドバイスする。
限界を超える電力密度に対して
ラック単位での最適化を図る
もっとも、上に挙げた対策は、あくまでも基本中の基本とも言うべき対策であり、それだけでは抜本的な問題の解決は望めない。空調システムの役割は、冷却能力を提供すると同時に、サーバ・ルーム内にホット・スポット(温度が高い部分)が発生することのないよう、室内の空気を継続して攪拌することにある。そして、空調システムが十分な効果を発揮するためには、ラック1本当たりの電力密度が1〜2kW程度の範囲に収まっている必要がある。しかし、最近のIT機器の電力密度は、ラック1本当たりピーク時で20kW以上にもなる。このため、空調システムによる発熱対策は、その限界をはるかに超えてしまっているのが実情なのだ。
そうしたなか、APCジャパンでは、UPSや冷却装置のモジュール化を図った新たなソリューション「InfraStruXure」を打ち出している(写真1)。飯島氏は、このソリューションによって、従来、建物単位やサーバ・ルーム単位で行っていたIT機器の発熱対策や電源の保護をラック列単位で行うことができるとし、次のようにアピールする。
| 写真1:UPSや冷却装置などをモジュール化し、ラック列単位での最適化を図るAPCの「InfraStruXure」 |
「ほとんど手作りに近かった物理インフラに比べ、標準化されたモジュール方式のUPSや冷却装置ならば、従来の2分の1から3分の1の工期で導入することができる。しかも、ビジネスの変化に合わせて必要な装置を後から簡単に追加することができるため、巨額の初期投資が発生することもない。ITインフラと同様にアジリティにすぐれ、TCO削減にも貢献する物理インフラを構築することが可能となる」(同氏)
空調機器メーカーは部屋そのもの、ラック・メーカーはラック内、サーバ・ベンダーはサーバ内部といったように、それぞれ部分最適化された中で発熱対策のソリューションを提供している。しかし、サーバ・ルーム内における最も効率的かつ効果的なエア・フローの設計といった全体最適化については、これまでだれも目を向けてこなかった。裏を返せば、今後はそうした役割をIT/IS部門の担当者が積極的に担っていけるということだ。
これまでITインフラから切り離して考えざるをえなかった物理インフラだが、「ITそのものの価値を最大化する」という同じ目的を持ったピラミッドの根底を支えるレイヤとして、一貫して考えるべき時期を迎えている。データセンターの選定や、自社設備の見直し、新たな機器購入など、そこにおいてIT/IS部門スタッフが果たすべき役割は大きい。



























