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【解説】
だれもいない「Second Life」
――仮想世界を生かしきれない企業の実態
Webよりも洗練された仮想体験を提供できなければ、ビジネス参入の意味はなし
(2008年04月10日)
土曜日
Second Lifeを満喫する方法もある
この日の出来事については、あまり詳しく語ることができない。Second Lifeを満喫する2つの方法を発見したと述べるだけで十分だろう。
1つ目の方法は、当たり前のことかもしれないが、真っ当な場所で真っ当な女性に声をかけることだ。実際に試してみると、無視して通り過ぎていく人もいれば、当たり障りのない会話を交わしてから立ち去っていく人もいる。
私があまりうまくいかなかった原因の1つに、外見を整える時間が取れなかったせいもあると思う。なぜなら、そのときの私は、タトゥーも入れず、アクセサリーも付けず、筋骨隆々でもなく、派手な服も着ていない、見るからに野暮ったい初心者の格好をしていたのだから。
2つ目の方法は、乱痴気騒ぎをするための場所へ行き、そこで仲間に加えてもらうことだ。この方法は、私もまだ試していない。いや正直に言えば、そうした場所に行くには行ったのだが、乱痴気騒ぎには参加しなかったのだ。そんなものは決して“ロマンス”とは呼べないからだ。
日曜日
参入企業にもの申す!
Second Lifeであらゆることを試してみたなどと言うのは、第1の人生であらゆることを試してみたと言うのと同じくらい馬鹿げたことだ。今、私にできるのは、現実世界の人間が仮想世界に滞在した短い時間の中で、味わった失望感をそのままリポートすることだけである。
UIは、少なくとも最新のコンピュータ・ゲームに比べると動きが緩慢で洗練されておらず、そして何より原始的である。グラフィックスは平面的であり、描画速度は忍耐力の限界に挑戦しているかのようだった。だが、私にとって最も期待外れだったのは、Second Lifeに“参入”した企業の取り組みがきわめて初歩的な段階にとどまっている点だ。普通の企業のWebサイトと比較すると、ほとんどの点で見劣りしてしまうのである。
公正を期すために言えば、ほとんどの企業は今まさに実験中であり、Second Life内に所有する彼らの島は、まだ萌芽期にある。だが、以下ではそれを承知のうえで、Second Life内で企業がなすべきことを提案しようと思う。
大手企業は、少なくとも営業時間中、Second Lifeの自社施設にリアル世界の人間を常駐させておくべきだ。Ciscoのトレーニング・センターを訪れた際に、フレンドリーなアバターが「ご用件は何でしょう?」と言って、トレーニングや求人、製品についての質問に答えてくれていたら、私は椅子から転げ落ちるほど驚き、そして大喜びしたことだろう。もちろん、そのためには相応のコストがかかってくる。リアルな人間を配置すれば、リアルな給料を支払わなければならなくなるからだ。
ただし、企業が提供する仮想体験の質を現在のWebサイトよりも大幅に向上させることができないのなら、Second Lifeにはむしろ参入しないほうがいいのかもしれない。現状のままであれば、私がSecond Lifeで知り合った狼のようなユーザーが、サンドボックスを利用しながらIBMのコンピュータへ窓越しに目を向けるかもしれないが、それを購入することなどおそらくないからだ。
IBM島は、IBMに興味を持つ人々が探し出したくなるような場所でなければならない。しかも、そこでは非常に洗練された仮想体験ができ、あたかもリアル世界の人間同士のような応対が受けられるようにする必要がある。
さて、私は再びSecond Lifeを訪れることになるのだろうか。おそらく、いつかはそうするだろう。だが、その前に、まずはたまっている原稿を片づけてしまわなければならない。
COLUMN 2
Second Lifeの潜在性──成熟期は5〜10年後
Ian Lamont/Computerworld米国版
筆者はSecond Lifeの住人になって1年経つが、その間、本文の執筆者であるゲーリー・アンテス(Gary Anthes)氏と同じような問題・懸念を抱いてきた。
だが、忘れてはならない点が1つある。それは、ユーザー・インタフェース(UI)がお粗末であろうと、Second Lifeを利用する個人や企業をいらだたせる無数の問題があろうと、われわれはまだ、この仮想世界が持つ潜在性の表層部分を体験しているにすぎないという事実だ。ここでは諸々の問題はひとまず置いておき、Second Lifeが持つ強みを以下に6つ挙げる。
- 現実世界の物体を3次元でシミュレートできる。
- 実験から巨大建造物の建設、製品シミュレーションに至るまで、サンドボックスを利用することにより、非現実的な構想も含めて、3Dモデルを構築できる。
- Second Lifeで体系化した活動を現実世界に反映できる。
- 地理的に分散している人々がリアルタイムで同じ空間を共有できる。
- ボディ・ランゲージと視覚的な刺激を伴う直接的なコミュニケーションが行える。
- ユーザーのプライバシーを守りつつ、実在する人物、または理想の人物像をアバターに投影することができる。
こうした機能を実現する技術は、多くの個人/組織で重宝されている。例えば、3Dモデリングは、建築/航空/自動車業界では不可欠な技術となっている。また軍隊では、1980年代から戦車搭乗員向け3Dシミュレータを利用しており、現在では、チームワークを駆使して特定ミッションをクリアする3Dゲーム「America's Army」を訓練および新兵採用に生かしている。
電話会議やWeb会議などは、今や完全に企業文化として定着した。さらに一歩踏み込んで、仮想世界で会議を行おうと考えても、決して荒唐無稽な話ではない。
実際、Second Lifeをビジネスに生かす試みはすでに始まっている。その多くは失敗に終わっているが、成功事例もいくつかあり、Second Life内で数人の起業家がビジネスで収益を上げている。また、すばらしい建造物を作成したり、大規模な組織がトレーニングなどで活用するケースも出てきている。
例えば米国Harvard大学は、実際に単位が取得できる講義を1年以上前からSecond Life内で行っている。講師のレベッカ・ネッソン(Rebecca Nesson)氏によると、仮想世界での授業はコミュニケーションの緊密さや出席率の高さ、特定のシミュレーション活動のしやすさなどで、旧来の通信教育とは比較にならないほどすぐれているという。
Harvard大学以外にも、100以上の大学/学校がSecond Lifeで講義を行っており、「Everquest」や「World of Warcraft」といったゲーム・プラットフォームを利用してマネジメント・スキルを教える教授もいる。
では、これからの数年間で仮想世界はどのように進化していくのだろうか。まず、新規参入をためらってしまうような失敗事例がさらに増加することは確実であろう。しかし、その一方で、開発ツールやインフラ、UIの改良によって、クライアント・ソフトウェアや接続環境に関するユーザーの不満は、少しずつ解消されていくはずだ。
また、より多くの人々が仮想世界を体験し、継続的に利用したいと思うようになる。これは単に、ゲームやSNSに慣れ親しんだ10代後半から20代前半のユーザーが増えるからというだけでなく、ハードウェアおよびソフトウェア技術が飛躍的な進化を遂げることで、仮想世界のグラフィックス性能が大幅に向上することになるからだ。
2012年の仮想世界では、PS3やXbox 360といった最新ゲーム機の映像をはるかにしのぐグラフィックスが堪能できるようになるだろう。そして2017年には、ほとんど写真のようなグラフィックスとなり、信じられないような世界が描かれることになるだろう。やがては、現実世界やインターネットよりも効率的に機能するツールやビジネス・モデル、実用化技術が仮想世界で生まれるようになるはずだ。
現段階でここまで言うのは飛躍しすぎと思われるかもしれない。だが、この数十年間にわたるソフトウェア/ハードウェア/ネットワークの進化過程を振り返ってみれば、最新テクノロジーの活用事例が初期段階ではほとんど顕在化していなかったことがわかるはずだ。仮想世界はまだ、技術的には幼児期の段階である。今後5年から10年の間に主要な技術として成熟期を迎えることになるだろう。


