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【インタビュー】
「すべてのSaaSは、やがて単体提供からスイート提供へと向かう」――ネットスイートのネルソンCEO

統合型SaaSの強みやクラウド・コンピューティングの可能性を語る

(2008年05月23日)

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ユーザーからの要望に応えて開発された「OneWorld」

──グローバル企業が各国に展開する支社のリアルタイム・ビジネス管理を支援する「NetSuite OneWorld」が発表された(関連記事)。この構想はかなり以前からあったものか。

Nelson氏:NetSuiteのシングル・インスタンス・アーキテクチャを、一企業が持つ複数の組織で活用していくという考え方は、当社の開発チームの間で何年も前から検討されてきた。そこでわれわれは、この構想の具現化に向けて、データ・モデルの再構築に着手し、リリースに至った。

 OneWorldの製品化は、われわれの顧客からのニーズの高まりによるものだ。企業規模がだんだん大きくなるにつれ、グローバル・レベルでリアルタイムな統合管理を可能にするようなシステムが必要だという声が多く上がり、それに応えていくことになったわけだ。

──OneWorldの発表会では、「今後、あらゆる規模の企業に、リアルタイム・ビジネス管理へのシフトを促していく」というアピールがあった。OneWorldは中堅企業がメイン・ターゲットとなっているが、システムのスケーラビリティは、NetSuite自体のそれも含め、どのぐらいまで対応できるのか。

Nelson氏:NetSuiteのスケーラビリティだが、何ユーザーまで対応可能かといった意味での制限は特にないと考えてほしい。だが、ERPの場合、そのユーザー企業固有の要件に応える機能の実装を追求する必要があり、その機能の数や“重さ”がスケーラビリティを決定づけることになる。

 現行バージョンに備わる機能群をもって考えると、中・大規模の販売会社、サービス提供会社、eコマース企業の要件には十分対応が可能だ。そして、標準のNetSuiteに加えてOneWorldを使ってもらうことで、これら以外のユーザー・セグメントにも対応できるようになる。OneWorldの登場以前は、例えば複数の支社のシステムの統合が必要な場合は、それを可能にする製品を提供していなかったので、NetSuiteが選ばれることはなかった。だが、今後はそうした状況も大きく変わっていくはずだ。

 もう1つポイントを挙げるなら、中堅企業向けで、複数の支社の統合を可能にする既存の製品は機能のレベルがあまり高くなかった。この事実もOneWorldが変えていくことになる。例えば、現在「J.D.Edwards」などを使っているユーザーは、OneWorldのデモンストレーションを見るなり、すぐに高い評価をしてくれると思う。

──OneWorldが導入されたNetSuiteのグローバルなシステムは、各国の支社/支店のビジネス管理にどのようなメリットをもたらすのか。

Nelson氏:OneWorldは、グローバル企業で利用する1つのアプリケーションにおいて、各国の支社が完結した1つの企業として機能することを前提に設計されている。例えば、あるグローバル企業の日本支社は、階層的に見れば、本社という上位の階層があるが、この日本支社のマネジャーは、日本支社がただ1つのエンティティとみなしてビジネス管理が行える。

 OneWorldを導入することで、例えば日本支社のスタッフが商品の販売状況を見る際には、消費税が付された状態でそれを確認することができる。同じタイミングで、ドイツ支社の場合は付加価値税(VAT)が付されている、といった具合だ。こうして、税制にしても、商慣習にしても、各支社がそれぞれのビジネス管理を完結した形で行えるようになっている。あと、日本には、手形という独特の決済の仕組みがあるが、OneWorldの日本版では、それにも対応していく計画だ。

「SaaSは、クラウド・コンピューティングのサブセットである」

──発表会では、クラウド・コンピューティングへの言及もあった。注目のキーワードとなっているが、あなたが考えるクラウドとはどのようなモデルなのか。

Nelson氏:クラウド・コンピューティングは、昔、AT&Tが使っていたクラウド・テレフォニーという言葉から来ているのだと思う。電話機をプラグインすれば、すぐに電話をかけられるようになる状態を指していた言葉で、それを可能にする機能はすべてクラウドの中にあるという意味だ。クラウド・コンピューティングは、その進化版と考えてよいだろう。クラウドの中にある機能を使い、今度は電話ではなくコンピュータをつなぐというイメージだ。

 クラウド・コンピューティング・モデルにおいて、デバイスをプラグインさえすれば、多種多様なサービスを享受できるようになる。例えば、ゲームで世界各国のプレーヤーと対戦したり、NetSuiteのような業務アプリケーションをただちに自社で利用できたり、あるいはeBayや楽天のオークションで気に入った商品を落札したりといったことが簡単に行える。どれも今、われわれがすでに経験していることだ。

 われわれが注力するSaaSは、クラウドから享受できるサービスの1形態だと考えている。クラウドから業務アプリケーションとビジネス・サービスを使えるようにするものだ。クラウド・コンピューティングという大きな概念があり、そのサブセットの1つがSaaSということになる。

──NetSuiteやSalesforce.comが提供するSaaSモデルのERPやCRM、それからGoogleの「Gmail」など、クラウド・モデルで提供されるサービスが多くの企業で導入され始めている。一方、業務アプリケーションやデータを外部に委ねることに抵抗を感じている企業も、特に日本企業の場合少なくない。SaaSやクラウドが本格的に普及していくためには、そうした心理的な障壁も取り払っていく必要があるが、“保守派”のマインドを変えることが可能なのか。

Nelson氏:逆に言うと、米国のビジネス・シーンでは考えられないような動きが日本で起きている。日本の携帯電話の高機能化と、ユーザーの活用ぶりに驚いている。携帯電話を使って支払いをすることが普通に行われているようだが、米国ではまずやらない。どの国にも保守的な考え方を持つ層は一定数存在する。もしかしたら、SaaSのUIを携帯電話に入れたら、日本の保守的なユーザーも違和感なく使ってもらえるのかもしれないが。

 さておき、心理的な障壁の問題は当然、きちんと考えなくてはならない。ただ、SaaSやクラウド・コンピューティングのような動きを後押ししてくれるのは若い世代が中心だ。ネットに親しみ、クラウド・コンピューティングを使って育ってきた世代が学校を出て就職すると、これまで使っていたコンシューマー向けのアプリケーションだけでなく、業務アプリケーションも同じように使いたいと思うようになるのではないだろうか。

 一方、年配の世代には、SaaSを使うことによって、いかに業務効率が高まり、コストが削減できるのかというメリットを説いていきたい。コストは非常に重要な要素だ。往々にして、金銭的効果が明らかであれば、心理的な障壁、懸念などは克服されるからだ。


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