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【解説】
失敗しないSaaS運用の極意――カギを握るのは「SLA」

新時代アプリケーションの運用管理を学ぶ

(2008年07月17日)

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Side Story
先進SaaSユーザー企業に学ぶ、SLAのかしこい交わし方

Juan Carlos Perez/IDG News Serviceマイアミ支局

医療スタッフの派遣業務を手がける米国The Schumacher Group(TSG)は、適切なSLA(Service Level Agreement)の下、2年前にホステッド・アプリケーションを導入した。SaaS(Software as a Service)の導入に消極的な企業が多いなか、同社はホステッド・アプリケーションを積極的に活用している。その背景には、各SaaSプロバイダーと満足のいくSLAを締結しているという自信があるようだ。

Point 1
最悪の事態を想定してSLAの内容を決める

 「SaaSを導入したのは、IT部門が抱えていたソフトウェアのメンテナンス/サポートにかかる負担を軽減し、より生産性の高い開発業務に集中できるようにするためだった。SLAの作成にはかなり手間を要したが、契約したSaaSプロバイダーとともに取り組んだ結果には非常に満足している」――こう語るのは、TSGでCIOを務めるダグラス・メネフィー(Douglas Menefee)氏である。

 同氏によると、TSGが利用しているSaaSプロバイダーは大量のデータベースとネットワーク管理アプリケーションを所有し、十分な帯域幅と冗長性を備えているという。「彼らに保守管理業務を任せることで、われわれは提供されるアプリケーションやプラットフォームを自社のビジネス環境でどう活用すべきかに集中できる」(Menefee氏)

 2年半ほど前、Menefee氏はSaaSを手がける米国Salesforce.comや米国PeopleSoft(現米国Oracle)、米国Peake SoftwareらとSLAを交わしたという。

 「契約を交わす際、SaaSプロバイダーに要求したのは、主にアップタイム保証、停電時の障害復旧といったビジネス・コンティニュイティと、システム内のデータ保護。それに顧客サポートのレスポンス・タイムだった」(Menefee氏)

 同時にTSGは医療サービス企業という立場上、データの保護/保管に関する国の規制を順守しなければならない。そのため、SaaSプロバイダー各社と取り交わすSLAにも、そうした規制の順守が含まれる。例えば同氏が米国Salesforce.comと交わしているSLAの75%は、Salesforce.com側が確約する標準的な内容のもので、残り25%はTSG側が提示したカスタマイズ要件に関するものだという。

 SaaSスイートには、多くの“可動部分”がある。そのため、既存のパッケージ・ソフトと比較すると、パフォーマンスが不安定になる要素は多い。この課題を解消するため、Menefee氏はトラブル・シューティングを担当する専門チームの設置を推奨している。

 例えば、ホステッド・アプリケーションが、SaaSプロバイダーとは関係のない原因で誤作動したとしよう。原因はユーザー企業のPCにあるかもしれないし、その企業のネットワークにあるかもしれない。あるいはインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)のトラブルか、インターネットのインフラ自体の可能性もある。これらが原因であれば、SaaSプロバイダーはお手上げである。このような事態を想定し、Menefee氏は次のような対応をすべきだとアドバイスする。

 「問題の原因がどこにあるのかを明確に知るため、SaaSプロバイダーにサービスの提供状況を定期的に報告させること。同時に、独自のモニタリング・プロセスを設置することも重要だ。また、万が一に備え、事業の継続性が失われた際のアクション・プラン(行動計画)を立てておく必要がある」

 幸いなことにTSGは、ホステッド・アプリケーションのパフォーマンスや可用性に関する深刻な問題に直面したことはなく、むしろメリットを感じることのほうが多いという。「ホステッド・アプリケーションのパフォーマンスとアップタイムは、社内ソリューションのそれをはるかに上回っている」(Menefee氏)

 それでもMenefee氏は、「SaaSにはSLAが必要不可欠だ」と主張する。TSGが利用しているホステッド・アプリケーションは、緊急医療スタッフや医療機関に向けて管理サービスを提供するという、同社の基幹業務を担っているからである。

   
Point 2
ホステッド・アプリと自社運用アプリを見極める

 当然のことながら、SaaS導入を検討する企業は、利用したいソフトウェアを審査する必要がある。

 TSGが利用しているSalesforce.comのSaaSスイート「Unlimited Edition」は、Peake Softwareの「Tangier」や、Oracleの「PeopleSoft」などのホステッド・アプリケーションとも統合されている。そしてデータ入力スタッフから上級管理者に至る約250人の社員が、それぞれの用途に必要な業務機能を利用している。

 TSGには、SaaSが利用可能であっても、あえて自社で運用管理しているアプリケーションが複数ある。米国GE Healthcareが提供する請求書発行アプリケーションの「Centricity Business」がその1つだ。

 同アプリケーションを自社で運用している理由について、Menefee氏は「Centricity Businessがその他のアプリケーションと密接に統合されていること、そして、同アプリケーションを購入した当時、GE Healthcareが将来的にホステッド・サービスを提供することを視野に入れていたことに私が気づかなかったからだ」と語る。

 同様に、TSGでは米国Hyland Softwareの文書管理ソフトウェア「OnBase」も社内で運用している。同ソフトウェアの場合、容量の大きい画像をやり取りすることから、社内サーバで運用しなければ、帯域幅の制約を受けるおそれがあるからだという。

 TSGはこれらに加えて、米国Microsoftのサーバ・ソフトウェア群も社内で運用している。「Exchange Server」は、Microsoftのパートナー企業からホステッド・サービスとして提供されているが、TSGはExchange Serverを自社で運用している。

 これは、Exchange Serverのホステッド・サービスが提供される前から同ソフトを自社運用していたため、ホステッド版Exchange Serverへの切り替えは、かえってコスト高になると判断したためだ。

 Menefee氏によると、TSGが要求する保証、法令順守、監査といった各種項目に応じられないSaaSプロバイダーとは一切契約を交わさない方針だという。

 「SaaSプロバイダーとの交渉はタフな作業だが、最終的にはTSG側の要求をすべて網羅したSLAを交わしている。確かにホステッド環境には不便な部分もある。だが、適切なSLAを交わすことで、結果的にはメリットのほうが大きくなると考えている」

米国The Schumacher Group(TSG)のWebサイト

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