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SaaS契約に潜む「10の陥穽」──“サービスとしてのソフトウェア”の隠れたコストにご注意!

(2006年07月19日)

 ソフトウェアのインストールやサポートにあまり労力や経費を割きたくないITエグゼクティブにとって、「サービスとしてのソフトウェア(SaaS)」は、当然のことながら経済効率の高いオプションでなければ意味がない。もちろん、エンドユーザーがブラウザからアクセスできるWebベースのソフトウェア・サービスを導入するということは、IT部門にとって、サーバの追加や増強、データセンターの設置スペースの消費といったコスト負担を避けることができる、きわめて経済的な選択である。また、ソフトウェアは管理サービス・プロバイダーによってサポートされるため、IT部門のスタッフをヘルプデスク関連の仕事に振り向ける必要もない。

 では、SaaSは自前でソフトウェアをインストールするよりは絶対に経済的なのであろうか。ユーザー企業の期待の高さとは裏腹に、その問いかけには否定的な見解を示す専門家が少なくない。

 例えば、ガートナーのアナリスト、ロブ・デシスト氏は、「SaaS契約が文句なしに経済的な選択だと思っているのであれば、見方を変えるべきだ」と警告する。同氏によれば、「SaaSを契約した企業は、むしろあらゆる付加的な支出を覚悟する必要がある」というのである。ちなみに、そうした支出としては、セットアップ・コスト、トレーニング料、ストレージを追加するためのコスト、他のアプリケーションとの統合化コストなどがあるという。

 以下、企業がSaaS契約を結ぶときに最も注意が必要な点を「10の落とし穴」としてまとめた。

【1】 「合意しました」って、何を?

 SaaSプロバイダーは、一般的に、顧客に対して「合意」ボタンのついた電子契約通知書を送ってくる。内容に間違いがなければ、そのボタンをクリックせよ、というわけだ。それを見たユーザー側は、大抵の場合、「契約条項をオンラインで詳しく読むことなく、そのまま合意ボタンをクリックしてしまう」(コンサルティング会社、シカラ&アソシエイツLLCのCEO、パット・シカラ氏)ものだ。

 しかしながら、IT部門の組織統治が貧弱であったり、一貫したWebライセンシング戦略を持っていなかったりする場合、ビジネス・リーダーが契約内容をよく理解しないままソフトウェア関連の契約に合意してしまうことには、大きなリスクが伴う。「ビジネス・サイドの人間が契約に関して判断を下すことが多いが、彼らの多くは契約条項に潜む問題を正しく理解していない」(ガートナーのデシスト氏)からである。

 例えば、ほとんどのビジネス・リーダーは、プロバイダーのデータセンターが適切なセキュリティ認定を受けた人々によって管理されているか、あるいはプロバイダーがSAS 70監査基準に適合しているかといったことについては、的確に質問できるほど十分な知識を備えていないのだ。

【2】 安易な分割払い契約

 ユーザー企業にとって、SaaS契約の魅力の1つは、サービスの利用開始時に巨額な先行投資を必要としないことだろう。しかしながら、ティアワン・リサーチの上級副社長、マイケル・マンコースキー氏は、「月ベースあるいは四半期ベースでサービス料を支払えばよいというのは確かにメリットだ。だが、さらに、そのSaaS契約を一括年払いにすれば、5パーセントから15パーセントほどもコストがセーブできることまで認識しているユーザー企業は少ない」と、注意を促す。

 また、同氏は、「サービス契約時には、ソフトウェアのロールアウト計画を書面で交わし、プロバイダーのロールアウト・キャパシティを確認する必要がある」とも指摘する。「そのプロバイダーは毎月、ユーザーを100人追加できるか」「毎週だったらどうか」といったことを確認するわけだ。

【3】 サービス品質保証

 マンコースキー氏は、「(プロバイダーの応答時間などに関する)サービス品質保証(SLA)は、SaaS契約の重要なコンポーネントだ」と強調する。しかしながら、なかには契約中にSLAを含めるプロバイダーもいるが、ほとんどのプロバイダーは、SLAを締結する場合には追加料金を要求するか、SLAをまったく提供しないかのどちらかであるというのが現実だ。こうしたことから、同氏は、「もし、ビジネス・クリティカルなアプリケーションで、99.999パーセントのアップタイムが不可欠であるなら、SaaSプロバイダーと取り交わす契約書の中に、必ずその旨を明記するようにしなければならない」と念を押す。

 一方、コンサルティング会社、シンクストラテジーズのマネジング・ディレクター、ジェフ・カプラン氏は、「契約には、サービス品質が合意レベルに達しなかったときのペナルティを規定しておくべきだ」と助言する。

【4】 パフォーマンス・レベル

 カプラン氏は、「顧客はSaaSプロバイダーに対して、ソフトウェアのアップタイムと可用性レベルを書面で明確に告知しておくべきだ。また、契約時には、過去のパフォーマンス・レベルに関する記録をプロバイダーに開示させるようにするとよいだろう」とアドバイスする。そのほか、向こう3カ月から12カ月間の事業計画や投資計画、サービス増強計画などについてプロバイダーに質問するのも、賢明な方法だと、同氏は言う。

 一方、マンコースキー氏は、「サービスの中断があった場合に、プロバイダーはどのように補償するのか、あるいは問題解決までにどの程度の時間がかかるのかといった点について確認しておく」のも、顧客にとっては大事なことだという。

【5】 アップタイムの定義

 SaaS契約をする顧客は、システムのアップタイムについても慎重に定義する必要がある、とデシスト氏は言う。現在、ほとんどのSaaS契約が、「99.5パーセントのアップタイムが実現できなければ月額料金の一部を返金する」という内容になっている。「しかし、それはどういう意味だろう」というところに、同氏はこだわるのだ。「計画したアップタイムの99.5パーセントは保証するという意味か。それともプロバイダーは月8時間、必ず計画的にダウンするという意味か。であるなら、いつダウンするのか」──それをきちんと把握(定義)しておく必要があるというわけである。

【6】 追加コスト

 SaaS契約では、隠れた支出を徹底的にあぶり出し、事前に把握しておく必要がある。というのも、「プロバイダーはときどき、ソフトウェアの構成やデータベースの実装、あるいはワークフローのプロセスを変更することがある」(デシスト氏)からだ。その場合、ソフトウェアの開発/テストに要する経費として、ユーザー1人当たり18ドルから25ドルの追加料金が請求されることもあるという。また、ハンドヘルドやその他のモバイル・デバイスのサポートを追加する場合は、「追加料金は、ユーザー1人当たり月額45ドルにも達することがある」と同氏。

 プロバイダーはまた、ユーザー1人当たりのストレージ量にあらかじめ制限を設けているため、それをオーバーした分については追加料金が発生することになる。「SaaSの魅力は、何と言っても低コストであることだ。それだけに、基本料金には何が含まれているのか、追加料金はいかほどになるのかといったことについて、冷静かつ詳細に分析する必要がある」と、法律事務所、スコット&コットのマネジング・パートナー、ロブ・スコット氏は忠告する。

 一方、マンコースキー氏は、「顧客は、トレーニング・コストがサービス料の中に含まれるのか、それともトレーニングやサポートは別料金になるのかについても、契約時に確認しておく必要がある」と指摘する。

【7】 統合化の主体

 SaaSソフトウェアを他のカスタム・システムと統合する必要がある場合、「統合化の作業とそれに要するコストをだれが負担するのかを、契約時に取り決めておかなければならない」と、スコット氏は注意を促す。一方、カプラン氏によると、統合化の作業はSaaSプロバイダーに依頼するよりも、サード・パーティに依頼したほうが経済的に実現できるケースが多いという。

【8】 データに対する権利

 SaaS契約を結ぶ前に、「プロプライエタリなデータをどこに格納し、そのデータに対してアクセスできる権利をどう設定するかについても確認しておく必要がある」と、シカラ氏は忠告する。また、マンコースキー氏は、「顧客は、データがどこに、どのような形で存在しているかについて知っておくべきだ」と、さらにカプラン氏は、「データの保護や災害復旧(ディザスタ・リカバリ)がどのように保証されるのかについて書面で確認しておくことが大切だ」と、アドバイスする。そのほか、顧客側でデータを自前のシステムにバックアップすることが可能かどうかについても確認しておく必要がある。

【9】 交渉の余地

 「SaaS契約に関する最大の誤解は、それが、交渉する余地のないシンプルな“クリックラップ”契約だ、と見られていることだ」と、シカラ氏はユーザー企業の思い込みに対して警鐘を鳴らす。顧客は画面上で総体的なコスト・セーブが可能だと信じてしまい、それ以上は交渉しないのだが、「契約料はすぐに膨らんでいく」(同氏)ものなのだ。プロバイダーは基本的に保守およびサポート料を契約にバンドルしているため、そこを突いて、顧客が値引き交渉を行ってみるのも無駄ではない。

 また、他のタイプのソフトウェア契約と同様、大口顧客にはボリューム・ディスカウントも用意されているはずだ。「ユーザーが50人程度であれば、それほど大きなディスカウントは期待できないだろうが、ユーザーが5,000人もいるような契約であれば、プロバイダーもディスカウントに前向きになるだろう」と、マンコースキー氏は積極的に交渉を行っていくことを勧める。

【10】 途中解約

 ある組織がCRMサービスを1,000ユーザーで1年契約したとしよう。しかし、9カ月後に解約することになった。その場合、「プロバイダーは、顧客にデータを返す前に解約手数料を請求してくるだろう」と、デシスト氏は警告を発する。実際、あるプロバイダーは、顧客が6カ月で解約を申し出たとき、違約金として契約総額の10パーセントに当たる金額を請求してきたという。

 次に、200ユーザーでサービス契約を結んだが、6カ月後、100ユーザーにスケール・ダウンした企業があったとしよう。この場合も、「プロバイダーは200ユーザーの料金のまま減額しないか、それが通らない場合は、何らかの違約金を請求してくることになるだろう」と、デシスト氏は見る。いずれにしても、SaaSは、いわゆるオンデマンド・ソフトウェア・モデルとはまったく異なる契約であることを、顧客である企業ユーザーはきっちりと認識しなければならないのである。

(トーマス・ホフマン/Computerworld 米国版)




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