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[世界]
アウトソーシングの未来予想図──7つのキーワードから考察

(2006年12月26日)

 2006年はアウトソーシングの世界にとって「変化」と「受容」の年だった──。つい一昔前までは、アウトソーシングを公言することさえはばかられる風潮もあったが、今やそうした雰囲気はないと言っても過言ではない。アウトソーシングが頭角を現した背景には何があるのか。ここではアウトソーシングを取り巻く現状と、将来直面するであろう課題について、7つのキーワードから考察してみよう。

【1】セキュリティ

 アウトソーシングはセキュリティ問題を抜きには語れない。特にアウトソーシングがオフショア契約である場合はなおさらだ。アウトソーシングの受け皿であるインドでは今年、オフショア・ビジネスを展開する際に発注側のセキュリティを保証するための本格的な取り組みを開始した。

 インドの全国ソフトウェア・サービス協会は、インド国内のITサービス、コールセンター、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)業界が保有するデータのセキュリティ対策が万全であるかどうかを監視する組織を発足させた。

 発足のきっかけは、「インドのアウトソーシング企業が処理したデータを、インドのコールセンター職員が盗難・転売した」という疑惑を、米国と英国の顧客企業に持たれたことだった。

 こうしたセキュリティに関する問題は、インドだけで起こっているわけではない。米国の政府機関が今年初めに行った調査では、米国内においてもテロ対策を目的としたデータ収集に携わっている民間のアウトソーシング企業とその従業員が、「情報の機密性を守る」という点で、必ずしも完全ではないという結果が明らかになった。

【2】中国の台頭

12億人市場と言われる中国。今後もソフトウェア・アウトソーシング市場は高い成長率を見せるだろう

 中国市場では、IBMやユニシスといった巨大ITベンダーが、年間数十億ドル単位のアウトソーシング資金を投じており、タタ、インフォシス、ウィプロなどインド最大級のアウトソーシング企業も地盤を固めつつある。

 中国の調査会社であるアナリシス・インターナショナルは今年、2006年第1四半期の国内ソフトウェア・アウトソーシング市場が、前年同期比約44%増の3億2,300万ドルに拡大したと報告した。

 しかし、中国でも顧客企業の情報を、いかにセキュアに扱うかが大きな課題となっている。

【3】インド市場の成長とアキレス腱

 “オフショアリング/アウトソーシング・マシン”と化したインドの勢いは、だれも止めることができない。

 インドのアウトソーシング市場も中国と同様に依然として拡大を続けている。インドのソフトウェアおよびサービス企業を統括する非営利団体のNASSCOMによると、2007年度の国内BPO市場は、前年度の63億ドルから35〜40%も増加し、80億〜85億ドルに拡大する見通しという。

インドにおけるIT産業の現状。アウトソーシングが3分の1を占める。出典:NASSOM http://www.nasscom.in/

 また、インド内外のITセクター全体の売上高は、今年度末までに推定360億〜380億ドルに達するもようだ。ちなみに、インフォシスは今月、インド企業として初めてナスダック100種指数に組み入れられた。

 しかし、インドのアウトソーシング業界には課題もある。

 頭痛のタネは国内の暴動や混乱だ。アウトソーシング拠点が置かれる地区は今年、内紛による複数の爆破事件やストライキが発生し、サイバーテロにも見舞われた。

 また、人材不足も深刻だ。10億人以上の人口を擁するインドでもITの専門知識を持つ人材はまだ少ない。

 さらに、アウトソーシング産業が世界最大の規模に急拡大したこともあって、海外のクラッカーからも標的にされるケースが多くなっているようだ。

【4】SMB需要

 今年のアウトソーシングの大きなトレンドは、中小規模企業(SMB)がアウトソーシングを事業運営の手段として真剣に考え始めたことである。

 米国ガートナーのリサーチ・ディレクター、ロバート・ブラウン氏は、米国内で起業された企業の約90%がSMBであることを明らかにしたうえで、SMBがアウトソーシングを利用するメリットを以下のように解説する。

 「中核業務ではないIT業務を外部のサービス・プロバイダーに委託すれば、大企業と同じメリットを享受できる」

 現在のところ、505億ドル規模と言われるBPO市場に、従業員数100人〜499人のSMBが占める割合は7.8%にすぎない。

 ブラウン氏は、今後SMBが占める割合は増加を続け、市場規模が788億ドルと見込まれる2009年には、SMBの占める割合は8%を超えると予測している。

【5】アウトソーシング中止の弊害

 企業がアウトソーシングを中止する際のマイナス面は、単に数字だけでは計れない。その理由がたとえ「自社で行うため」であれ、「契約見直しのため」であれ、周囲にネガティブな印象を与えることが多い。

 会計監査法人のデロイト・トウシュ・トーマツが昨年調査したところによると、米国内の大手企業25社のうち、約75%近くがこれまでに携わった大型アウトソーシング・プロジェクトに“苦い経験”を持っているという。

 この結果を見ると、現在も、多くの大型契約が締結され続けていることが不思議なくらいである。

【6】マネージド・サービス

 IBMなどが積極的にビジネスを展開しているマネージド・サービス分野のアウトソーシングは今年、飛躍的に成長した。

 今年6億3,000万ドルを超える規模になると予測されている同市場は、今後も成長が見込まれている。

 しかし、急速に規模が拡大することで、専門家は新たな課題が出ていると指摘する。

 ある専門家は、「今後サービスが多様化するにつれ、マネージド・サービスを利用する企業は、そのサービスによって得られるメリットや契約内容を今まで以上に慎重に検討する必要がある」と、アウトソーシングを利用する企業側にも努力が必要になるとしている。

【7】H-1Bビザ

 企業がスポンサーとなって米国籍を持たない労働者の国内就労を許可するH-1Bビザの発給枠は、政治力学に左右されやすい。

 米国内でのアウトソーシングを考えた場合、H-1Bビザの発給枠の規定は、アウトソーシング企業にとって死活問題だ。

 今年初めには、年内にH-1Bビザの発給枠が拡大されると見られていたが、実現することはなかった。

 H-1Bビザの発給枠拡大に積極的な姿勢を見せる民主党は、来年早々にも発給枠拡大を再度議会に提案すると見られている。しかし、ほとんどの専門家は、H-1Bビザの発給枠は来年以降、大幅に縮小すると予想している。

(マイケル・クーニー/Network World 米国版)




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