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ROI(投資利益率)で決める「SaaSか? 自社運用か?」

フォレスターの「TEI」メトリクスによって算出したROIを基に比較

(2007年04月24日)

ユーザー規模別にSaaSと
自社運用のROIを比較する

 前述した4つの項目の特徴を踏まえ、フォレスターでは、企業に対する質問、ブリーフィング、ハンズオンのコンサルティング業務を基に、ユーザーが50人、100人、250人、500人の企業モデルを設定して、TEIのシナリオを作成した。

 なお、TEIにおける評価項目においては、コストだけでなく、メリットについては割合、リスクと柔軟性については調整要因に対しても仮定を設けた。加えた仮定は、全従業員に占めるユーザー比率、従業員当たりの利益、利益に対するオペレーション・コストの比率、オペレーション・コスト、マージン、純利益、および正味現在価値(NPV)に対する利率などである。

 ちなみに、フォレスターはソフトウェアの選択から導入、運用、保守、撤去/バージョンアップまでのソフトウェア・ライフサイクルを10年間と仮定し、10年間にわたってTEIを評価することを勧めている(注1)。なお、前述したように、自社運用においては導入してから8年目に、初年度の導入コストの65%に相当するバージョンアップ・コストが発生する。評価の詳細については、下のコラムを参照されたい。

 以下、それぞれのシナリオを紹介しよう。

注1:他の資本財と同様、エンタープライズ・ソフトウェアにもライフサイクルが存在する。それゆえ、ソフトウェアの選択から撤去までの各ステップにおけるライセンスに関する要件とその影響を理解することが重要である

シナリオ(1)

従業員数100〜249人/ユーザー数50人の企業

 一般に、従業員数が100〜249人、ユーザー数が50人規模の企業は、会計パッケージやポイント・ソリューションよりもっと高度なソフトウェアを求めているものだ。また、事業を拡大し急成長を遂げている企業が多いため、CRMを必要としてもいる。

 こうした成長段階にある企業においては、ソフトウェアの初期導入コストとそれに関連するITインフラの構築資金の調達コストを、SaaSを利用することによって繰り延べることができる(注2)。

 その結果、ユーザー数50人規模の企業においては、10年間というアプリケーション・ライフサイクルを通じて、自社運用よりもSaaSモデルのほうがすぐれたTEIを提供するし、TCOも抑えられる(図2)。

図2:従業員数100〜249人/ユーザー数50人の企業規模での自社運用とSaaSの比較
*資料:米国フォレスター・リサーチ

注2:フォレスターは、ほかにもコストを繰り延べるための手法を確認している

シナリオ(2)

従業員数250〜499人/ユーザー数100人の企業

 従業員数が250〜499人、ユーザー数が100人規模の企業は、買収によって地域を越えた拡大を続けているため、データ統合/ITインフラ/配備コストの上昇を最小限に抑えることを最優先課題としている。同時に、業種固有の機能を用意しておくこと、統合作業とカスタマイズをオンサイトで実施する際に自社でコントロールできるようにしておくことも重要である。

 また、この規模の企業における業務アプリケーションのライフサイクルは、通常10〜15年である。だが、これまで業務アプリケーションの統合とカスタマイズに多大な苦労を強いられてきたことから、この規模の企業はそのバージョンアップを延期する傾向が強い。

 こうした背景により、ユーザー数100人の規模の企業では、一般に7年目の半ばに、自社運用のTEIがSaaSのTEIに迫る(図3)。なお、IT/IS部門がカスタム開発を重視している場合は、自社開発型が選ばれることが多い。

図3:従業員数250〜499人/ユーザー数100人の企業規模での自社運用とSaaSの比較
*資料:米国フォレスター・リサーチ

シナリオ(3)

従業員数500〜999人/ユーザー数250人の企業

 従業員数が500〜999人、ユーザー数250人規模の企業においては、統合に要するコストの多額さ、導入の複雑さ、プロジェクトに伴うリスクの大きさ、バージョンアップ・サイクルの短さ、それに永久ライセンス方式によるコスト、継続的にかかるメンテナンス・コストの負担などを考慮しても、自社運用のほうにメリットがあると、フォレスターでは判断している。

 TEIの分析結果を見ると、導入6年目の終わりには自社運用のTEIがSaaSのそれを上回り、7年目の終わりにはTCOでも逆転現象が見られる(図4)。また、8年目にバージョンアップを行ったとしても、長期的なTEIと累積コストでは、自社運用のほうが有利だ。

図4:従業員数500〜999人/ユーザー数250人の企業規模での自社運用とSaaSの比較
*資料:米国フォレスター・リサーチ

 ただし、分散している複数の拠点にソフトウェアを配布する場合や短期間のうちに配布しておかなければならない場合には、選択肢としてSaaSが選ばれることが多い。そうした多くの企業の多くでは、まずSaaSがもたらすメリットを享受したうえで、自社運用に切り替えている。

シナリオ(4)

従業員数2,500人/ユーザー数500人の企業

 従業員数が2,500人、ユーザー数が500人規模の企業については、フォレスターはTEIだけでなくTCOに関しても自社運用がSaaSをしのぐと考えている。

 自社運用では8年目にバージョンアップを行うことになるものの、6年目のTEIにおいてはSaaSよりも有利であり、7年目にはTCOにおいても有利になる(図5)。

図5:従業員数2,500人/ユーザー数500人の企業規模での自社運用とSaaSの比較
*資料:米国フォレスター・リサーチ

 したがって、シナリオ(4)もシナリオ(3)と同様に考えるとよい。つまり、分散している複数拠点にソフトウェアを配布する場合や短期間のうちに配布しなければならない場合には、SaaSを選択肢とし、SaaSのメリットを享受した後に、自社運用に切り替えるといった方法を選択すればよいわけだ。

最も注意が必要なのは
サイト当たりのユーザー数

 以上、ROIに着目して、SaaSを利用した場合と自社で運用した場合とではどちらが有利かを比較してみた。

 フォレスターの分析によると、ユーザー数が50人の企業と100人の企業ではSaaSのほうが、また250人の企業と500人の企業では自社運用のほうが有利であることが明らかになった。ただし、コスト、メリット、柔軟性、リスクの各項目においては、両者の優劣が逆転することもあるので注意が必要だ。

 なお、TCOおよびTEIの評価において正確性を期すためには、ユーザーの総数ではなくサイト当たりのユーザー数に基づいて数値を算出する必要がある。これは、本社や親会社などユーザー数の多い拠点では自社運用ソフトウェアを適用し、子会社などユーザー数が少ない拠点ではSaaSを適用するといった、ハイブリッド・モデルを採用する企業の場合には、特に気をつけなければならないことだ。

Reference
[レイ・ワンの原文]
http://www.forrester.com/raywang1/


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