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再び注目が集まるCDN(コンテンツ配信ネットワーク)

SaaS時代を迎え、存在感を強めるCDNプロバイダー

(2007年12月06日)

リッチ・メディアとWeb 2.0の興隆がCDNサービス利用拡大の要因に

 CDN市場の成長を牽引する最も顕著なトレンドとしては、ブロードバンドの普及とリッチ・メディア活用の急増が挙げられる。とりわけ音楽や映像といったリッチ・メディアの配信は、レイテンシ(遅延時間)の影響を受けやすいことから、CDNプロバイダーが提供するリーチ/キャッシング/レイテンシ削減技術の恩恵を大いに受けることとなっている。

 例えば、広告代理店の米国アンダバガートが制作したカリフォルニア州カーメル・バイザシーの観光案内サイトでは、観光名所の紹介ビデオが多数公開されているが、これらは米国バイタルストリームのCDNサービスを使って配信しているという。アンダバガートのアート・ディレクター、ジェフ・コンウェー氏は、「ビデオ・ストリーミングを多用したことで、かつて静的コンテンツばかりで無味乾燥だった行政サイトはリッチで見栄えのいいものに生まれ変わった。ダウンロードの速さに驚くユーザーも少なくない」と胸を張る。

 そのほか、米国の生体力学協会と分子生物学協会では、ナビサイトのCDNサービスを用いて、テレビ会議のストリーミングや学術文献のダウンロードなどの高速化を図っているという。

 ネトリのマーケティング/ビジネス開発担当シニア・バイスプレジデント、ウィリー・テハーダ氏は、「ビデオ・ストリーミングやFlashといったリッチ・メディアはコンテンツ配信の主流になりつつある。企業においても社員研修やCEO(最高経営責任者)のバーチャル・メッセージなど、さまざまな用途でリッチ・メディアが利用されるようになってきているが、それらはすべてCDN技術の助けを借りている」と強調する。

 CDN市場におけるもう1つの重要なトレンドは、「消費者向け技術の企業利用(Consumerization on IT)」の拡大である。米国フォレスター・リサーチのエンタープライズ・ネットワーキング担当シニア・アナリストのロバート・ホワイトリー氏は、「YouTubeを正式な研修ビデオのホスティングとして活用する企業がにわかに増えている。また、IBMはセカンドライフ内で20余りの土地を購入し、社員ミーティングを開催したり研修を行ったりしている」と語る。セカンドライフに参入する企業はじわじわと増えており、大手小売業のサーキット・シティやシアーズ、トヨタ、デル、アディダスなどの有名企業もセカンドライフ内にバーチャル店舗を構えるなど新たなマーケティング活動を繰り広げている。

 「セカンドライフは、企業にとって非常に安価なバイラル・マーケティング手法となりうる」(ホワイトリー氏)

 リッチ・メディアとWeb 2.0だけがCDN市場を牽引しているわけではない。ソフトウェアのダウンロードやアップデートの増加も、CDN技術への依存が高まる要因の1つになっている。ネトリのテハーダ氏は、「例えば、マカフィーやトレンドマイクロ、シマンテックなど、ウイルス発生時にセキュリティ・パッチを一斉に配布しなければならないセキュリティ・ベンダー各社にとって、CDNサービスはインフラの再構築に代わる選択肢になる」と指摘する。

写真1:米国空軍の技術アナリスト、デーブ・ウィリアムズ氏は、アカマイのCDNサービスを利用し、大容量画像のダウンロード時間の短縮を図っている

 今日では、すでに多くの企業や組織が、CDN技術を用いてデータのダウンロードやアプリケーション配信における信頼性、可用性、速度の向上を図っている。例えば、米国空軍では、アカマイのCDNサービスを利用して、1〜25GBの容量を持つ衛星画像と地図作成データを高速かつ確実にダウンロードできるシステムを構築している。同軍の技術アナリスト、デーブ・ウィリアムズ氏(写真1)は、「アカマイのCDNサービスを採用したことで、サーバのダウンロード失敗率を従来の10%前後から0.1%未満にまで抑えることができた。また、1GBのファイルのダウンロード時間も従来の2時間から25分へと大幅に短縮できた」と満足げに語る。

 一方、バイオ医薬品製造業向けアプリケーションの開発・提供を手がける米国ミリポアでeビジネス担当ディレクターを務めるジェフリー・オハロラン氏は、同社のB2B eコマース・アプリケーションは、ネトリの支援がなければ日本で稼働しなかったと語る。

 「日本では、多くの販売業者が今なおファクスを使って取引業務を行っている。われわれはそれを当社のeコマース・プラットフォームに切り替えてもらおうと考えたのだが、実際にデモを行ったところ、ファクスを使ったほうがオンラインで決済手続きを行うよりも早いことが判明した」(オハロラン氏)

 そこでオハロラン氏は、ネトリの独自プロトコルを利用して高速なWebアクセスを実現する「NetLightn
ing」サービスを契約。それにより、従来7秒以上かかっていたアプリケーションのページ・ロード時間を約1秒にまで短縮し、結果、日本での顧客獲得につながったとしている。

「品質」か「コスト」か白熱するプロバイダー各社の論争

 CDN市場では圧倒的なインフラを持つアカマイが長らく寡占的なシェアを握っている。同社は現在、世界70カ国660都市で2,800以上のサイトと1,000のネットワークを配備しており、CDN分野においては依然として広範な顧客リーチ力を誇る。

 しかしながら、市場は今なお拡大し続けており、さらにセグメント化が進んだことによって、CDNにフォーカスするプロバイダー各社の競争は一段と激しくなっている。例えばネトリは、TCPの代わりにアプリケーション・フレンドリーな独自のネットワーク・プロトコルを提供するなど、ADN分野に注力することで差別化を図っている。また、米国アトランタを本拠にISP事業を展開する米国インターナップ・ネットワーク・サービスも、独自のプロトコルを用いたインテリジェント・ルーティング技術によって高品質なコンテンツ配信を実現している。ちなみに同社は2006年にバイタルストリームを買収し、同社のCDN技術を自社サービスに追加したが、ネトリを買収したアカマイの顧客リーチには及んでいない。

 実際、CDN分野では、顧客リーチの重要性について白熱の議論が展開されている。米国の市場調査会社IDCのテレコム市場調査担当ディレクター、メラニー・ポウジー氏は、「世界中のISPがすべての地域でCDNサービスを提供することがはたして本当に必要なのかという議論は、ほとんど宗教論争と言えるもの」と指摘する。

 一方、バイタルストリームのCEO、フィリップ・カプラン氏は、アカマイの技術は1990年代半ばに設計されたもので、当初はバックボーン自体の混雑が心配された(光ファイバが普及したことで、懸念される事態には至らなかったが)ことを指摘したうえで、「当社がCDNを設計したのは2000〜2002年ごろ。独自の最適化技術を採用したことで、サービスを提供する地域ごとにインフラを構築しなくても、数多くのユーザーに良好なエクスペリエンスを提供できる」と強調する。

 しかし、アカマイは、幅広い顧客リーチを持つことは不可欠と反論する。「ユーザーがサービス・インフラから離れるほどエクスペリエンスが悪くなるようでは、配信遅延といったそもそもの問題に対応できるはずがない」と、テーラー氏は断言する。

 また同氏は、2007年1月に台湾南東沖でM6.0の地震が発生した際にも、アカマイがコンテンツを配信し続けることができたことを例に挙げて、「アカマイは、インターネット・トラフィックのボトルネックを自動的に検出し、それらを迂回ルーティングする仕組みを持っている」と強調する。

 「すべてはパフォーマンスとコストのバランスの問題」と指摘するのは、ガートナーの調査担当ディレクター、リディア・レオン氏だ。「できるだけユーザーに近づこうとすると、パフォーマンス面でメリットが得られる一方、コスト面でデメリットが生じる。要は、コストを下げることで発生するレイテンシをプロバイダーがどの程度許容するかということだ」(レオン氏)

COLUMN 1
アカマイ、ネトリを1億7,780万ドルで買収

レオン・アーランガー

 CDNは、公共のインターネット経由でコンテンツやアプリケーションを高速に配信する必要がある場合にとりわけ有効だ。しかし、企業WAN(Wide Area Network)の場合はどうだろうか。フォレスター・リサーチのエンタープライズ・ネットワーキング担当シニア・アナリストのロバート・ホワイトリー氏は、「CDN/ADNは、インターネットを業務用ネットワークとして利用するユーザー向けのサービスである。したがって、フレーム・リレーやMPLS(Multiprotocol Label Switching)、IPSecなどを用いるプライベート・ネットワークを最適化する場合は、アプライアンス/ソフトウェア・ベースのWAN高速化ソリューションを利用するのがよい」との見解を示している。

 実際、企業WANが抱える問題は、今日のインターネットに付随する問題とほとんど変わらない。むしろVoIPやビデオ・ストリーミングといったレイテンシに敏感なアプリケーションが増えたことで、それらがWANの限られた帯域幅を奪い合うようになり、問題はさらに深刻化している。IDCのテレコム市場調査担当ディレクター、メラニー・ポウジー氏は、「インターネットにおける輻輳の問題のように、企業WANでは稼働するアプリケーション間で帯域幅の争奪が行われている」と指摘する。

 リバーベッドテクノロジー、ブルーコートシステムズ、シスコシステムズ、ジュニパーネットワークス、パケッティア、シトリックス、エクスパンド・ネットワークスなど、WAN最適化アプライアンスの開発・提供を手がけるベンダーは、CDNとよく似た手法を用いながら、企業WAN経由のコンテンツおよびアプリケーション配信の高速化を支援している。その多くは、圧縮技術とバイト/オブジェクト・キャッシング技術によってWANパイプのトラフィック削減を図るというものだ。

 ほとんどのWAN最適化アプライアンスはQoS(サービス品質)機能を装備し、トラフィックの優先順位づけや冗長なデータの削除などを行うことが可能だ。また、TCPやHTTPなどの非効率なプロトコルを高速化してレイテンシを削減したり、独自のWAN最適化転送プロトコルを用いてTCPの非効率性を排除したりする機能を備えた製品もいくつか提供されている。

 例えば、リバーベッドとシスコのWAN高速化ソリューションは、インテリジェントなメッセージ抑制、データおよびメタデータのキャッシングと検証、メッセージ予測などの技術を用いて不必要なメッセージングの削減を促進しつつ、特定のアプリケーション・フローを高速化する機能を提供している。これにより、圧縮やフロー最適化だけでは最適化できないアプリケーション・プロトコルに関連したWANのパフォーマンスの問題に対処できるとしている。

 いずれにしろ、どのWAN最適化ソリューションを選ぶかは、高速化すべきアプリケーションの種類と、利用中のネットワーク・ベンダーに大きく依存することになる。


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