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【連載】
未来的テクノロジー・ベスト10

第9回 組み込みシステムで使用可能なメモリ容量を倍増するメモリ圧縮技術「CRAMES」

(2008年02月05日)

「Computerworld Horizon Awards」は、米国の研究機関やITベンダーのR&D部門などが、近い将来の実用化・製品化を目指して開発した最先端テクノロジーを読者に紹介すべく、2005年に創設されたものだ。本連載では、2007年度の“受賞作品”を一挙に紹介する。開発者たちのコメントから、イノベーション創出の最前線、そして企業コンピューティングの明日を感じ取っていただきたい。今回紹介するのは、組み込みシステムで使用可能なメモリ容量を倍増する、米国ノースウェスタン大学と米国NEC研究所のメモリ圧縮技術「CRAMES」だ。

Drew Robb
Computerworld米国版

組み込みシステムで使用可能なメモリ容量を倍増するメモリ圧縮技術
CRAMES
米国ノースウェスタン大学 http://www.northwestern.edu/
米国NEC研究所 http://www.nec-labs.com/

 モバイル・デバイスは、小型であるがゆえに搭載するメモリ容量が本質的に制限され、実行できるアプリケーションも制約される。

 「モバイル・デバイスは、小型化に加えて低消費電力化も求められる。そのため、メモリ容量は常に制限される」と、無線/モバイル関連のコンサルティング会社米国Farpoint Groupの社長で、Computerworld米国版のコラムニストを務めるクレイグ・マサイアス(Craig Mathias)氏は語る。「メモリ圧縮技術は、既存ストレージの利用効率を高め、メモリ容量を有効活用することに役立つ」(同氏)

 NECは2007年夏、携帯電話の「N904i」に搭載する「CRAMES(Compressed RAM for Embedded Systems)」という新しいメモリ圧縮技術を開発した(写真1)。CRAMESは、ソフトウェア的にデータ圧縮を実行することで、メモリの利用効率を倍以上に高めることが可能な技術である。加えて、低消費電力化を図り、パフォーマンス・ロスは2.7%に抑制している。

写真1:CRAMESを搭載するNEC製携帯電話「N904i」

 NECの研究部門である米国NEC研究所は、8年前にメモリ圧縮技術の研究開発を始めた。2004年には、研究所のコンサルタント、ハリス・レカツサス(Haris Lekatsas)氏と部門長のシュリマート・チャクラダール(Srimat Chakradhar)氏は、メモリ圧縮技術のOSへの統合を検討しだした。

 一方、CRAMES自体は、米国ノースウェスタン大学の大学院生、レイ・ヤン(Lei Yang)氏と、同氏の研究顧問である助教授のロバート P.ディック(Robert P. Dick)氏により開発された。「(CRAMESは)メモリの特定領域を透過的に圧縮/伸張して、組み込みアプリケーションのメモリ・フットプリントを劇的に縮小する技術だ」とDick氏は語る。「オンライン圧縮/伸張をすべてソフトウェア的に処理することで、ハードウェア・プラットフォームの再設計を回避できる」(同氏)

 Dick氏によると、さまざまな研究者がこれまでも圧縮ソフトウェアの利用を試みてきたが、圧縮ソフトは消費電力が高いうえに、パフォーマンスにも影響が出てくるため、モバイル・デバイスでの利用は避けられていた。ノースウェスタン大学の開発チームは、多くのメモリが必要となるアプリケーションにおいても、低消費電力での稼働を実現する研究開発を進めていた。

 開発チームは、圧縮されたメモリを管理するために、Linuxカーネルのスワッピング・メカニズムを用いて、圧縮すべき記憶領域を決定することにした。開発当初は、定評のあるLZO圧縮アルゴリズムを用いることで、パフォーマンス・ロスを10%程度に抑えることに成功した。しかし、より低いパフォーマンス・ロスを目指し、開発チームは「PBPM(Partial Based Partial Match)」と呼ばれる新たな圧縮アルゴリズムを開発した。

 さらに開発チームは、メモリ不足のときのみデータを圧縮する技術や、記憶領域の断片化を解消する新しいメモリ管理技術、必要に応じて消滅プロセスを削除可能にするLinuxカーネルの採用など、当初開発したCRAMESに対して段階的に改良を加えている。これらにより、消費電力の低減とパフォーマンス・ロスを2.7%へ抑制することに成功したという。

 Dick氏は、「組み込みシステムの設計者、特に携帯電話やPDAの設計者は、競争力を維持するために、より多くの機能をデバイスへ毎年搭載していく必要がある」と語る。「CRAMESにより、NECは、ハードウェアの設計サイクルに依存せず、より多くの機能をデバイスに搭載することができ、増大する新たなメモリ需要に対応することができる」(同氏)



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