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【インタビュー】
「目指すのは、日本社会に根づいた“情報インフラ企業”」――EMCの諸星社長

製品の単なる“日本語化”ではなく“日本化”を目指す

(2007年11月29日)

ユーザーが日々扱うデータはここ数年、爆発的な増大を続けており、ストレージ・システムにはデータ管理の新たなパラダイムが求められている。エンタープライズ・ストレージ市場を長年牽引してきたEMCの回答は、情報を適切に扱い、価値に変えるための「情報インフラストラクチャ」基盤の構築である。編集部は、今年7月にEMCジャパンの代表取締役社長に就任した諸星俊男氏にインタビューし、EMCがワールドワイドで掲げるビジョンと戦略、日本市場における課題、その解決に向けた日本法人の取り組みなどについて聞いた。

聞き手・構成 河原 潤
本誌編集長

──前職の富士通には31年間在籍され、要職を歴任されていました。EMCジャパンの社長就任を決断された“決め手”は何だったのでしょう。

諸星氏:富士通で働いていたときから、ある面ではコンペティターだったのですが、EMCのビジョンやストラテジーについてはすばらしいと思っていました。

 もともとEMCと富士通は、単なるコンペティターの関係ではありません。富士通の米国子会社でCEOに就いていたとき、EMCはUNIXサーバ事業でトップ5に入る顧客でした。私自身、EMCの本社には何度も訪れていていたので、この会社のことはよく知っていたのです。ですから、帰国後、いくつかのところからお話をいただいたとき、まずはこの会社に強い興味を持ちました。

 10年以上、米国で経営者をやってきた結果、自分のとったディシジョンがすぐに結果に表れるというこの国の企業経営スタイルにすっかりなじんでしまいました。自分のディシジョンでビジネスをもっと機敏に動かせることの喜びを知ったのです。日本の大きな組織ですと、なかなかそういうことは難しいですから。あとは、タイミングですね。

──就任されて2カ月が経過しました。EMCジャパンに実際に入られての印象はいかがでしょう。

諸星氏:現在、EMCグループは、米国本社が打ち出した、情報インフラストラクチャというビジョンと、それを実現するための戦略に沿って、ストレージ・システム・ベンダーからのトランスフォーメーション(転換)を図っています。EMC全体としてこの転換は着実に進んでいますが、残念ながら、日本法人においてはまだまだストレージ・システムが中心の会社です。特に、大企業向けのハイエンド・ストレージの販売が好調であったために、他の国よりトランスフォーメーションが遅れてしまったのだと思います。入社して最も感じたのはその点です。

 今後、EMCグループのビジョンと戦略をもっと取り入れて、情報インフラストラクチャ・ベンダーへのトランスフォーメーションを推進していくことが、私の大きな責務となります。このトランスフォーメーションは、将来における市場での差別化と、EMCジャパンという会社が情報インフラストラクチャ時代のリーディング・ベンダーとして活躍していくうえでの素地になります。

データの爆発的増加に対応するためストレージの最適化に注力

──ストレージ市場自体の成長性については、どのように見ていますか。

諸星氏:YouTubeのような動画共有サイトが世界中で人気を呼んでいることが象徴するように、データの量が爆発的に増え続けています。企業においては、保存しておくべき情報の量はものすごい勢いで増えていて、管理が追いつかない状態です。データ1TB当たりのストレージ・コストは下がり続けていますが、それ以上に情報保存のニーズ、デマンドが増しているのです。

 したがって、市場の成長性については今後も有望であると確信しています。市場調査会社が日本のIT市場全体の年成長率を1.5〜2%とし、ストレージに関しては6%。つまり全体平均の3〜4倍の成長率と予測していますが、私はそれ以上に伸びるのではないかと思っています。

──技術面ではどうでしょう。エンタープライズ・ストレージでは今後、どのような機能が重要になっていくと思いますか。

諸星氏:情報保存のニーズが急増しているといっても、単にストレージ容量をどんどん拡大して対応するのではなく、情報をいかに効率よく保存するかということに力点が置かれるようになってきています。データをストレージに保存した後、セキュリティなどの保護を行い、最適化する。現在、EMCはこのサイクルの中でも特に最適化に注力しており、データ・デデュープ(De-duplication:重複除外)技術を特徴としたバックアップ管理ソフト「EMC Avamar」を提供しています。

 データ・デデュープを簡単な例で説明しましょう。PowerPointで容量10MBのプレゼンテーション資料を作ったとします。その際に、バージョン1から10まで、10回更新されれば、これらすべてのバージョンを保存するためには100MBを要します。でも、実はバージョン1と10とで内容がそれほど変わってなく、8MBまではまったく変更されていなかったとします。そこで、8MBの部分は1つだけ保存して、2MBずつの更新部分を保存します。これを可能にするのがデータ・デデュープで、従来、100MB分の領域に保存していたのが28MBで済んでしまうという仕組みです。

──ストレージの最適化には仮想化技術の活用も欠かせないと思います。EMC子会社のヴイエムウェアはサーバ仮想化市場のリーダーですが、同社の技術はEMC製品にも価値をもたらすのでしょうか。

諸星氏:今はサーバ仮想化がこの分野の話題の中心で、ヴイエムウェアが大成長を遂げているわけですが、近い将来には、ストレージ仮想化にももっと注目が集まると見ています。サーバ仮想化とストレージの仮想化は似通った部分もありますので、ヴイエムウェアのすぐれた技術は、今後、EMCの製品にも積極的に取り入れて活用していくことを計画しています。

EMC全体ではハードの売上げ構成比率が50%を切る

──会長・社長兼CEOのジョー・トゥッチ氏が、ストレージ・ベンダーから情報インフラストラクチャの全域を扱う総合ベンダーへのシフトを宣言したのが2年前で、その後、買収戦略を加速させたことで、実際にそのようになりつつあります。現在のハードウェア、ソフトウェア、サービスの売上げ構成比率はどのようになっているのですか。

諸星氏:EMC全体では、ハードの比率がすでに50%を切りました。全世界の第2四半期のデータによると、ハードとソフトがほぼ同じで43%と41%、サービスが16%となっています。ソフトとサービスを足すと60%近くになり、これらが勢いよく伸びている状況です。

 日本での売上げ比率については数値を公表していませんが、まだ、ハードが半分ぐらいを占めています。ただそれでも、ソフトとサービスへのシフトは進んできています。

──実績豊富なハードウェアは、EMCジャパンにとって依然として重要な事業であると思います。最近では競合ベンダーの追い上げも激しくなっていますが、この分野では、どのような戦略をとっていくのですか。

諸星氏:ハイエンドの「Symmetrix」や小・中規模向けの「CLARiX」については、容量の増強や性能向上といった基本的な強化のほか、GUIや運用管理性といった、EMCストレージの強みをさらにアピールしていく方針です。

 それと、今後はIPストレージへのニーズがもっと高まると見ています。こちらの製品ラインにもより力を入れていくつもりです。

Profile
諸星俊男 Toshio Morohoshi
1953年生まれ。東京大学工学部物理工学科卒業。ペンシルバニア大学ウォートンビジネススクールAMP(Advanced Management Program)修了。1976年に富士通に入社し、1993年以降は経営幹部として、同社経営執行役プロダクトマーケティング本部長、米国富士通コンピュータ・システム社長兼CEOなど要職を歴任。ソフトウェア、ハードウェア、グローバル営業、サービスなどさまざまな業界での経験および国際経験を持つ。2007年7月1日にEMCジャパンの代表取締役社長に就任

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