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【解説】
グリーンITでIT部門がなすべきこと

「地球にやさしいIT」に向けた多角的なアプローチを実践する

(2008年02月29日)

グリーンITプロジェクトの進め方

 ここからは、データセンターにおける電力消費量の低減に的を絞ったユーザー企業のグリーンITプロジェクトとして、とるべき具体的なアクションについて見ていくことにする(図2)。


図2:グリーンITプロジェクトの進め方

プロジェクト・チームを結成する

 まず、グリーンITプロジェクトの管理と報告に責任を持つ組織作りを行う必要がある。ここで重要となるのは、企業全体の活動との整合性をとることだ。多くの企業が何らかの“エコ的な取り組み”をすでに行っているはずである。データセンターのグリーン化を進めるのであれば、IT部門内に閉じた取り組みではなく、そのような全社的な取り組みのうちの1つとして位置づけるべきだ。

 これは、企業イメージの向上がグリーンITの大きな目的の1つとなることを考えれば当然のことである。例えば、データセンターの消費電力量低減に苦慮しながら、その一方では配送車が長時間アイドリングを続けているといった状況では、せっかくの努力が報われないだけでなく、社員の意識向上も難しくなるし、企業イメージ向上という点でも逆効果になりかねないだろう。

 企業内にすでにCSRを担当する組織あるいは役員が存在するのであれば、グリーンITプロジェクトの推進組織もその管理下に置くべきだ。また、IT部門は、少なくとも総務(施設部門)、広報、購買、人事、財務・会計部門との密接な協業を行うべきだろう。具体的には、購入部門と協業し、機器購入の際によりグリーンITを指向したルール、例えば、初期価格だけではなくライフサイクルを通じた電気料金を考慮するといったルールを設けることなどだ。

 加えて、広報部門の関与も重要だ。もちろん、世の中の注目を浴びることばかりがグリーンITの目的ではない。だが、地球環境や社会に対して自社が正しいことを行っているのであれば、それを世間に対して適切にアピールすることで、企業イメージの向上に結び付けていくというのは、広報としての当然の活動と言える。
当たり前のこと/簡単なことから始める

 言うまでもないことではあるが、グリーンITに向けた第一歩として、余分な紙を使用しない/照明や空調を最低限に抑える/IT機器の電源オン・オフをこまめに行うといった、当たり前のこと、簡単なことは可能なかぎり行うべきだ。前述のケースと同様に、いかにサーバの消費電力量の低減に多大な努力を傾けていても、人がいないサーバ・ルームにこうこうと電灯がともっているような状況に問題があるのは自明だ。

 なお、未使用機器の電源をオフにするという行為は、オフィス内の機器であれば大きな問題にはならないことが多いが、データセンター内のIT機器の場合、慎重さが求められることがある。IT部門担当者にとってはこれも常識ではあるが注意が必要だ。特に、旧型の機器だと過剰な電源のオン・オフがハードウェア障害の原因につながるおそれがないとは言えない。本稿で一般的なガイドラインを示すことができないため、この点については、該当しそうな製品の開発元/販売元に問い合わせていただきたい。

定量的指標に基づいて管理する

 グリーンITへの取り組みをかけ声だけで終わらせないためには、定量的な指標による管理が重要だ。詳しくは後述するが、データセンターの電力削減には2つの方向からアプローチすることができる。それは、設備面からのアプローチと機器面からのアプローチだ。それぞれに対して適切な定量的指標を定め、適用すべきである。


図3: Green Gridが提唱するデータセンターの電力効率の指標

 まず、設備面について見ていく。ここで重要となる指標として、前述のGreen Gridが提唱する「PUE(Power Usage Effectiveness)」と「DCiE(Data Center infrastructure Efficiency)」がある(図3)。PUEはデータセンター設備全体の電力消費量をデータセンター内のIT機器(サーバ、ストレージ、モニタ、管理用PC)の電力消費量で割った値で、DCiEはその逆数である。例えば、PUEが3.0である(DCiEが33%である)ということは、IT機器に要する電力量の3倍の電力をデータセンター設備全体に供給する必要があることを意味する。

 この指標における理想値は、PUE=1(DCiE=100%)となるが、空調、配電、照明などデータセンターの設備にかかる電力消費量をゼロにすることは不可能であるため、現実にその値が達成されることはない。現在のところ、米国においても、PUEの企業ごとの具体的な数値について詳細な調査はまだ行われていないが、Green Gridは、一般的なケースではPUEが3以上になると推定したうえで、PUE=1.6を目標値の1つとして設定している。

 なお、PUE値が大きすぎるのは問題だが小さければよいというものでもない。例えば、障害対策のために電源系統の冗長性を高めた場合、PUE値は上昇することになるが、これはやむをえないことである。Green Gridは今後、調査を進め、典型的なデータセンターのタイプごとにPUEのベンチマーク値を発表する意向を表明している。ユーザー企業としては当面の間、グループ企業内あるいは同一業種内の企業でPUEの概算値を算出し比較することが有効であると思われる。

 次に、機器面からのアプローチとして、データセンター内に設置されたIT機器の電力効率性について検討したい。大規模なデータセンターと小規模なデータセンターとで、機器の電力消費量の絶対値(図3におけるYに相当)を比較することにはあまり意味がない。そのため、機器の電力効率を把握するためには電力消費量を正規化することが必要になる。理想的には、データセンターが提供する業務量を機器の総電力量で割ることで、このような正規化(いわば、単位電力当たりのITの価値)が行えるはずだが、当然ながら、データセンターで稼働されるアプリケーションはさまざまであり、比較が可能な形で業務量を数値化することは不可能だ。

 よって、ここでも妥協案として、同等規模のデータセンターの典型的な電力消費量を測定し、それをベンチマーク値としてベスト・ケースに近づける努力をするしかないだろう。近い将来、中立的機関によるベンチマーキングの登場が期待されるところだ。もちろん、他社との公平な比較が困難ではあっても、同一のデータセンターにおいてIT機器の総電力消費量を低下させていくこと、あるいは、業務量の増加にかかわらず電力消費量を一定範囲に抑えていくことには十分な意味がある。ゆえに、IT機器の総電力消費量を定量的基準の1つとして管理していかなければならないという事実に変わりはない。
データセンター設備の効率改善のための具体的手法

 定量的指標が定まったら、その最適化に向かって具体的な手段を講じることになる。前述したとおり、データセンターのグリーン化は、設備面、機器面の両方からのアプローチをとることになる。まず、設備面ではどうか。前述のPUEを最適化するための手法について見ていこう。

■データセンターの冷却効率最適化支援サービスの利用

 図4に、データセンターの電力消費量の内訳の典型例を示した。この図にあるように、一般には機器冷却に要する電力が最も大きな割合を占める。しかし、新たにデータセンターを構築、あるいは全面改装するのでないかぎり、配電や冷却の設備をより高効率なものに取り替えることは設備投資の観点から言って困難なケースが多いだろう。したがって、短期的な手法ではあるが、サーバ・ルームのレイアウトなどの変更によって冷却効率の向上を図ることが挙げられる。

図4:データセンターにおける電力消費内訳の典型例

 データセンター内の機器を提供するベンダーは通常、サーバ・ルームの効率的なレイアウトに関するノウハウを持っているはずである。しかし、特にマルチベンダー環境のデータセンターにおいては、フロア・レイアウトの全体最適が行われていない可能性がある。例えば、機器を冷却した後の温風がスムーズに室外に排出されず、再度循環するようになっていると冷却効率は著しく悪化する。機器のレイアウトを少し工夫しただけで、冷却効率が大きく改善された事例もある。今日では、多くのベンダーがこのようなデータセンターの冷却効率に関する現状調査(サーマル・アセスメント)のサービスを提供している。現時点において、こういったサービスの採用は十分検討に値するだろう。


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