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【解説】
注目の「仮想アプライアンス」がもたらすメリット
仮想化環境で即座に実行できるアプリケーションの新配布モデル
(2008年04月01日)
仮想アプライアンスの流通
仮想アプライアンスは、技術的な視点で見れば、ユーザーが作成する仮想システム・イメージと何ら違いはない。では、何をもって仮想アプライアンスと呼ぶのだろうか。もちろん厳密な定義があるわけではないが、公式な流通チャネルが存在することが、仮想アプライアンスと個人的に作成したファイルの自主的な交換とを区別するポイントと見ることができるのではないだろうか。
| 画面1:VMwareが運営する仮想アプライアンスのダウンロード・サイト「Virtual Appliance Marketplace」 |
仮想アプライアンスに関する取り組みで先行しているVMwareの場合、「Virtual Appliance Marketplace」と呼ばれる仮想アプライアンスのダウンロード・サイトを運営している(画面1)。もっとも、これはVMwareのビジネスというわけではなく、あくまでも公式な入手先となるサイトを“場”として提供しているというスタンスだ。実際の仮想アプライアンスは、ソフトウェア・ベンダーなどが自発的に作成し、提供している。ダウンロードに際してユーザー登録を求めるものや、有償配布のものなど、さまざまな配布形態となっている点も、VMwareがビジネスとして厳格に運用しているわけではないことを反映していると言えるだろう。
VMwareによれば、仮想アプライアンスの登録数はすでに600を超えており、内容も評価版から製品版までさまざまだという。ジャンルも傾向も多岐にわたり、およそあらゆる種類のソフトウェアが集積されつつあるという状況のようだ。ダウンロード数の多いものを見てみると、Linuxディストリビューションが上位を占めているのだが、Microsoftが提供している「Windows Server 2003 R2 Enterprise Edition Virtual Appliance」も5位以内に食い込んでいるのが興味深い(筆者が見たタイミングでの話だが)。その気になりさえすれば既存の環境にインストールして試すことができるアプリケーションよりも、やはり既存の環境を劇的に変革してしまうOSのほうが、仮想アプライアンスとして試すには人気があるということだろうか。また、MicrosoftがWindows Serverを提供していることからもわかるとおり、VMwareのVirtual Appliance Marketplaceは、ソフトウェアの試用版配布チャネルとしては完全に認知された存在だと見てよさそうだ。
なお、VMwareが全ファイルのダウンロードを管理しているわけではないため、厳密な数ではないようだが、2006年8月末から現在までの1年少々の間に、80万件以上の仮想アプライアンスがダウンロードされているという数字もある。
最近では、個人レベルで利用するクライアントPCでもマルチコア・プロセッサを搭載することが珍しくなくなってきている。マルチコア・プロセッサでは、複数のプロセスを同時に実行する際の効率が向上する一方、単一プロセスの実行では複数コアを活用できず、目立った性能向上が体感できないことになる。それを考え合わせれば、クライアントPCでも仮想化ソフトウェアを活用することで、ともすれば余剰となりかねないマルチコア・プロセッサの処理能力を有効活用する道が開けることになる。ユーザーが使用しているPCのOSを入れ替えるとなるとおおごとだが、仮想アプライアンスとしてゲストOSを実行するのはごく簡単なことだ。さらに、マルチコア・プロセッサによって目立った性能劣化もなしに複数のシステム・イメージを同時に稼働できるようになれば、PCの利用スタイルが大きく変化する可能性もある。そうした点からも、仮想アプライアンスが広く流通し、ユーザーにとっても利用しやすい環境が整うことの意味は大きいだろう。
なお、Virtual Appliance Marketplaceが英語サイトのみである点からもうかがえるとおり、現時点では日本のソフトウェア・ベンダーから仮想アプライアンスの登録はないという。その点もあって、日本市場での認知はまださほど高くないと言わざるをえないが、今後、仮想アプライアンスがソフトウェアの配布手段として無視できない重要な存在になることは間違いないだろう。
仮想アプライアンスの最新動向
業界標準フォーマット「OVF」の登場
仮想アプライアンスに関しては、ソフトウェアの標準的な配布手段の1つとして積極的に活用していこうという動きが見られる。この場合、問題になるのは、仮想アプライアンスが本質的には仮想化ソフトウェアが独自に作成した仮想HDDのイメージ・ファイルであることだ。当然だが、仮想化ソフトウェアが異なればファイルの形式も異なり、直接的な互換性はない。このため、仮想アプライアンスに関しても、仮想化ソフトウェアごとに仮想HDDのイメージ・ファイルとして用意する必要がある。
これは当然のことでもあるのだが、やはり仮想アプライアンスを提供する側からみれば、この点は煩雑で面倒である。ユーザーにとっても、自分がインストールした仮想化ソフトウェアに対応するアプライアンスかどうかを意識しなくてはならないのは面倒だろう。
この点を意識してか、「DMTF(Distributed Management Task Force)」は2007年9月10日、Dell、Hewlett-Packard(HP)、IBM、Microsoft、VMware、XenSourceの6社から提案されたOVF(Open Virtual Machine Format)のドラフト仕様を受け入れたと発表した。主要PCベンダーおよびx86プラットフォーム上で仮想化技術を提供する主要ベンダーが一丸となって、業界標準フォーマットの確立に取り組んだ形だ。
OVFは、各社の仮想HDDイメージ・ファイルを同一にしようというものではなく、あくまでも仮想マシンのパッケージングと配布のためのフォーマットである。端的に表現してしまえば、OVFは仮想アプライアンスのためのフォーマットだと言ってしまってもよいだろう。x86環境では主要な仮想化ソフトウェアの開発元であるMicrosoft、VMware、XenSourceの3社が参加しているため、まだドラフトの段階ではあるが、現時点では事実上、業界標準として確立するのは約束されたようなものだと考えられる。正式な仕様が固まれば、その後は各社の仮想化ソフトウェアが、OVF形式でのファイルの読み書きをサポートすることになるだろう。そうなれば、ユーザーはOVFで配布された仮想アプライアンスを、自分が使用している仮想化ソフトウェア上で自由に実行できるようになる。
OVFは、各社の仮想化ソフトウェア上に仮想アプライアンスをインストールするために必要な情報を付加した、配布パッケージ作成用のメタフォーマットだと位置づけられる。これが標準として確立しても、仮想化ソフトウェア間の競争には特に影響を与えず、ベンダー間の競争に関してはニュートラルな標準として利用されることになると期待できる。そのため、仮想アプライアンスの普及を促す環境の整備に貢献すると考えられる。
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