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【解説】
注目の「仮想アプライアンス」がもたらすメリット

仮想化環境で即座に実行できるアプリケーションの新配布モデル

(2008年04月01日)

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仮想アプライアンス専用の軽量OS「JeOS」

 このほか興味深い動向としては、仮想化ソフトウェア上で実行することを前提に、OS自体の軽量化を図る動きがある。VMwareではこれをJeOS(Just enough OS、“Juice”と発音)と呼んでいる。

 JeOSは、具体的なOSのインプリメンテーションというよりは、概念的な存在と位置づけられている。実際VMwareは、JeOSの具体例として、BEAが開発・配布しているJavaアプリケーションのためのプラットフォーム「BEA Liquid VM」や、MicrosoftがWindows Server 2008で導入する「Server Core」をJeOSの例として挙げている。このほか、VMware自身も、Debian GNU/Linuxをベースに、必要なモジュールだけを組み合わせてサイズを20MB程度に抑えたOS環境を「VMware ACE 2」で使用しているという。

 現在のOSは、膨大なユーザーランド・アプリケーションに加え、さまざまなハードウェア構成に対応するためのドライバやユーティリティを含んでいる。そもそもOSは、ハードウェアを抽象化し、アプリケーションに対する一貫したインタフェースの提供を根本的な目的としているのだが、仮想化ソフトウェアの利用を前提とするなら、その上で動作するOSがさらにハードウェアを抽象化するのは無駄であると言える。ハードウェアの抽象化の部分は仮想化ソフトウェアに任せ、OSはアプリケーションの実行環境としての機能やユーザー・インタフェースの実装に専念すれば、無駄なオーバーヘッドを減らすことができるし、OSのサイズを小さくすることで仮想アプライアンスのサイズの肥大化を避けることにもつながる。

 VMwareでは、仮想アプライアンスを作成する際に利用できる「ソフトウェア開発キット」の1つとして、Ubuntu Linuxベースの軽量OSを独自のJeOS実装として配布する計画もあるという。こうした流れが認知を得れば、仮想アプライアンスを利用したアプリケーション実行環境の配布がより現実的なものとなっていくことは間違いないし、現状の肥大化したOSの構成を見直し、コンポーネント化を推し進めていく原動力にもなっていくだろう。

 実のところ、仮想アプライアンスの成立には、LinuxをはじめとしたオープンソースOSの存在が事実上不可欠となっている。というのも、アプリケーション・ベンダーがOSを含めた実行環境を丸ごと仮想アプライアンスとして配布するためには、ライセンス問題が生じない再配布可能なOSが必要であり、現時点ではLinuxといったオープンソースOSがその役割を担っているからだ。OSとして必要最低限のモジュールだけを組み合わせるなど、任意にカスタマイズできる点も、こうしたOSのメリットである。

*  *  *

 仮想アプライアンスは、仮想化技術の発展はもちろんのこと、LinuxをはじめとするオープンソースOSの普及と成熟があってはじめて実現できた新しいスタイルだと言えるだろう。相互に独立して発展してきたさまざまな技術を統合した仮想アプライアンスは、まさに現在のITシステムにとっての1つの大きな到達点だと言っても過言ではないように思われる。

Side Story
相次ぐ仮想アプライアンスのダウンロード・サイト開設の動き

Computerworld編集部

画面A:Virtual Ironが運営する「Virtual Appliance Exchange」

 仮想アプライアンスのダウンロード・サイトを開設する動きがここ1年で相次いでいる。

 まず、米国VMwareが2006年11月7日に、仮想アプライアンスのダウンロード・サイト「Virtual Appliance Marketplace」の開設を発表した。米国Virtual Ironも2007年1月24日、Windows/Linuxベースの検証済み仮想アプライアンスをダウンロードできる「Virtual Appliance Exchange」(画面A)を開設。さらに今年4月26日には、米国Parallelsが「Parallels Technology Network」(画面B)という上記2社と同様のサイトを開設している。

 これらの仮想化ソフト・ベンダーは、仮想アプライアンスの正規流通チャネルを構築することで、仮想化技術をより普及させ、全体的な仮想化市場の底上げをねらっている。しかも各ベンダーは、仮想アプライアンスのダウンロード・サイトを、アップルが提供する「iTunes Music Store」のように位置づけているようだ。

画面B:Parallelsの「Parallels Technology Network」

 Virtual IronのCMO(最高マーケティング責任者)、マイク・グランディネッティ氏は、企業が新規にアプリケーションを導入する際に感じる最大の不満は、物理的なインフラの整備に時間がかかることだと指摘したうえで、同社が提供する仮想アプライアンスについて、次のように語っている。「(アップルの)iTunes Music Storeから曲をダウンロードし、iPodで聞くのと同じくらいシンプルなものだ」

 VMwareもまた、同社が主催する仮想化関連のユーザー・コンファレンス「VMworld 2007」(2007年9月11日〜13日開催)のプレス向けセッションの中で仮想アプライアンスの話題に触れ、同社のVirtual Appliance MarketplaceをiTunes Music Storeに例えて紹介していた。

 先行するVMwareが運営するVirtual Appliance Marketplaceは、発表の時点で仮想アプライアンス数がおよそ300であった。しかし、現在ではその数は600以上に増加しており、仮想アプライアンスが着実に認知されてきていることをうかがわせる。ただし、仮想アプライアンスは、本文中で指摘しているように、ファイル・サイズが大きくなり、ダウンロードに時間がかかるケースもある。

 そうした場合の対応としてVMwareは、現在、仮想アプライアンスのストリーミング配信に向けて技術開発を進めている。ストリーミング配信を実現すれば、ファイルをダウンロードしながらアプリケーションを実行できるため、ファイル・サイズが大きくてもダウンロード時間はさほど問題にはならないというわけだ。


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