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ストレージ仮想化技術の“現在”を探る
最も成熟し、製品も豊富にそろうレイヤにどう取り組むべきか
(2006年06月16日)
ストレージ仮想化は、複数のストレージを単一のプールとして集約し、ストレージ・リソース利用の効率化を図る技術である。今日のストレージ環境には、異なるベンダー/機種が混在し、企業は運用管理の複雑化や、それに伴うコストの増大といった問題に直面している。そうした問題を克服できるストレージ仮想化の分野には、ソフトウェアやアプライアンスといった形態ですでに多数の製品が出回っており、そのメリットを享受しているユーザー企業も少なくない。本稿では、自社での導入を検討しているユーザーに向けて、得られるメリットや今後解決が求められる問題点など、ストレージ仮想化技術の“現在”を示したい。
ギャレン・グルマン
InfoWorld米国版
ストレージ仮想化のさまざまなメリット
米国内で60以上の施設を運営する民間の刑務所管理会社、コレクションズ・コーポレーション・オブ・アメリカ(CCA)は、収監者の医療記録や電子メールなど約100TBのデータの保管方法に悩まされていた。同社では、この100TBのデータを2つのデータセンターに設置した日立データシステムズ(HDS)製のストレージ4台に分散し、障害に備えてデータの大半を3重から4重にミラーリングしていた。そのうえ、必要に応じて異なる機種のストレージを順次、追加していったたため、同社のストレージ環境は異ベンダー/異機種の製品が混在する状況に陥っていた。
こうした複雑化によってストレージ環境の運用管理に関するコストが増大したCCAでは、新しいハードウェアの購入を抑え、導入済みのハードウェアを活用する方法を模索していた。そこで同社のエンタープライス・テクノロジー・オペレーション担当シニア・ディレクター、ブラッド・ウッド氏が最終的に選んだのは、ストレージの仮想化だった。
ストレージの仮想化は、異ベンダー/異機種のストレージをネットワークを介して集約し、単一のプールとして管理できるようにする技術だ。CCAはシマンテックとHDSのソフトウェアを導入することによって、ストレージ環境を1つのコンソールから管理し、運用管理の負荷を軽減することに成功した。
この例に見るとおり、ストレージの仮想化はストレージ環境の複雑化に対する有効な解決策となるが、それ以外のメリットも少なくない。例えば、仮想化されたプールを構成する1台のストレージに障害が発生した場合には別のストレージにデータをスムーズに移行できる。また、データの移行が容易になるため、重要度が高いデータは高価で信頼性の高いストレージに、重要度が低いデータは信頼性には劣るが安価なストレージに移行するといったILM(情報ライフサイクル管理)に基づくストレージ・アーキテクチャを低コストで実現できるというメリットもある。
加えて、レプリケーションも容易になる。通常の物理ストレージではレプリケーションの際に、ボリューム全体を別のストレージにコピーして、関連するデータがひとまとまりになるようにしなければならない。それが仮想化されたストレージでは、スナップショットや差分ファイルといった部分的なデータを一連のデータ・セットとリンクすることで、複数の物理ストレージにまたがったデータ保存を容易に行うことができるのだ。
もちろん、運用管理にまつわるコストも重要なポイントだ。IDCのストレージ・システム・リサーチ担当バイスプレジデント、リック・ヴィラー氏は、「仮想化により、ストレージ技術者はサーバ周辺の作業から解放される」と、人件費を削減できることを指摘する。
ストレージ仮想化に向けた3つのアプローチ
現在、市場に出荷されているストレージ製品のほとんどは、何らかの仮想化機能を備えている。すでにストレージの仮想化は、異機種混在環境で管理を容易にする方法としては、実用レベルにあると言ってよい。こうしたストレージ製品が採用する仮想化のアプローチには、現在のところ、「ファブリック・ベース」「ホスト/クライアント・ベース」「アレイ・ベース」という3つの種類がある(図1)。それぞれにメリット/デメリットはあるが、コストの差はストレージ環境全体で考えれば、それほど大きくない。一見高額に見える製品は、ストレージ仮想化機能を提供するだけではなく、ストレージそのものを含んでいるといったケースがあるからだ。「ストレージ仮想化を導入する際の価格は、アプローチの違いではなく、利用規模によって決まる」とIDCのヴィラー氏も指摘する。一方、ガートナーのリサーチ担当ディレクター、スタン・ザフォス氏は、どのアプローチを選択するかを考える際には「(コストではなく)既存のストレージ環境との親和性を考慮するべきだ」とアドバイスする。
| 図1:ストレージ仮想化を実現する3つのアプローチ |
(1)ファブリック・ベース
最も一般的なのが、ファブリック・ベースのアプローチだ。このアプローチは、アプライアンスまたはソフトウェアが、SAN内のストレージ・リソースの検出と監視を行い、それらを単一の仮想プールとして管理するために、格納されているデータとそのデータの格納場所に関する情報を含んだメタデータを作成するという方法だ。このアプローチは、拡張はしやすいが、ネットワークの負荷が大きく、メタデータが複数のアプライアンスに分散するおそれもある。
具体的な製品としては、データコア・ソフトウェアの「SANsymphony」、EMCの「Invista」、ファルコンストアの「IPStor」、IBMの「SVC(SAN Volume Controller)」、ネットワーク・アプライアンス(ネットアップ)の「V-Series」、ストアエイジの「SVM」といったものがある。ザフォス氏によると、最も普及しているのはIBMとネットアップで、ともに約1,000の導入実績があるという。
このタイプでスイッチ型の製品も近々登場すると見られている。スイッチ型はファブリック・スイッチ内のブレードとして実装されるもので、基本的にアプライアンスと同じだ。しかし、市場調査会社のエンタープライズ・ストラテジー・グループ(ESG)でラボ・テクニカル・ディレクターを務めるブライアン・ギャレット氏によれば、仮想化の機能をスイッチに持たせた場合、アプライアンスによる仮想化よりトラフィックの経路となるデバイスが1つ少なくなるため、より効率的な処理が可能になるという。なお、ブロケードコミュニケーションズシステムズ、シスコシステムズ、マクサン・システムズ、マクデータ、Qロジックといったベンダーが、スイッチ型製品の提供を予定している。
(2)ホスト/クライアント・ベース
ホスト/クライアント・ベースのアプローチでは、ファイル/アプリケーション・サーバ上のソフトウェアがデータ・トラフィックとストレージを監視し、転送時にメタデータを作成する。メリットとしては段階的な導入が容易で技術的にも成熟していることが挙げられるが、その反面、大規模環境での運用が難しく、ネットワークに負荷を与える可能性もある。
このアプローチを採用したのは、シマンテックの「Veritas Storage Foundation」だ。ガートナーのザフォス氏によれば、最近までUNIX版とWindows版のリリース時期がずれていたことが、異機種混在環境でStorage Foundationを利用する際の問題だったという。しかし、使い勝手には定評があり、データ移行やロード・バランシング、プロビジョニングなど、さまざまな用途に活用できると同氏は評価する。
また、ESGのギャレット氏は、いずれファブリック・ベースのスイッチ型製品の多くでStorage Foundationを実行できるようになると予測している。ただし、シマンテックは今のところ、そうした対応は予定していないと述べている。
(3)アレイ・ベース
アレイ・ベースのアプローチは、1台のストレージに内蔵されたネットワーク・コントローラが、SANに接続されたすべてのストレージを単一のプールに見せるというものだ。仮想化に関する処理をストレージ内部で行うため、管理の一元化が容易でネットワーク負荷も抑えられる。しかし、ここに障害が発生した場合の被害規模は大きくなると考えられる。
このアプローチの製品には、仮想化機能を搭載したストレージであるHDSの「TagmaStore(日本での製品名はSANRISE)」がある。TagmaStoreは、複数ベンダーのストレージを、HDSの管理ソフトウェアから1つのプールとして扱えるようにする機能を備えている。同社のチーフ・サイエンティスト、クラウス・ミッケルセン氏によると、現在、同製品のユーザー企業は約1,700社で、そのうちの約45%が仮想化機能を利用しているという。ザフォス氏は、ストレージは年間保守料を支払うよりもリプレースのほうが低コストになる場合もあるため、「TagmaStoreは、古いディスクアレイからのリプレースで利用されることが多くなるだろう」と予測する。
以上、3つのアプローチに共通する問題は、そもそも仮想化は異機種混在環境におけるストレージ利用の効率化を目的としているにもかかわらず、ベンダー・ロックイン(ベンダーによる囲い込み)を強いることになるというものだ。EMCの最高開発責任者、マーク・ルイス氏は、「アレイ・ベースの製品は、特定ベンダーへのロックインを強いる」と語るが、他の2つのアプローチも、特定のソフトウェアやアプライアンスへのロックインを強いることに変わりはない。
「iSCSI+仮想化」は、まだ時期尚早
対応製品が市場に次々と出荷されるのに伴い、iSCSIは、ファイバ・チャネル(FC)に代わる選択肢として、ますます魅力的なものになりつつある。
iSCSIは、FCよりも安価であるうえに実装も容易だ。ネットワーク・プロトコルに一般的なIPを使用するため、SANの管理に特殊なスキルがいらないからだ。FC SANほどの速度や規模は望めないが、小規模企業や大規模企業の部門内のファイル共有といった用途には適した技術だと言える。
しかし、自社のストレージ戦略として、iSCSIで構築したSANにストレージ仮想化を適用するのは、当分の間は控えたほうがよいだろう。ESGのギャレット氏によれば、現在提供されているストレージ仮想化の管理ツールでiSCSI SANを効率的に扱うのは難しいという。一例を挙げるとiSCSIでは、FCにあるような、デバイスに対してグローバルな名前を提供する仕組みが用意されていない。CCAのウッド氏も、重要度が低いデータ用に安価なiSCSI SANを検討していたが、こうした事情からそれを取りやめたという。
Freeze.comのオーミー氏も、iSCSI SANにストレージ仮想化を導入しようとして苦労したという。同氏の場合、ベンダーの支援を受けたがうまくいかず、最終的にiSCSIの導入規模を縮小した。
ストレージ仮想化の管理ツールで、SCSIを扱いにくい理由の1つは、iSCSIの市場規模が小さいことだ。ギャレット氏の推定では、FC SANの導入事例は数十万件だが、iSCSI SANの導入事例は1万件ほどにすぎない。加えて、ほとんどのiSCSIは小規模な企業に導入されており、階層型ストレージやストレージ・ライフサイクル管理といった、管理ツールが必要となる用途には使われていないことも理由の1つだ。
EMCのルイス氏も、「iSCSI SANに対するサポートはまだ十分ではない」と述べる。しかしその一方で、IPベースのストレージがさらに普及すれば、状況は変わるだろうとも予測する。IBMのウォフォード氏は、SNIAが策定したSMI-S(Storage Management Initiative Specification)が普及すれば、iSCSIもFCと同様なストレージ管理が可能になるだろうと語る。このSMI-Sは、異機種混在環境において単一の管理フレームワークを提供するための標準仕様だ。しかし、普及が進むまでは、iSCSI SANとFC SANが相互接続された環境でも、管理ツールは別々のものを利用することになりそうだ。


























