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「Web 2.0 Summit」で語られたコンピューティングの未来

イノベーション創出のため、Web 2.0を製品戦略に取り入れるベンダー各社

(2007年02月19日)

「打倒グーグル」の秘策を練るアスク・ドットコム
カギは検索のユーザー・エクスペリエンス改良

写真8:アスク・ドットコムCEOのジム・ランツォーネ氏(右)と、マイクロソフトのオンライン・サービス部門担当シニア・バイスプレジデント、スティーブ・バーコウィッツ氏 Photograph by James Duncan Davidson/CMP Media/O'Reilly Media

 「検索エンジン市場には、王者グーグルを出し抜くさまざまな機会が存在する」。そう息巻くのは、アスク・ドットコムCEOのジム・ランツォーネ氏と、同社の元CEOで、現在はマイクロソフトでオンライン・サービス部門担当シニア・バイスプレジデントを務めるスティーブ・バーコウィッツ氏である(写真8)。セッションで両氏は、グーグルを市場の絶対的勝者と見なすのは時期尚早だという理由をさまざま開陳した。

 ランツォーネ氏は、検索エンジンのユーザー・エクスペリエンスには大幅な改良の余地があり、そこにチャンスがあると聴講者に訴えた。さらに、モバイル検索はまもなく検索エンジン市場のかなりの比率を占める有望な分野であり、その主導権は手の届くところにあると語った。

 とはいえ、グーグルと他の検索エンジンの差は依然として大きい。コムスコアが行った2006年9月の調査によれば、米国に住むユーザーの45%がインターネット検索にGoogleを使用しているという。2位のYahoo!は28%と大きく水を開けられた。なお、Microsoft Searchは12%弱、Ask.comは6%弱だった。

 ランツォーネ氏は、「常々私が言っているように、Ask.com検索エンジンは、より大きなシェアを獲得する実力を備えている」と主張した。現在、IACサーチ&メディアの傘下にあるアスクは、Ask.com検索エンジンの積極的な広告マーケティングを展開し、ブランドの浸透を図っているところだ。

「ミラーCEO、「AOLでは広告モデルへの転換が
順調に進行している」と説明

写真9:AOLの会長兼CEO、ジョナサン・ミラー氏 Photograph by James Duncan Davidson/CMP Media/O'Reilly Media

 「当社はユーチューブの買収を望んでいた。だが、グーグルだけがこの型破りなビデオ共有サイトとの16.5億ドルもの株式交換取引を実現できる立場にあった」──バッテル氏の問いに答える形で、アメリカ・オンライン(AOL)の会長兼CEO、ジョナサン・ミラー氏(写真9)はそう打ち明けた。同氏は「この業界の関係者でユーチューブに興味を抱かなかった者は、眠っていたか、あるいは不正直だったとしか言いようがない」と語った。

 ミラー氏によると、ユーチューブの買収はあきらめたものの、AOLでは、有料会員のビジネス・モデルから広告収入モデルへの転換が順調に進んでいるという。「AOLは、ビジネス・モデルの転換と経営改革を行い、オープン・プラットフォームとWebサービスに取り組むテクノロジー企業へと変身しつつある」(ミラー氏)

 AOLは過去において、ユーザーが使いやすいようにサービスを統合した結果、サービス自体の独自性を犠牲にするという過ちを犯した、とミラー氏は認めた。「だが、それも変わった。現在は何より、卓越したサービスの提供に重きを置いている」と同氏。

 AOLは2006年8月に、自社のユーザーの検索エンジン利用に関するデータを公表した際に発生した個人情報漏洩で世間から大きな批判を浴びた。ミラー氏は質疑応答で、AOLはこの事件から多くを学んだと述べた。「この事件を機に、AOLは自社が望むプラットフォームの公開と、ユーザーのプライバシー保護の必要性とのバランスについて細心の注意を払うようになった」(ミラー氏)

チゼンCEO、オープンソースへの注力を表明
「アドビとオープンソースは不即不離の関係である」

写真10:アドビ システムズCEOのブルース・チゼン氏 Photograph by James Duncan Davidson/CMP Media/O'Reilly Media

 アドビ システムズはコンファレンス初日の11月7日、同社が保有するプロプライエタリ・コードをモジラ・ファウンデーションのオープンソース・プロジェクトに寄贈すると発表した。アドビはオープンソースのWebブラウザ開発プロジェクト「WebKit」など、いくつかのオープンソース・プロジェクトに参加している。

 同社CEOのブルース・チゼン氏(写真10)はセッションで、「アドビは自社の技術や製品にオープン・アーキテクチャを採用することに長年注力してきた。ただ、ベンダーとして、オープンソースと商業原則の適正なバランスに常に腐心している。これらは不即不離の関係だ」(チゼン氏)

 アドビがモジラに寄贈したのは、同社の「Flash Player」のスクリプティング言語エンジン「ActionScript Virtual Machine」のソースコードだ。モジラはこのコードを用いて「Tamarin」という新しいオープンソース・プロジェクトを始動する。今後、両組織は協調作業を通じて標準のスクリプティング言語を確立し、開発者がそれを用いてFlash Playerとモジラの「Firefox」向けのインタラクティブ・アプリケーションを作れるようにすることを目指している。

 チゼン氏は、モデレーターのオライリー氏から電子ブックについて質問された。チゼン氏は「あと一歩だ。数年前に電子ブックの話題が盛り上がったが、今般ようやく技術的要件が満たされた」と答えた。

 また、買収したマクロメディアとの経営および製品統合は順調に進み、両社の製品ファミリーが影響し合うことで、アドビは、Webの世界の周辺的プレーヤーから中心的存在へと変身するという当初の目標が達成されつつある、とチゼン氏は述べた。

開発者からの支持を集める
アマゾンのインフラ・ホスティング・サービス

写真11:アマゾン・ドットコムのCEO、ジェフ・ベゾス氏 Photograph by James Duncan Davidson/CMP Media/O'Reilly Media

 世界一有名なオンライン小売店となったアマゾン・ドットコム。同社CEOのジェフ・ベゾス氏(写真11)は、「Web 2.0の世界では、何人も参加は自由」のスタンスから、同社のコア・ビジネスである小売りとほぼ無関係に思える一連のサービスを立ち上げた理由を説明した。「私に言わせれば、Web 2.0とはコンピュータ同士の対話だ。これは今や巨大なビジネスである」(ベゾス氏)

 現在、約20万人の開発者がアマゾンの「Simple Storage Service(S3)」や「Elastic Compute Cloud(EC2)」といった開発者向けインフラ・ホスティング・サービスに登録している。開発者にとって、これらのサービスは社内システムよりも便利で安価だと認められての実績だ。

 S3サービスは、いわゆるストレージ・ホスティング・サービスであり、EC2サービスは、開発者がサーバのCPUリソースをリースの形態で利用できる。アマゾンのサービスに登録した開発者の勤務先は、マイクロソフトのような大手ベンダーからインターネット系の新興企業まで多岐にわたる。「彼らは一様に、サーバの保守や帯域幅のプロビジョニング、異種ハードウェアとソフトウェアの調和といった“力仕事”をアマゾンに任せたがっていた」とベゾス氏は説明する。

 アマゾンにとっても、これらのサービスは同社の収益に直結する。データセンターの余剰のストレージとサーバのリソースを販売しているからだ。同社は現在、この種のホスティング・サービスを10種類提供しており、近い将来に、新たに数種類のサービスを提供する予定だ。ベゾス氏は詳細を明らかにしなかったが、オライリー氏に促され、アマゾンのチェックアウト・サービスが新サービスに含める好対象であることを認めた。

 開発周りの力仕事をアマゾンに任せることは、特に新興企業にとって理にかなっている。経費を節減しながら開発のコア作業に専念できるからだ。ただ、アマゾンはこの事業に意気込んでいるものの、「オンライン販売と他社向けeコマース・サービスの両ビジネスを中止したり軽視したりするわけではない」とベゾス氏は言い添えた。

インテルの“意外な”Web 2.0戦略
ソフトウェア・スイート「SuiteTwo」を発表

画面4:インテルのソフトウェア・スイート「SuiteTwo」のWebサイト

 ハードウェア・ベンダーのインテルがWeb 2.0 Summitにおいて、ブログ、Wiki、コンテンツ・シンジケーション・システムなど、いわゆるWeb 2.0ソフトウェアをまとめたスイート製品「SuiteTwo」(画面4)を発表し、大きな話題を呼んだ。2007年第1四半期までに正式版をリリースする予定だという。

 SuiteTwoには、ソーシャルテキスト、ニュースゲーター・テクノロジーズ、シンプルフィード、シックス・アパートのソフトウェアが含まれる。サポートはスパイクソースが担当し、同社は同スイートの販売でもインテルを支援する。

 SuiteTwoは当初、小・中規模企業をターゲットに提供されるが、その範囲は、いずれはエンタープライズ・レベルの企業にも拡大されるという。米国フォレスター・リサーチのアナリスト、マイケル・グールド氏によれば、この動きは、もともとコンシューマー向けの技術/コンセプトとされていたWeb 2.0が徐々に企業に広まりつつあることの表れという。「こうした代表的なWeb 2.0アプリケーションがパッケージとしてまとめて提供されるのは初めてのことだ。これならどんな企業も簡単に実装できる」とグールド氏。

 グールド氏によれば、企業のIT部門はこうしたWeb 2.0アプリケーションの採用を徐々に増やしながらも、管理やサポート面での不安を感じていた。グールド氏は、「だから、こうしたアプリケーションでサポートが提供されるというのは非常に重要なことだ」と評価する。

 SuiteTwoは企業のビジネス・コミュニケーション/コラボレーション用の統合ツールセットとして位置づけられるようになることが目指されている。インテルは今後、SuiteTwoにポッドキャスティング、SNS、モバイル・アプリケーションなどの機能も追加していく方針だ。


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