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【解説】
「SOAとBPM」の相関を理解する
システム俊敏性のさらなる向上を図るためのアプローチ
(2008年04月25日)
堅牢性と柔軟性を両立する「SOA+BPM」
最後に、統制の有効性と俊敏性という2つの観点から、複数あるビジネス・プロセスの管理方法について比較検討することで、「SOA+BPM」というアプローチ、およびその他のアプローチの長短所を確認してみることにする(表1)。
| 表1:ビジネス・プロセスの管理方法の比較 |
人手による管理
最も基本的なビジネス・プロセスの管理方法は、「人手」(と静的な文書)によるものだ。当然ながら、いかなる組織においても人手によるビジネス・プロセスの管理が行われている。人手によるビジネス・プロセス管理は最も単純であり、かつ、(局所的に見れば)柔軟であり、例外的な事象に対して臨機応変に対応することができる。
しかし、柔軟すぎるゆえに統制は強力とは言えない。人が業務手順を間違えたり、個人の判断でビジネス・ルールをバイパスしてしまったりという事態はよく生じる。また、仮に適切な文書化がなされていたとしても、細かいルールが属人化していて、その可視化が困難になっているだけでなく、他組織への展開が困難であったり、特定人が組織から離れたりすることで、プロセス管理における統制や効率性が一気に悪化するリスクがある。また、人手によるビジネス・プロセス管理の変化への対応力は局所的に考えればすぐれている。しかし、全体的に考えれば、変化への対応力は高いとは言えない。
なお、人手によるビジネス・プロセス管理には多くの問題が存在するが、組織内から完全に排除することは不可能であるし、望ましいことでもない。いかにビジネス・プロセスの自動化を進めていっても、人間の判断が必要となるような例外的なケースは常に存在するからだ。例外を完全に排除するようなシステムは柔軟性を欠き、企業にとって決して最適ではない。ビジネス・プロセス管理の仕組みの実装においては、人手の介入を最小化しつつも、例外的ケースでは人による個別判断への効率的な引き継ぎが行われるような仕組みが重要となるだろう。
個別専用システムによる管理
次に、個別専用システムによるビジネス・プロセス管理について検討しよう。いわゆるワークフロー管理と呼ばれるツール群である。統制の有効性については、人手による管理よりもすぐれているが、全社的な最適化という点では課題がある。ビジネス・プロセスの局所最適化は比較的容易だが、部門をまたがった最適化が困難であるという、いわゆるサイロ状態に陥りやすいのだ。同様に、俊敏性についても局所的な変化には比較的迅速に対応できるが、全社的な変革を各部門間の同期を取りながら行っていかなければならないようなケースで課題が多い。
統合業務アプリケーション内のロジックによる管理
ERPに代表される統合業務アプリケーション・パッケージに備わるビジネス・ロジックでビジネス・プロセスを実現する方法はどうか。これは、上記のビジネス・プロセスの全体最適化という課題に対応した解決策であり、統制の有効性という点ではきわめてすぐれている。そもそも、あらかじめ設定されたビジネス・ルールに従わなければ、業務処理が継続できないからだ。例えば、「100万円以上の決済には上司の承認が必要」というルールがあったとすると(上司のユーザーIDを使い回すというような問題外の行動がないかぎり)、そのルールをバイパスすることは基本的に不可能だ。このようにして、ベスト・プラクティスのビジネス・プロセスを実現できるという点が、ERPなどの大きな価値提案であった。
しかし、冒頭にも述べたように、現在では固定的なベスト・プラクティスを実現するだけでは十分でなくなっており、ベスト・プラクティスそのものを環境の変化に合わせて継続的に改善していくことが求められている。
例えば、顧客のサービスを迅速化するために、顧客の取引履歴、与信限度、経済の状況などから、100万円以上の決済であっても上司の承認が不要なケースも必要である、とのビジネス上の決定が下されたとしよう。従来の一枚岩型の統合アプリケーション・パッケージでは、このような新しい要請に迅速にこたえられず、カスタマイズやアドオンの開発が生じる可能性がある。
「SOA(ESB)+BPM」による管理
「SOA(ESB)+BPM」を活用し、統合アプリケーションも一枚岩ではなく、サービス指向的な設計がなされている場合には、統制の有効性と俊敏性という一見相反する要件を両立させることができる。ここでのポイントは、ビジネス・ルールをビジネス・ロジックと切り離してアプリケーション外部で管理することにより、より俊敏に変化に対応できるようになるという点だ。
さらに、業務手順をわかりやすく表現できるBPMN(Business Process Modeling Notation)などの手法の登場により、ビジネス・ユーザー(事業部門のユーザー)が直接的にビジネス・プロセスの設計作業に関与することが可能になっている。IT部門がビジネス・ユーザーの要件を聞いて、それをITの言葉に翻訳してからシステムに反映するのではなく、ビジネス・ユーザーみずからがビジネスの言葉でビジネス・ルールを定義できるようになるというわけだ。この手法の活用は、ビジネスとITの整合性の向上、そして、俊敏性のさらなる向上という点で大きなメリットを提供するだろう。なお、当然ながら、統合業務アプリケーション・パッケージにおいても、このメリットを享受するためのサービス指向化やBPMとの連携機能の強化が進んでいる。
SOAもBPMも、ビジネス・プロセスを中心としたシステム構築および運用という点で共通している。そして、SOAとBPMの組み合わせにより、ITとビジネスの整合性を高め、有効な統制と俊敏性という要件を同時に充足する仕組みを整えられる可能性が高まった。
もちろん、企業内のあらゆる業務をSOA+BPMの形態に一気に移行することは不可能だ。また、上述したように、人手によるビジネス・プロセス管理は今後も不要になることはない。しかし、長期的な方向性としては、SOA+BPMを活用した、堅牢かつ柔軟なビジネス・プロセス管理を目指していくことが、企業の差別化の実現にとってきわめて重要になっていくだろう。

























