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SOA時代に、企業システムはどう備えるべきか
「Computerworld Conference 2006 Spring」特別リポート
(2006年06月19日)
SOA(サービス指向アーキテクチャ)が、新時代のアプリケーション/システム構築コンセプトとして注目を集めるようになって久しい。しかし、ユーザーからは、「各社の製品/技術の違いがよくわからない」といった声も聞かれる。また、SOAの要素技術であるWebサービス規格の中には仕様策定中のものも多く、この点も自社における導入タイミングの判断を難しいものにしている。今年5月10日、六本木アカデミーヒルズで開催された月刊Computerworld主催コンファレンス「Computerworld Conference 2006 Spring」では、そうしたSOAの課題に対して、アナリストやSOA製品ベンダーがそれぞれの立場から解を持ち寄った。
小山健治
調査結果が示す、SOAの現在位置
第2回となる本誌主催の「Computerworld Conference 2006 Spring」。テーマには「SOA時代の企業システム」が掲げられた。いよいよ導入フェーズを迎えたと言われるSOAによって、企業のアプリケーション/システム構築のあり方は、今後どのように変化していくのだろうか。
一般的な市場動向という視点から見れば、SOAへの関心は間違いなく高まっている。とはいえ、実際にどれほど企業がSOAの導入を“明確な目標”として認識しているのかというと、その実態はなかなかつかみきれない。
講演の順序は前後するが、今回、最後のセッション・プログラムである特別講演において、IT市場調査会社アイ・ティ・アールのアナリストである富永裕子氏が、その実情がうかがえる興味深い調査結果を発表した(図1)。
| 図1:ユーザー企業のSOAに対する意向と認知度(Computerworld Technology Research No.28/2006年4月) |
これによると、「SOAを企業全体のアプリケーション/システム開発に適用したい」「SOAを一部の開発に適用したい」「SOAの試験的なプロジェクトを立ち上げたい」といった回答を寄せた“SOA積極派”は4割に満たない。
一方、「SOAという言葉も知らないし、関心もない」「言葉は知っているが、内容はよくわからない」「知っているが、緊急に対応するべきとは思わない」といった、SOAを明確な目標として認識していない“SOA消極派”が、現時点では全体の6割以上を占めているのである。
この結果は、本コンファレンスの来場者の多くが参加している本誌読者コミュニティにおいて毎月実施されているユーザー動向調査「Computerworld TR(Technology Research)」からのものだ。同調査の回答者は全員、自社におけるIT導入の意思決定者なので、上記の結果は、実際の国内ユーザー動向をリアルに映し出したものとなっていると言える。
企業にとってSOAへの対応は、まだ危急の課題には至っていない。今は技術動向をにらみながら、自社にとって最適な導入を可能にしてくれるベンダー/製品選びの段階にあるというのが、国内におけるSOAの現在位置だと考えられよう。
次世代ITインフラのカギを握るSOA
| 写真1:アイ・ティ・アール代表取締役/シニア・アナリストの内山悟志氏は、「サービス指向によるシステム構築」が今後、企業が競争力を高めていくうえで重要になると語った |
上述のように現状、国内ユーザー企業の認識度は高いと言えないにもかかわらず、SOAの普及に向けた動きは、これから一気に加速していくことが見込まれている。これは、今後、企業に求められる諸要素から判断される予測である。
基調講演の演壇に上ったアイ・ティ・アール代表取締役でシニア・アナリストの内山悟志氏(写真1)は、2000年代後半に重要視されるIT戦略として以下の10のテーマを挙げた。
[1] 経営の可視化・制御化
[2] コンテンツ管理インフラの整備
[3] グループ/取引先との業務連携基盤の構築
[4] IT定常費用の削減
[5] ビジネス・プロセスの連携と統合
[6] サービス指向によるシステム構築
[7] IT監査と内部統制
[8] ユーザー部門との関係強化
[9] 情報セキュリティとプライバシーの確保
[10] 災害対策と事業継続性の確保
いずれの項目も、多くの企業にとって早期の取り組みを要している課題である。そして内山氏は、このうち[4]〜[7]はSOAと密接なかかわりを持った課題であるとして、それぞれについて説明を行った。
[4]の「IT定常費用の削減」は、さまざまなコスト削減要求の中でも、とりわけIT/IS部門へのプレッシャーが増している課題だ。人件費や保守費、ライセンス・コストなどを削減したうえで、予算をより戦略的な投資に振り向けていく必要がある。内山氏は次のように説明している。
「今日、シェアード・サービス化やサーバ統合/ストレージ統合、IT不良資産の撲滅といったキーワードとともに重要度が上がっているのが、SOAの考え方とも深いつながりを持つ既存アプリケーション資産の有効活用である」
[5]の「ビジネス・プロセスの連携と統合」もまた、何年も前から取り上げられながらも、抜本的な解決に至らなかった課題の1つだ。かつて基幹系に関してはERPを“ビッグバン導入”することで全面統合が果たせると考えられた時期もあった。だが、大半の企業においてはその考えが幻想であったことを悟る結果となる。
ERPを導入しても、依然として一部のレガシー・アプリケーションは残るし、新たなビジネス・ニーズに対応するために追加すべき機能も出てくる。すべてのビジネス・プロセスを一枚岩のシステムで構築するというのはほぼ不可能に近い。
「1つのパッケージで何もかも統合しようとするのではなく、価値の残っている既存の資産をうまく組み合わせながら、ビジネス・プロセスをモデリングしていくことが重要。現在では作成したモデルからシステムを構築し、運用時のモニタリングまでをつなげる仕組みが整いつつある」(内山氏)
そして、ここでキーワードとして浮上してくるのが、ESB(Enterprise Service Bus)やBAM(Business Activity Monitoring)といったSOAの構成要素である。
[6]の「サービス指向によるシステム構築」は、字面のごとくSOAそのものであり、ビジネス・プロセス指向の業務改革とWebサービス標準に準拠した柔軟なアーキテクチャが、今後のITインフラの主流になるという。内山氏はこう説明している。
「役割が明確化された“かたまり”としてアプリケーションを作り、それらを緩やかに連携させながら統合していく。SOAのこの考え方は、企業が次世代のITインフラを構築していくうえでカギとなるはずである」
日本版SOX法を契機に見直される
ITインフラの重要性
最後は、[7]の「IT監査と内部統制」である。日本版SOX法(Sarbanes-Oxley Act:米国企業改革法の日本版)の施行を控え、現行の監査や統制の仕組みを根本から見直さなければならないという機運が国内でも高まっていることは周知だ。
しかし、あらためて考えてみれば、企業システムの全体最適化やITガバナンスの強化は、法規制と直接的な関係があるわけではなく、そもそもの姿勢として取り組んでいなければならなかったことなのだ。
例えば、IS部門の知らないところで、各部門がさまざまなアプリケーションを勝手に導入している/各部門が独自にデータを管理した結果、リスクがどこにあるのかも見えないような運用に陥っている、といったケースも珍しくない。
こうした状況を是正しないことには、システムの最終的な信頼性を担保することはできない。日本版SOX法は、まさにそのきっかけとなるものである。その際、内部統制の強化を図るにあたって、ITインフラの重要性が再認識されることとなり、その実装方法としてSOAが注目されているわけだ。内山氏は次のように語り、講演を締めくくった。
「あらゆるアプリケーションをトップダウンで統一的に管理することは難しい。そこで、アプリケーション内のアーキテクチャとアプリケーション間のアーキテクチャを明確に区別し、場面に応じた詳細度や結合度、ならびにガバナンスの強度を設定することが現実的なアプローチとなる」
























