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米国で高まる“SOA”のユーザー満足度
SOAへの移行は、「労多けれど、メリットも大」
(2007年02月05日)
米国サンディエゴで先ごろ、エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)に焦点を絞ったユーザー・コンファレンス「Enterprise Architecture Practitioners Conference」(1月29〜31日)が、ザ・オープン・グループ(The Open Group)の主催で行われた。同コンファレンスには、SOA(サービス指向アーキテクチャ)を導入した先進企業が数多く出席したが、彼らは一様にSOAを高く評価し、その導入効果の大きさや重要性をさまざまに語っている。
例えば、米国マリオット・インターナショナルのEA担当副社長、ジョン・ウィットリッジ氏は、「今やSOAは、ビジネス・インテリジェンス(BI)、およびパッケージ・ソフトウェアと並び、当社のIT戦略を支える重要な柱の1つになっている」と、言い切る。
同氏によれば、SOA導入の第1のメリットは、市場に対してより迅速にITベースのソリューションを提供することが可能になる点だという。また、それによって、市場動向の予測を立てたり、競合のさまざまな動きに対処したりするスピードも高めることができると、同氏は語る。
さらに同氏は、「当社は、ITシステムのSOA化を、だめならすぐに他に切り替える種類の戦略とは考えていない」とも語り、「重要なのは、われわれが持つビジネス上の強みを、SOAを使っていかに増幅させ、市場に訴えかけていくかだ」と、続ける。
こうした戦略の下、マリオット・インターナショナルは、ITシステムのSOA化を巡る種々の課題の解決に努めてきた。
例えば、同社は昨年、社内システムのSOA化を推進すべく、一時期消滅していたEA担当グループを復活させた。
そして、同グループと、その長に就任したウィットリッジ氏が、SOAと経営戦略とのギャップを埋め、SOAの利点を、同社の成長戦略に結びつけたのである。
マリオットのEAグループでは、SOAプロジェクトの方針やガイドラインの骨子をまとめるのと併せて、「SOA化の成熟度モデル」を作り上げた。これは、SOA化による価値創出(ビジネス上の価値創出)のロードマップを明確に示したものだ。
同モデルを策定した理由について、ウィットリッジ氏は以下のように説明する。
「IT側の人間は、新技術に投資さえすれば、一定の企業利益につながると思い込みがちだ。対するビジネス・サイドの人間は、新技術の投資対効果をそう簡単には信じない。ゆえに、SOA化を推進するに際しては、それがどう企業利益につながるかを、論理的、かつわかりやすくビジネス・サイドの人間に示すことが重要なのだ。またそれは、IT組織の“思い込み”を排除することにもつながる」
ビジネスの俊敏性を高める
米国カリフォルニア州に本拠地を置く貨物輸送・物流企業のコンウェイは、1998年という早い時期からIT基盤のSOA化に取り組んできた。「結果として、われわれはすでに、多大なメリットをSOAから得ている」と、同社のエンタープライズ・アーキテクト、マジャ・ティブリング氏は言う。
SOA化されたコンウェイのIT基盤では、ビジネス・プロセスを必要に応じて即座に変更できる仕組みが整えられている。つまり、同社のIT基盤では、ビジネス・プロセスの変更要求に応じて、ITサービスの編成を簡単に組み替えられるわけだ。
また、コンウェイが身を置く物流業界は、きわめて競争が激しく、業界再編も頻繁に繰り返されてきた。そうした荒波と対峙する中で、同社は、「生き残るための手法」をさまざまに模索してきたという。その結果として、同社では、ビジネスとITサービスの両面で、「俊敏性を高める」という戦略を打ち出し、SOAの全面的な採用へとIT基盤戦略の舵を切ったのである。
実際、SOAを導入する以前の同社のIT基盤では、現場のオペレーターが運航情報を変更してから、その変更がバックエンド・システムに反映されるまで、約1日のタイム・ラグがあった。ところが今日では、同社のあらゆるフロント・システムと、バックオフィス・システムの情報が、SOAの基盤を通じてリアルタイムに同期している。
しかも、SOAベースの同社のIT基盤は、カナダの税関担当官に向けて、必要な文書データを送信する機能も備えている。これにより、同社の輸送トラックが、(北米-カナダ間の)国境を越える手続きも劇的に(従来の2〜3時間から1分以下に)短縮されたという。
加えて、SOA化は開発コストの削減にも大きく寄与していると、ティブリング氏は指摘する。
「確かに、最初に手がけたSOAプロジェクトは、相応の苦労と時間を伴った。しかし、それを済ませたのちは、(ビジネス現場や市場の要求に応じて)さまざまなITサービスを即座に立ち上げられるようになった。結果として、当社におけるソフトウェアの開発期間と開発コストは大幅に削減されたのだ」(同氏)。
退屈なコーディングからの解放
今日のコンウェイでは、だれもがSOAのメリットを認めている。しかし、SOAの導入以前は、ビジネス現場の担当者や経営陣はもとより、IT組織のアプリケーション開発者の中にですら、SOAに懐疑的な向きが少なからずいたようだ。
そのため、ティブリング氏を含めたSOAの推進派は、社内の開発者やビジネス現場の担当者に対して、SOAがいかなるもので、それによってどのようなメリットがもたらされるかを、根気強く説いて回る必要があったという。
例えば、SOAを導入するに当たり、コンウェイでは、従来の開発手法やプロセスをSOAに合ったものへと切り替える必要があり、それを渋る開発者は1人や2人ではなかった。
そこで、ティブリング氏は、社内の開発者らに対して、こう訴えかけたという。
“いつまで、お決まりの退屈なコーディング作業に忙殺されているつもりんなんだ。その呪縛から解放されたいと願うならば、SOAに移行するしかない。そうすることで、自分たちの創造力を存分に発揮することが可能になる”
「この言葉は、彼らの意識を変革するうえで、かなり有効だった」と、ティブリング氏は当時を振り返る。
また、同氏によれば、サービス・コンポーネントを管理するリポジトリをしっかりと構築したことも、SOAに対する開発者の理解を深めるうえで有益であったという。
「当社が構築したサービス・リポジトリの動きを見ると、サービスが本当に有効に機能しているかどうか、もしくは、現場できちんと使われているかどうかがよくわかる。その情報を通じて、SOAに懐疑的だった当社の開発者も、SOAに対する信頼と信用を徐々に深めていった」と、ティブリング氏は説明する。
当然のことながら、同氏は、ビジネス現場に対するSOAの啓蒙にも多くの時間を割いた。また、その際には、SOA導入のビジネス・メリットをアピールすることに特に力を注いだという。
「ビジネス・サイドの人間にとって、関心があるのはSOAではなく、それがもたらす利益だ。そのため、ビジネス現場の人間や経営陣に対しては、SOAという用語をあまり使わず、そのビジネス・メリットだけを明確に定義し、伝えるようにした。結果的にそれが、SOAに対する彼らの早期理解につながった」と、ティブリング氏は語る。
M&Aによる
システム統合をスピードアップ
米国カリフォルニア州マウンテンヴューに本社を置くイントゥイットも、SOAを“頼り”にする1社だ。
同社はこれまで、ビジネス強化に向けて、25の関連企業・事業体を買収してきた。それに伴い、きわめて数多くの組織/チャネルを横断した顧客情報/パートナ情報の統合化や相互流通、およびビジネス・プロセスの連携をシステム的に図る必要に迫られた。
「その帰結として、当社はIT基盤のSOA化を早急に進めるという方針を打ち出した」と、同社の共有ディベロップメント&サービス担当ディレクター、ロバート・ロス氏は言う。
イントゥイットでは現在、SOAを通じて、異なる組織/チャネルにまたがるデータ/アプリケーションの連携・統合化を実現している。またそれを通じて、顧客やパートナーなど、同社が交流するあらゆる人/組織に関する単一の評価基準も作成した。さらに、同社では、同社の製品に対する多様なチャネルからの注文を一括して受け付けたり、その注文をバックエンドの業務システムにフィードしたりするポータル環境も、SOAをベースに構築している。
イントゥイットのSOAプロジェクトはすでに、大きなメリットを同社にもたらしつつある。ただし、その開発作業を進める過程では、さまざまな問題にも直面したようだ。
その1つは、買収した各企業・組織ごとにビジネス・ルールが異なり、「顧客そのものの定義」すらバラバラであったことだ。
顧客データの属性やデータ・モデルの差異は、開発の努力によって吸収は可能だ。しかしながら、顧客そのものの定義が異なるというのは、IT上の努力で解決しうる問題ではない。
そこで、同社では、異なるグループ(現場のエンドユーザー・グループ)に向けて、異なるサービスのインタフェースを提供し、それぞれのビジネス・ルールに従って、顧客データをハンドリングさせたり、顧客に対応させたりするといった手法を選択したようだ。
もっとも、この手法でも、一部のビジネス・ルールは切り捨てざるをえなかったと、ロス氏は語り、以下のような説明を加える。
「SOAのようなIT基盤革新のプロジェクトは、全社的な理解やコンセンサスが得られないまま進められるケースが間々ある。われわれは、それだけは避けたかったが、それでも“共通のビジョン”に沿って、SOAを推進するには、旧来のビジネス・ルールを一部捨て去る必要性がどうしても出てくる」
このような問題を解決するうえで重要なのは、「少なくとも、利害関係者の中心を成す人を説得し、みかたに引き入れることだ」と、ロス氏は言う。
そして、その際に肝心なことが、SOA化と全社共通のビジネス目標との間に整合性がきちんと確保されていることだと、同氏は力説している。
ともあれ、IT基盤のSOA化の道のりは決して平坦ではない。しかし、その道程で苦労した分の見返りは、SOA化の先駆者たちに、すでにもたらされている。やはりSOAは、企業における今後のIT戦略を語るうえで、無視することのできないキーワードであり続けるようだ。
(ヘザー・ヘイブンステイン/Computerworld オンライン米国版)






















