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【解説】
IT業界で闘う“アスピーズ”
アスペルガー症候群を抱えたITプロたちの“苦悩”と“現状”
(2008年06月25日)
Column
日本国内におけるアスピーズ支援はスタート地点に立ったばかり
Computerworld編集部
米国同様、日本にもアスペルガー症候群を抱えながら就労している人は多い。しかし、彼らの就労支援を「制度」として設けている企業はほとんどないようだ。アジア地域の中では比較的進んでいると言われる日本の支援体制だが、欧米に比較するとまだ課題は多いという。その課題とは何か──。ここではNPO法人東京都自閉症協会で理事を務める尾崎ミオ氏の話を中心に、日本におけるアスピーズの現状とその支援課題を紹介する。
日本では2005年4月1日に「発達障害者支援法」が施行された。これは、アスペルガー症候群やその他の広汎性発達障害を持つ人を支援する法律である。発達障害を早期に発見し、ライフ・ステージに合わせて適切なサポートを行うことで、発達障害者の社会生活/自立を支援することを目的としているものだ。
尾崎氏は、「発達障害者支援法が施行されたことで、アスペルガー症候群や高機能自閉症という言葉が、少しずつではあるが認知されるようになったと感じる。以前は『自閉症』と言えば、引きこもりなどと誤解されることも多く、特に知的障害をともなわない高機能自閉症やアスペルガー症候群の存在はほとんど知られておらず、その特徴が正しく理解されていなかった」と語る。
発達障害者支援法の施行後、厚生労働省は「発達障害者就労支援者育成事業」を立ち上げた。これは「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」「発達障害者の就労支援者育成事業の拡充」「発達障害者を対象とした職業訓練」などを積極的に実施することで、発達障害者の就労を支援しようというものである。しかし、これらは「モデル事業」として始まったばかりであり、特にアスピーズの就労支援については、一部の企業や就労支援者が草の根的に支援を行っているのが現状だ。「アスペルガー症候群の特徴を理解し、彼らが就労しやすい環境を提供する」というレベルには到達していない。
米国同様、日本でもアスピーズの人数を正確に把握している機関は存在しない。その理由について尾崎氏は、「アスペルガー症候群、高機能自閉症、注意欠陥/多動性障害、学習障害はその特徴が重なっていることが多く、明確な線引きができない。また、診断する医師によっても判断が分かれているのが現状だ。そのような状況では、アスピーズだけを数えることは難しい」と指摘する。
本文でも紹介したとおり、米国では近年、自閉症と診断されるケースが急増している。その傾向は日本でも同様のようだ。文部科学省が2002年に公表した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」によると、学習面や行動面で著しい困難を示す生徒の割合は、通常学級に通う生徒全体の6.3%に上るという。つまり30人クラスであれば、1〜2人は何らかの発達障害である可能性を抱えた生徒ということになる。
このような事情をかんがみ、文部科学省は2008年、「特別支援教育」を掲げ、通常の学級などに在席する障害のある幼児/児童/生徒を指導/支援する取り組みを開始した。しかし、現場の教師からは「学級運営すら困難な状態では、障害児支援まで手が回らない」との声が上がっているという。尾崎氏は「支援が現場任せになってしまっているなどの課題はあるが、国や教育機関が発達障害者を支援するという動きは評価できる。やっと支援活動のスタートラインに立ったというのが実感だ」と語る。
分業体制の確立で特徴を発揮できる環境を
では、日本でもIT業界にはアスピーズが多いのか。この点について尾崎氏は、「正確な統計がないので、あくまでも主観だが」と前置きをしたうえで、「アスピーズの中には決められたルールに沿って行う作業を得意とする人が少なくない。そういった仕事がIT業界に多いのであれば、アスピーズ率が高くなっても不思議ではない」と語る。
尾崎氏はアスピーズの就労支援として、「分業体制の確立」を挙げている。「現在の企業では、プログラマーであっても営業的なスキルや会議への出席など、アスピーズにとって不得意なスキルも要求されることが多い。アスピーズはその特徴が千差万別だ。『他人と同じことがなぜできないのか』と“同化”を求められてもそれができない。それよりも、会議や営業は他の社員と分担できる体制を整え、得意分野に集中できる環境を与えてほしい。そうすれば、持っている力を発揮できるアスピーズは多いはずだ」(尾崎氏)
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