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【解説】
「ダビング10」騒動で、日本のコンテンツ市場を憂う
利用者を軽視したガチガチの著作権保護がコンテンツ産業を衰退させる
(2008年07月25日)
補償金制度は妥協の産物“副作用”はユーザー負担
そもそも日本では、正当な手段で著作物を入手したユーザーは、私的な複製を行うことが著作権法30条「私的使用のための複製」(※4)で認められている。法律で許可されている行為であるにもかかわらず補償金を支払わねばならないのは、デジタル技術の進化で無劣化のコピーが際限なく可能になり、著作権者の利益が損なわれるようになったためだとされている。
しかし、私的な複製がデジタル化したからといって、「権利者が得ていた利益が得られなくなった」という主張には首をかしげざるをえない。私的な複製に消費者が求めるものは、デジタルだろうがアナログだろうが変わらないからだ。
著作権団体が問題視しているのは、例えばレンタル・ショップでCDを借りてPCのハードディスク・ドライブ(HDD)にコンテンツを取り込み、CDを返却したあとでもそのコンテンツを利用したり、購入したCDをPCのHDDに取り込んだあと中古CDショップに売却したりする行為である。だが、これらは本来、著作権法に違反する行為であり、私的録音・録画の範疇を越えている。本来、CDを返却したり売却したりする際には、取り込んだ(複製した)コンテンツも消去しなければならない。しかし、現実にはそれを確認する手段がないため、代わりに補償金を上乗せしている。言ってみれば補償金は、妥協の産物なのだ。
私的録音・録画補償金が上乗せされる対象製品は法律(政令)で定められている(表1)。録音機器/媒体では、DAT(Digital Audio Tape)/DCC(Digital Compact Cassette)/MD(MiniDisc)/CD-R/CD-RWの各ハードウェアとメディアが、録画機器/媒体では、DVCR(Digital Video Cassette Recorder)/D-VHS(Digital Video Home System)/MVDISC(Multimedia Video disc)/DVD-R/DVD-RW/DVD-RAMが挙げられている。前述した6月17日の合意は、この録画機器/媒体のリストに、Blu-rayを追加するというものだ。
| 表1:私的録音・録画補償金が課せられる対象とその金額 |
また、著作権団体は、PCでコンテンツを複製し、それを“第三のプレーヤー”に転送した場合には、補償金の支払いが発生しないことも問題視している。レンタル・ショップでCDを借り、コンテンツをPCのHDDに取り込んで「iPod」などの携帯音楽プレーヤーに転送し、CDを返却したとしよう。PCは録音/録画機ではない汎用製品であり、携帯音楽プレーヤーが内蔵するHDD/メモリも汎用のストレージである。そのため補償金の支払いが生じないのだ。
ダビング10が騒動になる以前、同様の問題に「iPod課金」(通称)があった。これは汎用ストレージのHDDにも私的録音・録画補償金を上乗せしようという著作権団体の活動である。しかし、iPod課金は実現しなかった。それは、すべてのHDDに補償金を上乗せするのは乱暴すぎるという意見が大勢を占めたからだ。例えば、HDDを内蔵したDVD録画機のように、すでに録画機として補償金を払っている製品の場合、HDDにも課金した場合には、補償金の2重取りになってしまうのである。
このように、私的録音・録画補償金制度には矛盾が多い。さらに言えば、同制度が私的録音や録画で侵害された著作権を補償しているのかどうかも怪しいのである。
本来、同制度は「私的録音のような取り締まりが困難な不正コピーに対する補償」という意味が大きかった(と思われる)。しかし、この意味を認めてしまうと、「補償金を払ったんだからコピーさせろ」と、不正コピーを助長することにもなりかねない。
そもそも私的録音・録画補償金制度は、「徴収した補償金を正しく著作権者に分配することができない」という本質的な欠陥がある。補償金が課せられているメディア(DVD-RWなど)を購入したユーザーでさえ、購入した段階でそのメディアにどんな著作物をコピーするか決めていることは少ない。そうである以上、徴収した補償金をきちんと再配分などできるハズがないのだ。
※4 著作権法30条「私的使用のための複製」:個人または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用する場合には、その使用する者が複製することができる。
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