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【解説】
「ダビング10」騒動で、日本のコンテンツ市場を憂う
利用者を軽視したガチガチの著作権保護がコンテンツ産業を衰退させる
(2008年07月25日)
「すべての録画には補償金を!」著作権団体のスゴすぎる論理
結局、この問題は「最善の手段がない」といった言い訳や、「米国でもAudio Home Recording Act(オーディオ家庭録音法)(※5)は導入されている」と、“グローバル・スタンダード”を持ち出して正当化しようとする潮流がある。しかし、米国でも導入されているから日本でも導入すべきという主張には矛盾がある。米国を引き合いに出すのであれば、日本と米国との間にCDの価格差があるのもおかしいのではないか。まず日本のCDを再販売価格維持制度(※6)の対象から外し、価格を米国と同等にすることのほうが先決だ。そうでなければ、ユーザーは納得しないだろう。「ほかに手段がないから、録音/録画メディア全部から補償金を徴収する」という姿勢は、いくらなんでも乱暴すぎる。
今回のダビング10騒動でもう1つ問題視されたのは、無料放送されたテレビ・コンテンツの私的録画/複製についてである。日本映像ソフト協会は6月17日、「私的録画問題に関する当協会の基本的な考え方について」と題した声明を発表し、「放送される映画の著作物については私的録画補償金制度が必要」という見解を明らかにした(表2)。この内容には疑問を感じる部分がたくさんあるが、特に不可解な2点を紹介したい。
| 表2:日本映像ソフト協会が発表した「私的録画問題に関する当協会の基本的な考え方について」(抜粋)。「だったらテレビ放送しなければいいのに」と思うのは筆者だけではないだろう |
無料視聴はリアルタイムのみ?
第1点は「タイムシフト目的でもフィードバックは必要である」としている点である。わかりやすく言うと、「録画をすることで、ユーザーは好きな時間に録画したコンテンツを見ることが可能になる。しかし、好きな時間に好きな場所でコンテンツを見るのは、DVDやBlu-rayといったパッケージを購入した人の特権だ。私的録画はその特権を侵害する」と主張しているのだ。つまり、「テレビで放映される映画は、リアルタイムでの視聴にのみ制限すべき」という考えであり、すべての録画機は権利の侵害につながるという考え方である。「HDDに録画し、1回見たら消す」という人にも補償金の支払いを求めているのだ。
おそらく多くの人は、「それほど大事なコンテンツなら、どうして放送するの?」と疑問に思うだろう。現在の大手民間放送局は、企業からの広告収入を主な財源とし、コンテンツは無料でユーザーに提供している。無料で放映されたものを録画するだけで補償金が課金されるというのは、ユーザーにとっては到底納得できる話ではない。大事なコンテンツなら、無料放送で提供すべきではない。もし提供するのであれば、無料放送によるパッケージの売上げ減少を計算したうえで、コンテンツの著作権者と放送局との間で放送権料を設定すべきではないだろうか。「技術的に私的録画できないことが保証されないかぎり、テレビ放送にコンテンツは提供しない」というのが、著作権者の利益を守る唯一の解決策である。矛盾の多い補償金制度で解決しようとするのはまちがっている。
※5 Audio Home Recording Act(オーディオ家庭録音法):米国で1992年に成立した法律。非営利目的の個人利用であれば、複製が認められているが、特定の録音機(主にデジタル録音機)に対しては二次録音防止装置であるSCMS(Serial Copy Management System)の搭載を義務づけている。同法律が注目されたのは1998年、携帯音楽プレーヤー「Rio」を販売する米国Diamond Multimedia Systems(当時)を、米国レコード協会(RIAA)が訴えたことだろう。RIAAは「Rioは録音機であり、SCMSを搭載していないのは著作権の侵害だ」と主張した。なお、連邦地裁は「Rioは録音機ではない」との判決を下している。
※6 再販売価格維持制度:販売側が小売価格を決定し、小売業者らに対して商品の販売価格を指示し、それを順守させる行為。独占禁止法では自由な価格競争を妨げるものとして、再販維持行為を禁止している。ただし、著作物であるCD/書籍/新聞などは、著作権保護の観点から再販維持行為が認められている。
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